幼児向け

◎仕様

ぼくとロボット『ぼくとロボット』
ぶん・え/山越 萌生
定価/2750円(本体2500円+税)
対象/幼児から
2014年11月24日発行

32Pハードカバー製本(カバーなし)
サイズ/幅200×高264mm
ISBN 978-4-905287-18-6

*この絵本は受注生産でお届けします

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◎概要

お片付けが苦手な男の子は、お母さんに叱られて、つい遊び相手のおもちゃに八つ当たり。捨てられかけたロボットは、男の子を道連れにゴミ箱へ落ちてしまいます。「外に出して!」と怒ったおもちゃたちを前に、遊ぶことは大得意の男の子は、みんなと一緒に脱出方法を考えます。
見どころは、後半の「特製ロケット」の場面。無事に脱出できるかどうかで盛り上がるのはもちろん、その過程に描かれる男の子とロボットの心の交流があたたかいお話です。

 


◎作家プロフィール

山越 萌生
金沢美術工芸大学大学院 美術工芸研究科修了。フランス北部の都市ナンシー在住。

 


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目次

  1. 阿川佐和子さん講演会「妄想のススメ」レポート①
  2. 阿川佐和子さん講演会「妄想のススメ」レポート②

 


テレビでもおなじみのエッセイスト、阿川佐和子さん。ユーモアを交えてたっぷり語ってくれた子ども時代は、意外にも読書が苦手だったとか。そんな少女が、どうして「かつら文庫」に通うことになったのか、石井桃子さんとの思い出、そして阿川さんが考える絵本の魅力について、2回に分けてレポートします。

こどものとも

 


かつら文庫のはじまりの本当

 

1958年に、石井桃子さんが荻窪の自宅を改装してはじめた、地域の子どものためのちいさな図書館が「かつら文庫」です。
子どもの本に関わる仕事をしていた石井桃子さんは生涯独身。阿川さんによると、子どものいなかった石井さんが、もっと子どもの気持ちに寄り添いたいと自宅を開放して招いたというのが、「かつら文庫」のはじまりだそう。

ときどき2階から、執筆中の原稿を持った石井桃子さんが降りてきて、子どもたちを集めて実際に読んで聞かせては「なるほど、これは良し、これは直し」と、その反応を作品に活かしていたということです。
「かつら文庫」の棚には、教訓的なもの、偉人の伝記のような本は1冊もなかったという話も印象的でした。

 


バージニア・リー・バートンにがっかり?!

 

そんな「かつら文庫」ができてすぐに、読書家のお兄さんが通うことになり、本よりも外で遊ぶことが好きだった幼い阿川さんも、ただお兄さんのマネっこがしたくて一緒についていくことに。
なにより、子どもたちだけで出かけ、電車に乗り、荻窪までの大冒険が楽しかったそうで、「かつら文庫」に着いても、ひとり縁側から庭に出て、お花を摘んだり、サルスベリの木に登ったりして遊んでいたというおてんば。

それでも、石井桃子さんが訳した絵本『ちいさいおうち』は大好きだったと阿川さん。それを知っていた石井桃子さんの計らいで、小学生低学年のとき、バージニア・リー・バートンに会わせてもらったというのは、子ども時代のうらやましい宝物のようなエピソードです。
大きな模造紙を壁にはり、その場で即興で絵を描いてくれるというリー・バートンに、「ちいさいおうちの、どの場面を描いてくれるんだろう!」と、胸を躍らせていた少女。
ところが、勢いのある長い線で描かれたのは思ってもみなかった「恐竜」で、当時は「本当にがっかりした」と、いかにも子どもらしい本音が。
そう、お察しの通り、その後出版される『せいめいのれきし』の一場面です。このときの原画は今でも「東京子ども図書館」に飾ってあるそうです。観てみたい!

 


『正義のセ』

著/阿川 佐和子
絵/荒井 良二
定価/1430円(税込)
角川書店
2013年3月発行

 


『ちいさいおうち』

文・絵/バージニア・リー・バートン
訳/石井 桃子
定価/1870円(税込)
対象/4、5歳から
岩波書店
1965年12月16日発行

 


『せいめいのれきし』

文・絵/バージニア・リー・バートン
訳/石井 桃子
定価/1870円(税込)
対象/小学中学年から
岩波書店
1964年12月15日発行

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目指したのではなく、導かれるように絵本作家へ

 

細いカラダ、丸眼鏡に蓄えたひげ、つぶらな瞳。
それでいて、発する言葉は強く、あちこちにほとばしるエネルギーは、いかにも芸術家らしい。

大学時代に制作した絵本『しばてん』を、親交のあった和田誠さんが、すでに売れっ子作家だった今江祥智さんに売り込んでくれたことが絵本作家になるきっかけだそうです。
だいたいこういうエピソードは、どうして著名な人同士がつながっているのか不思議に思っていたこともありますが、違うんですよね。良い環境が人をつくる、その結果が今なんです。だから腕を磨くのと同じくらい、どこに属すのかを見極めることが大事。

話がそれましたが、今江さんは電車の中でそれを読んで、感動して涙したといいます。
田島さんは、自分の絵が「顔も知らない誰かを感動させることができるんだ」と感激して、本格的に絵本を出版社に売り込んでいきます。

ところが、どこも相手にしてくれなかった。
唯一、福音館書店の松居直さんだけが「この作品は子ども向きじゃないけれど、絵がおもしろいから、僕とつきあってくれますか」と声をかけてくれたそうです。いかにも松居さんらしい穏やかな言い回しで、そのときの様子が目に浮かぶようです。

当時の田島さんは何しろお金がなくて、「松居さん、つきあっている間もお金はもらえますか」と尋ねました。
もちろん、そんなことはできるはずがないのですが、その代わりに「なるべく早く本にしましょう」と松居さんは答えました。
そうやってできたはじめての絵本が『ふるやのもり』(文・瀬田貞二)で、1964年のことです。
本屋に並んだ時は「うれしかった!」と目を輝かせ、ずっと棚の横でお客さんが来るのを待っていたと、当時を振り返っていました。

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「こどもの美しい花園を踏みにじる汚い絵」と酷評されて奮起

 

おそらく、その頃の田島さんは、こどものよろこびのため以上に、自分が生きることで精一杯だったと思います。
そうだとしても、幼稚園の先生たちからは「こども向きじゃない汚らしい絵だ」と散々な言われようでした。なかでも

「芸術家のエゴで、こどもの美しい花園を踏みにじるのはやめてほしい」

という言葉は強烈で、今でもはっきりと記憶しているといいます。

一方で、長新太さんや赤羽末吉さんといった憧れの作家たちが、独創的な絵を気に入ってくれ、瀬川康男さんはその頃住んできた3畳間を尋ねてやってきて、泊まって帰ったこともあったそうです。そうしたことを励みに、どんなに敵が多くてもこの道はゆずれない、と絵本作家としての覚悟を決めました。

今も通じる難しい問題だなと思うのは、覚悟を決めても、散々に言われた絵描きの仕事が続かないことです。
幼稚園の先生や、親の目線に合わせるだけでは、表現者は窮屈になるし、新しいものは生まれない。だからといって、本を選んで買う読者を無視していれば、そもそも絵本を手にとってもらうことはできません。やがて田島さんは栄養失調になります。

なんとか生かさないといけない。これは想像ですが、田島さんの画家としての才能を信じた編集者や仲間の作家たちが、アイデアを絞り出したんだと思います。売れっ子の今江祥智さんの文に、絵を描けば本にできるんじゃないか。この『ちからたろう』(ポプラ社、1968年)はよく売れて、翌年には「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」において「金のりんご賞」を獲得します。

 


老いて知る表現者としての本当の戦いかた

 

「若い時は戦う姿勢が強すぎた」と田島さんはいいます。
自分の思い描く世界と、それを受け入れてくれる世界のギャップが苦しかったんだと思います。

『ちからたろう』がせっかく評価されたにも関わらず、ようやくつながった次の作品では、まったく違う表現の絵を描いて、編集者や読者の期待を裏切る。
少なくない印税が入るようになったらなったで、「お金が入るとダメになる」と考え、今まさに売れている絵本を出版社に掛けあって絶版にしてもらう。そんなことをしているうちに、またお金がなくなったら、今度は違う出版社に再販のお願いをする。
出版社である僕の立場からすれば、嫌な汗が流れるような恐ろしい話です。絵本づくりにどれだけの人がかかっているのか、周囲の苦労など微塵も考えなかったそうです。

それでも、今もこうして絵本作家として活躍を続けられていることは、芸術家としてのプライドと、絵本づくりにおけるアウトプットの試行錯誤に、自分なりの折り合いをつけることができたからでしょう。
そして、それ以上に大きいのは、こどもが大好きだということ。廃校を舞台にした立体絵本「絵本と木の実の美術館」の活動を、とても楽しそうに話す田島さんの姿から、そんなふうに感じました。

 


『ちからたろう』

文/今江 祥智
定価/1100円(税込)
対象/3歳から
ポプラ社
1967年6月発行

百かんめの金ぼうをかた手に、のっしじゃんが、のっしじゃんがと力修行にでて行くちからたろうのゆかいなお話。

 


『ふるやのもり』

再話/瀬田 貞二
定価/990円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1969年4月10日発行

じいさんとばあさんが育てている子馬をねらって、泥棒と狼は、それぞれ厩に忍びこんでかくれていました。じいさんとばあさんが「この世で一番怖いのは、泥棒よりも、狼よりも“ふるやのもり”だ」と話しているのを聞いて、泥棒と狼は、どんな化け物だろうと震えていると、そのうち雨が降ってきて古い家のあちこちで雨漏りしてきて……。

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『いやいやえん』

作/中川 李枝子
絵/大村 百合子
定価/1430円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1962年12月25日発行

 


僕自身がどうだったのかは覚えていませんが、甥っ子の口癖が「いーや!」だったのは、記憶に新しいです。
そんな体験を経て、改めて手にとった『いやいやえん』は、本当にすごい1冊だと感激しました。

おもしろさの理由は、なんといってもお話のリアリティです。

元気だけど、わがままできかんぼうの保育園児のしげるが主人公の童話集。しげるたちが積み木でつくった船でクジラをとりにでかけるお話や、山のぼりで山の果物を食べすぎてしまうお話、赤いバケツをもって保育園にやってきた小ぐまの話など、全部で7つのお話がはいっています。表題作『いやいやえん』では、なんでもいやだ、いやだと駄々をこねるしげるが、「いやいやえん」に連れてこられます。「いやいやえん」とはいったどんな園なのでしょうか?

積み木でつくった船に乗って、男の子がくじらを釣りに海へ出る「くじらとり」のお話も、手紙を書いてちゅーりっぷほいくえんにやってきたくまの子と、園児が次第に仲良くなる「やまのこぐちゃん」のお話も、子どもにとっては全部「ホント」のこと。

のびのびと、それでいて何でもありにはしない、「あるある」の絶妙のさじ加減。

原作は中川李枝子さん(『ぐりとぐら』の作者)が24歳のときに書かれたそうで、その若さで本質を見抜く目におどろきます。

当時は現役の保母さんですから、お話のタネの宝庫だったんですよね。

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『きょうのごはん』

作/加藤 休ミ
定価/1320円(税込)
対象/4歳から
偕成社
2012年9月発行

 


今いちばんおなかのすく絵本です。加藤休ミさんの描くごはんのリアリティといったらすごい。

例えば、秋刀魚の皮の焼き目なんて、今にも香ばしいにおいがしてきそうで、うっかりページに鼻が付きそうになります。
見れば見るほど、皮の向こうにふっくら焼けた身がありそうで、もしかすると本当に生の秋刀魚から描いて、ちょっとずつグリルしていくように色を重ねていったんじゃないかと思わせます。

ネコがご近所を練り歩いて夕飯パトロール! ここのお家の今晩のごはんはなにかな? リアルな食べ物の絵はまさに垂涎ものです。

カレーもすごい、オムライスもすごい。とにかく全部がおいしそう。
きっと加藤さんは食べることが好きな作家さんなのでしょう。良い意味で狂気さえ感じます。

1976年生まれの同世代。いつか絵本づくりをご一緒したい作家さんのひとりです。

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『パンはころころ』

作/マーシャ・ブラウン
訳/八木田 宜子
定価/1320円(税込)
対象/幼児から
冨山房
1976年12月発行

 


窓のふちで冷ましていたパンが「とつぜんころころころがりだした」ところから物語は急展開します。

ふとしたきっかけで主人公の冒険がはじまり、繰り返し訪れる危機をうまくかわしていく展開は、定番の「型」ではあるものの、パンの主人公が新鮮。

印象的なのは素朴な色使いで、ロシアのつつましい暮らしを、緑・橙・茶のたった3色で見事に表現しています。表紙に描かれたきつねの橙とあわせた見返しの橙で、クラクラするように物語の世界へ誘われると、ころころ転がるパンと同じく軽快なリズムの言葉にのせられ一気に最後まで。

パンがころころ転がって、広い世間に出ていきます。途中で、ノウサギやオオカミやヒグマにねらわれますが、知恵があるのでだいじょうぶ。ところが得意になって、キツネに自慢の歌を聞かせようとしたとたん……。

パンが冒険の途中で出会って食べられそうになる、うさぎ、おおかみ、くまの並びも、これまた心地よいリズムを刻む工夫でありながら、同時にだんだん大きくなっていく動物たちの登場シーンが子どもたちの冒険心を盛り上げてくれます。

そこへきて、最後に登場するきつねは、くまよりも小さいために「おや」と思うのです。この裏切りが良くて、展開に変化を与え、きつねの曲者ぶりが際立ちます。

それにしても、きつねというのはロシアでも曲者キャラクターの扱いなんですね。おおかみよりも、というのも興味深いです。

お話の最後にパンがどうなったのかはぜひ手にとって開いて確かめてみてください。これはこれでハッピーエンドだと僕は思います。

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目次

  1. 阿川佐和子さん講演会「妄想のススメ」レポート①
  2. 阿川佐和子さん講演会「妄想のススメ」レポート②

 


阿川佐和子さんが松岡享子さんにインタビューしたときの話から、テーマは本題の「妄想のススメ」へと移ります。
松岡享子さんは東京子ども図書館の名誉理事長で、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や『おやすみなさいフランシス』など数々の名作絵本の翻訳でも知られる、児童文学界のトップランナーのひとりです。

 


読んだあとの時間が大切

 

松岡さんは「読んだあとの時間の大切さ」について語ります。
本を読んだあと、今読んだ本について、ぼーっと考える時間が昔の子どもにはたくさんありました。今の子どもたちにはたくさんの娯楽があるし、小学生でも習い事をしていたりと、楽しい反面、何かと忙しい。
例え本を読んでも、読んだそばから次は宿題、次はごはん、ネットに、おでかけに、と「何にもない時間」が少ないんだそうです。

 


自分のひきだしにあるサンタクロース像

 

子どもには、例えばサンタクロースの本を読んだら、どこに住んでいて、どこから来るのか、どうしてトナカイに乗っているのか、ウチには煙突がなくても大丈夫か、窓を開けておこうか、僕の欲しいプレゼントはちゃんと分かっているか...と延々考えるチカラ(=妄想力)があります。

そうやって自分だけのサンタクロース像をつくりあげて、大事にしまっておく。
年月が経ったあるとき、ませた友だちに「サンタクロースなんていない」と知らされて、びっくりするけど、自分の胸のひきだしには確かにサンタクロースははっきりと存在するんです。
自分の妄想でつくったひきだしには、生涯にわたっていつでもひきだせる宝物がつまっていることを、僕たちは確かに知っています。

例えば雷の本を読みます。どうして音がなるのか、今ならインターネットですぐに答えを見つけることができます。
ところが、そこにあるのは情報や知識です。優れた本には妄想のきっかけが散りばめられていて、そのきっかけを得ることが絵本や物語の本来の楽しみだと思います。

 


たくさんの感情と向き合うことで人生は豊かになる

 

阿川さんは、いろんな人が出てくるのが物語だといいます。
子どもから王様、ときには妖精や怪物まで。それに、みんながみんなやさしくて素晴らしい人物ばかりではなくて、いじわるな人や、ひねくれた人、乱暴者もいます。そうして語られるお話から、子どもはありとあらゆる感情を経験し、育み、そして妄想をしてたくさんのひきだしをつくります。
そのひきだしは、きっと人生を豊かにおもしろくしてくれるはずです。

 


さいごに、石井桃子さんからのメッセージ

 

子どもたちよ 子ども時代を しっかりと たのしんでください。おとなになってから 老人になってから あなたを支えてくれるのは 子ども時代の「あなた」です。

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『しろいうさぎとくろいうさぎ』

文・絵/ガース・ウイリアムズ
訳/まつおかきょうこ
定価/1320円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1965年6月1日発行

しろいうさぎとくろいうさぎは、毎日いっしょに遊んでいました。でも、くろいうさぎはときおり悲しそうな顔で考えこんでいます。心配になったしろいうさぎがたずねると「ぼく、ねがいごとをしているんだよ」と、くろいうさぎはこたえます。くろいうさぎが願っていたのは、しろいうさぎといつまでも一緒にいられることでした。それを知ったしろいうさぎはどうしたでしょうか? 結婚式の贈り物に選ばれることも多い、優しく柔らかな2ひきのうさぎの物語です。

 


『おやすみなさいフランシス』

文/ラッセル・ホーバン
絵/ガース・ウィリアムズ
訳/まつおか きょうこ
定価/880円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1966年7月1日発行

時計が夜の7時をしらせると、フランシスの寝る時間です。まずミルクを飲み、お休みのキスをして、ベッドに入ります。ところが、ちっとも眠くなりません。そのうちに、部屋の中にトラがいるような気がして心配になり、おとうさんとおかあさんのところへ。もう一度キスをしてもらいふとんに入りますが、今度は部屋に大男がいる気がしてねむることができません。さてさて、フランシスはぶじに眠りにつくことができるのでしょうか?

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◎仕様

かけるかける『かけるかける』
ぶん・え/おが たかし
定価/2750円(本体2500円+税)
対象/幼児から
2013年12月10日発行

32Pハードカバー製本(カバーなし)
サイズ/幅200×高264mm
ISBN 978-4-905287-10-0

*この絵本は受注生産でお届けします

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◎概要

「かけるかける」という印象的なフレーズが繰り返される「ことば遊び」で、読み聞かせをするのが楽しい絵本。
表紙から連想する通り、最初の見開きではチーターが「駆ける」。サバンナのお話かと思いきや、ありとあらゆる「かける」によって、物語はどんどん予想外の方向へ進んでいきます。
ナンセンスでありながら、センス良くつながっていく展開が見事です。

 


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『3びきのくま』

文/トルストイ
絵/バスネツォフ
訳/おがさわら とよき
定価/1210円(税込)
対象/3歳から
福音館書店
1962年5月1日発行

 


今朝の電車内、席に座っていた女の子とお母さん。リュックサックに入っていた『3びきのくま』を取り出して、慣れた手つきで読み聞かせをはじめました。お母さんにしてみれば、子どもがグズる前にということなのでしょう。

森で迷子になった女の子は、小さな家を見つけます。食堂には大きなお椀、中くらいのお椀、小さなお椀に入ったスープが。女の子は小さなお椀のスープをすっかり飲んでしまいます。隣の寝室には大きなベッド、中くらいのベッド、小さなベッドが。女の子は小さなベッドで眠ってしまいます。そこへ、散歩に出かけていた3匹のくまが帰ってきます。この家は大きなお父さんぐま、中くらいのお母さんぐま、小さな子どものくまの家だったのです。

ものの10秒で女の子が物語の世界へ入り込んでいったのがわかりました。

表紙越しに女の子の目線を観察していると、右へ行ったり、左へ行ったり、それは明らかに文字を追っているのとは違う動きをしています。
画面のなかに描かれているものをひとつもこぼすまいというような、あるいは画面の外にある物語の世界も覗き込もうというような、そんな動きです。

子どもは「絵を読む」といいます。読んで聞かせることが前提の絵本ですから、そもそも文字を追う必要がないというのもありますが、画面の捉え方が大人のそれとは全く違います。
だから絵本は「語る絵」じゃないといけない。その良し悪しは、はじめにお話ありきで、最後はやっぱり絵で決まるものなんですよね。

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