こどもの発達

目次

  1. 『おかゆ』に込めた想い 前編
  2. 『おかゆ』に込めた想い 後編

 


息⼦と私のつらい離乳⾷

私は、元料理⼈で⿂屋に嫁いだ2児の⺟です。
料理を作り提供する飲⾷業、⾷材を業者に卸す鮮⿂卸業。ステージの違いはありましたが、共通する「食」という⼤きな枠にずっと携わりながら仕事をしてきました。環境に恵まれ、仕事に留まらず、私⽣活における「⾷」も楽しめる⽣活を送っていました。
それが「つらい」と、初めて思った瞬間があります。
⻑男の離乳⾷です。

初めての育児で試⾏錯誤、⼤奮闘していましたが、「離乳⾷は⼤丈夫。⾃分は得意だろう」と思っていました。ずっと「⾷」に携わってきたし、今までのように⾃分が頑張ればうまくいく! と。
その時はまさか「⾚ちゃんが離乳⾷を⾷べない事がある」なんて思ってもいませんでした。

 

順調に進んでいた離乳⾷。突如、息⼦が⾷べなくなりました。
⾷べてはベー。⾷べてはベー。いよいよ口も開けなくなり、スプーンを⾒れば踏ん反り返る。必死になだめ、椅⼦を降りたがる息⼦を何とか座らせようとする私。
⾷べない離乳⾷を作り続け、口に⼊る事なく⽚付ける毎⽇にうんざりし、とうとう0歳の息⼦に向かって「なんで?」と口に出してしまいました。⾷材にこだわり、⼿をかけて作っているのに「なんで?」。

家族は離乳食を⾷べない息⼦より、落ち込み、神経質になってきている私を⼼配しました。
「気にしすぎ」「あまり神経質にならない⽅がいい」「そのうち⾷べるよ」。
良かれと思ってかけてくれた⾔葉も「何もわからないくせに」と響くことなく、孤独を感じるようになり、そこで初めてキッチンに⽴つのが「つらい」と感じました。
作っても喜ばれない。泣かれる。作ったものを全て、流して⽚付ける。こんな事、それまでの料理⼈⽣で⼀度もありませんでした。

何より、⼤切な⼤切な我が⼦は、このままずっと⾷べないままなのか。
参考にしていた離乳⾷本の進⾏通りにいかない事で、この⼦の成⻑に影響がないか、⾷べることに興味のない⼦に育ってしまうのではないか、⾊々な不安が巡って、息⼦と⼀緒に泣けてきてしまう時もありました。

 

「もう、やめ。ぜーんぶ、最初からやり直そう。」

離乳⾷開始から2カ月経過して、徐々にステップアップはしていましたが、オールリセット。
私の気持ちも全部リセットしたい。本当はそれが⼀番の理由だったかも知れません。

新しい⾷材にチャレンジとか、ステップアップとか、もう何も望まないことにしました。0歳の息⼦にとって「元料理⼈」「料理経験者」は全く関係ないのです。仕事の様に、⾃分が頑張れば頑張るほど結果がついてくる訳じゃない。むしろ、頑張れば頑張るほど、逆効果だったのかも……。ふり出しに戻ってみて、そう思える様になりました。

とにかく、パクッと⼀⼝。そんな息⼦が⾒たいだけ。
その時作ったのが、⾚ちゃんが⺟乳以外で初めて⼝にする「10倍かゆ」です。離乳⾷への期待を望まずに作ったおかゆ。
息⼦はびっくりするほどあっさり「パクッ、パクッ」っと⾷べてくれました。

「何がいけなかったの? 何がよかったの? って正直わからないけど、確実に⼀歩進んでくれた。親としての試練と喜びをありがとう」。
と、当時の⽇記にそう記してありました。
この時の経験は、私にとって無駄ではありません。そのおかげで、今の⾃分がいるのだから。

 


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目次

  1. 『おかゆ』に込めた想い 前編
  2. 『おかゆ』に込めた想い 後編

 


おかゆを好きになれたら、離乳⾷の半分はクリアです

離乳⾷の専⾨知識を学び、2児の離乳⾷を経験した今の私は、⻑男の離乳⾷でつらい思いをした当時の⾃分の様に悩みを抱えたママに、かけてあげたい⾔葉やアドバイスを伝える事ができる様になりました。

その中でも⼀番お伝えしたいのが「おかゆ」です。
離乳⾷においておかゆは、⾚ちゃんが⺟乳以外で初めて⼝にするもので、⾚ちゃんの成⻑にとても⼤切なもの。そして、約⼀年間の離乳⾷期間で⾚ちゃんが⼀番⾷べることになる、ママが⼀番作ることになるものでもあります。
だから、「⾚ちゃんもママもおかゆを好きになれたら、離乳⾷の半分はクリアだ!」と私は考えています。
⾷べられない⾷材が出てきたり、なかなか進まないことがあっても、それくらいの楽な気持ちでいて欲しいと思います。

また、⾚ちゃんはおかゆができあがるまでの⼯程を実際に⾒る事は少ないと思います。だいたい⾚ちゃんが寝ている時に、おかゆを作りますもんね。
この絵本では、おかゆができあがるまでの、お⽶は「さらさら」なんだ、お⽔で「じゃあじゃあ」するんだ、お鍋で「ぐつぐつ」するんだ、など、⾚ちゃんが実際に⾒る事がないシーンを描いています。
離乳⾷で⼤切だと考えられている「五感を刺激してあげる」という点を意識して、擬⾳語を⽤いているのも特徴です。ぜひ、⼤⼈もみなさんも一緒に感じ取りながら、⾚ちゃんに読んであげてほしいと思います。

絵本だからこそ、ゆっくりじっくり「おかゆができあがるまでのワクワク感」を親⼦で味わえるんじゃないか。絵本であれば、離乳⾷期前の⾚ちゃんにも、おかゆを知るチャンスを与える事だってできます。⾷べる事への興味を掻き⽴てる事ができそうです。

 


ママの笑顔は魔法のスパイス

⾚ちゃんは「美味しければなんでも⾷べる」とは限りません。ママの笑顔こそが魔法のスパイスなのです!
あの頃の私の様に、不安な顔で眉間にしわを寄せていては、⾚ちゃんも同じ気持ちになってしまいますよ。どうか、離乳⾷はママも楽しんで欲しい。⾚ちゃんとママ、両⽅の笑顔で溢れた時間であって欲しいと願っています。

だから、ママが⾚ちゃんに「あーん」としているシーンは特にこだわりました。「ママの満⾯の笑顔を表現したい!」という想いを作画の川崎由紀さんが叶えてくれました。

表紙を初めて⾒た時はとても感動しました。
『おかゆ』というタイトルだから、もちろん「おかゆの絵が表紙になるのだろう」とは思っていましたが、そこにはママの⼿が添えられていたのです!

⾚ちゃんに「あーん」をする瞬間の⼀コマです。私が⼀番⼤切にしているシーンです。
川崎さんはこの作品に取り組む前に、実際に離乳⾷をあげている友⼈親⼦を取材され、ご⾃⾝でも何度もおかゆを作り、熱い想いを持ってこの絵を描いてくれました。川崎さんの気持ちと、私の気持ちが繋がった! と思った瞬間で本当に嬉しかったです。

 


離乳⾷はじめの気持ちを忘れずに

離乳⾷では、たくさんの⾷材を経験することとか、⾷べるための練習とか、ミッションが多いイメージがあると思います(もちろんとても⼤切なことです)。
ただ、離乳⾷をはじめた頃はミッションの前に、⾚ちゃんの⼀⼝パクッに感動し、楽しめていたはず。それが、だんだんステップアップしていくにつれて、他の何かと⽐べたり、教科書通りにいかないことを不安がったり、焦ったり……誰でもそうなってしまうから不思議です。⼤丈夫。あなただけじゃない。みんな⼀緒です。

私にとっておかゆは、「はじめのおだやかな気持ち」を思い出させてくれたもの。
絵本『おかゆ』が、これから離乳食をはじめる親子の不安を楽しみに変えてくれると信じているのはもちろん、私と同じ様に立ち行かなくなってしまったママの「はじめのおだやかな気持ち」を思い出すきっかけを与えるような作品になったら嬉しいなと思います。

 


あとがき

絵本専⾨⼠の野⽥英里さんから「⾚ちゃんに関わる味覚や、出汁等の絵本制作を考えている編集⻑さんがいらっしゃる」とご紹介いただいたのが、出版社であるエンブックスの代表 ⻄川さんとの出会いのきっかけです。

⻄川さんは、0歳児を対象とした「⾷の絵本」を制作しようとされていました。「0歳児、特に⼩さい⾚ちゃん向けの絵本」は世の中にたくさん存在しますが、その中でも、「味覚や出汁」「離乳⾷」に着⽬した絵本はあるのかな? と考えてみましたが、私は思いあたらずにいました。
絵本編集のプロ⻄川さん、絵本読み聞かせのプロ野⽥さん、そして私。光栄なことに私は、そのお⼆⼈とお話する機会をいただきました。
⾚ちゃんの⾷というと「離乳⾷」です。離乳⾷の領域には様々なキーワードがあり、味覚や出汁も確かになくてはならないテーマ。ですが、離乳⾷のはじめの⼀⼝が「おかゆ」である事、そして、そのおかゆに対する私の強い想いを真摯に受け⽌めてくれました。

「この絵本を通じて何を実現したいのか」という相談の中で、「私の様に離乳⾷で悩むことが多いママが⾚ちゃんと⼀緒に楽しめる」「⾚ちゃんに⾷べる事への楽しみを与えられる」というコンセプトが決まっていきました。この絵本はその対談がなければ⽣まれていなかったものです。

私を対談に参加させてくれた野⽥さん、そして、この絵本づくりに携わるチャンスをくださった⻄川さんに⼼から感謝申し上げます。

 


おかゆのつくりかた動画

 


note連動企画

離乳食にまつわるあれこれを「#離乳食わたしの工夫」もしくは「#離乳食わたしの気持ち」をつけて投稿してください。
募集期間:2021年10月14日から11月20日まで
https://note.com/mediapal/n/n210b304e59e1

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「イヤイヤ期」と楽しく付き合うために知っておきたい

 

2歳ごろにピークを迎える「イヤイヤ期」は、子どもの成長の通り道です。
親にとっては大変な時期ですが、実は子どもだって、自分でやりたいこととまだ出来ないことの狭間で、どうしようもないもどかしさと戦っているんだと思います。

だから、どうして「イーヤ!」なのか自分でわからないまま、とにかく大声を出すことで、感情の起伏をコントロールできるように学んでいるのかもしれません。
あるいは、好きと嫌いを区別しながら、今まさに「自分」をつくっていく過程にがんばって向き合っているのかもしれません。
あるいは、何でもかんでも「イーヤ!」と言うことで、ママやパパと離れたり、かまってもらったりを繰り返しながら、本能的に親子の距離を確認しているのかもしれません。

「イヤイヤ期」をテーマに描いた絵本は、そんな子どもたちの複雑な気分を楽しく描いてくれているので、親子で共感できることがたくさんあると思います。絵本を通じて「イヤイヤ期」を客観視するだけでも、向き合い方は大きく変わりそうです。

3、4歳になると自然と「イヤイヤ期」も卒業です。そのころには、自分でできることも増えてきて、好きも嫌いも「どうして?」の問いかけができる子に成長しているんじゃないでしょうか。

 


『いやだいやだ』

作・絵/せな けいこ
定価/770円(税込)
対象/1歳から
福音館書店
1969年11月10日発行

ルルちゃんはなんにでもすぐに「いやだいやだ」といいます。あんまり「いやだいやだ」と言っていたら……。お母さんも「いやだ」といって抱っこしてくれなくなりました。おやつもお日さまも、保育園にはいていく靴も、大事なくまのぬいぐるみも、みんなが「いやだ」といいだします。みんなに「いやだ」といわれて、ルルちゃんは泣きべそをかいてしまいます。いやいや期の子どもといっしょに読みたいユーモラスな絵本です。

 


『ねないこだれだ』

作・絵/せな けいこ
定価/770円(税込)
対象/1歳から
福音館書店
1969年11月10日発行

夜の9時です。「とけいがなりますボンボンボン」こんな時間におきているのはだれだ? ふくろう、くろねこ、どろぼう……。いえいえ、夜中はおばけの時間。あれ? まだ寝ていない子がいますよ。おばけになってとんでいけ!  おばけがなかなか寝ない子をおばけの世界に連れていってしまいます。シンプルなはり絵と独特のストーリーで、子どもたちをひきつけてやまない赤ちゃん絵本です。

 


『ふうせんねこ』

作・絵/せな けいこ
定価/770円(税込)
対象/1歳から
福音館書店
1972年12月1日発行

「おねこさんがぷー」と怒ってほおをふくらませます。片づけるのはいや、妹にあめをやるのはいや、あれをかってくれなきゃいや、どんどんわがままを言い続けて、ぷーぷーふくれっつら。そうしたら、こねこの顔はどんどんふくらみ、空へぷーと舞い上がって、どこか遠くへ行ってしまいます。わがままを言っているとふうせんねこみたいに飛んで行ってしまうかも!? ちぎり絵で表現された、ユニークなあかちゃん絵本です。

 


『あーんあん』

作・絵/せな けいこ
定価/770円(税込)
対象/1歳から
福音館書店
1972年12月1日発行

保育園に行くのはいいけれど、お母さんが帰っちゃいやだとぼくが「あーん あーん」と泣きだすと、みんなそろって「あーん あーん」いっしょに泣きだしました。みんなの涙がたまってどんどん増えたら、「あらあら さかなに なっちゃった」。先生から知らされたお母さんが「ばけつとあみ もって ぼくを たすけて くれるでしょ」。初めて幼稚園や保育園に通う子どもたちの気持ちに寄り添うお話です。

 


『いるよね~! こんなこ』

作・絵/たかい よしかず
監修/宮里 暁美
定価/880円(税込)
対象/1歳から
主婦の友社
2016年4月8日発行

育児雑誌「ベビモ」読者のリアルな声を集めた、育児のお悩み解決絵本。前から読むと、子どもがイヤイヤするシチュエーションが、裏返して後ろから読むと、イヤイヤ期の子の、ほめてあげたいシーンが満載。イヤイヤぶりを楽しんだり、これまでにできたことや、これからできるようになったらいいことなど、絵本を通して親子の会話が広がります。前後が出会うセンターページでは、イヤイヤ期の子へのママの思いが伝わり、読後には「イヤイヤ期」が「いとおしさ倍増期」に。

 


『こわくないこわくない』

文/内田 麟太郎
絵/大島 妙子
定価/880円(税込)
対象/2歳から
童心社
2002年6月30日発行

まーくんは反対ばかり言います。夢でおばけに会ったときも「こわくないこわくない」。でも本当は……。

 


『おばけのやだもん』

作・絵/ひらの ゆきこ
定価/1100円(税込)
対象/2、3歳から
ほるぷ出版
2014年5月発行

やだやだ、だだっこは、やだもんがくっついておばけにしちゃうぞ! おばけのやだもんは、今日もだだをこねる子を探しています。そんなやだもんが歯を磨かないさっちゃんに会うと……。

 


『もっかい!』

作・絵/エミリー・グラヴェット
訳/福本 友美子
定価/1320円(税込)
対象/3歳から
フレーベル館
2012年4月発行

おやすみ前の絵本の時間。もっかい読んでほしいのに、だめだよママが先に寝ちゃうなんて! ケイト・グリーナウェイ賞を2度受賞した絵本界の奇才が贈る遊び心いっぱいの絵本です。

 


『いやだ いやだの やだもん』

作/有賀 忍
定価/770円(税込)
対象/幼児から
日本図書センター
2015年2月発行

「こんなこいるかな」は昭和61年から約20年、NHKの幼児番組「おかあさんといっしょ」のなかで放送されたアニメ番組です。いやだいやだのやだもんをはじめ、こわがりやのぶるる、いたずらっこのたずらなど、個性あふれる12人のキャラクターたちが活躍するこの作品シリーズは、子どもたちの間で大人気となり、一大ブームになりました。

 


『きらいさ きらい』

文/中川 ひろたか
絵/工藤 ノリコ
定価/1430円(税込)
対象/幼児から
理論社
2009年1月発行

アイスクリームはあついのがきらい、それにさむいのも。絵本のなかには、いろんなきらいがいっぱい。きらいって楽しい。ちょっとあまのじゃくな気持ちをリズミカルにつづった絵本です。

 


『だめだめママだめ』

文/天野 慶
絵/はまの ゆか
定価/1430円(税込)
対象/4、5歳から
ほるぷ出版
2011年10月発行

ある満月の夜、窓から入ってきたあやしいかげ。次の日の朝、ママがだめだめになっていた……!? いつもは、親に怒られてばかりいる子どもたち。でも、もしもこんな風に、立場が逆になっちゃったら……。

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オノマトペが子どもの感性や語感を養う

 

オノマトペ(onomatopee)とは、擬声語を意味するフランス語です。
擬声語には、物音や声を真似て表現する「擬音語」と、状態や心情など音のしないものを音によって表す「擬態語」があります。

例えば、大きく声を出して笑う「ハッハッハー」は擬音語、かわいい笑顔の「にこにこ」は擬態語。しっかりした雨の音を表す「ザーザー」は擬音語、「しとしと」降るのは擬態語。谷川俊太郎さんは、それぞれを「おとまねことば」「ありさまことば」 といっていて、なるほど、とてもしっくりきます。

まだ言葉の意味を理解できない小さな子どもにとっては、声に出した音からイメージがしやすく、短く簡潔な表現ができるオノマトペはとても便利な言葉です。親が普段から無意識に、「犬」よりも「わんわん」、「やわらかい」よりも「ふわふわ」を使うのは、感覚としてそのほうが伝わることをわかっているからでしょう。

「片付ける」は「ポイポイ」、「ドアを締める」は「バタン」、「飲み込む」は「ごっくん」と、日本語の表現には豊かで楽しいものがたくさんあります。さらに絵本には、大人には意味がわからない不思議な音と絵を組み合わせたものまでありますが、子どもたちは、音から想像力を膨らませて、自在に楽しむことだってできます。小さい頃のこうした音の豊かなコミュニケーションを通じて、子どもの語感や感性が養われていくのだと思います。

 


『ぴょーん』

作・絵/まつおか たつひで
定価/858円(税込)
対象/0歳から
ポプラ社
2000年6月発行

「かえるが……ぴょーん」「こねこが……ぴょーん」。ページをめくると次々にいろんな動物がジャンプします。くりかえしが楽しい絵本です。

 


『がたん ごとん がたん ごとん』

作/安西 水丸
定価/880円(税込)
対象/0歳から
福音館書店
1987年6月30日発行

がたんごとんがたんごとんと、まっ黒な汽車がやってきます。駅で待っているのは哺乳瓶。「のせてくださーい」と言って汽車に乗り込みます。ふたたび出発し、がたんごとんと次の駅へ行くと、こんどはコップとスプーンが「のせてくださーい」。さらに次の駅では、リンゴとバナナが、ネコとネズミが「のせてくださーい」。みんなをのせて汽車は「がたんごとん」と終着駅へ。そこは……。

 


『じゃあじゃあ びりびり』

作・絵/まつい のりこ
定価/660円(税込)
対象/1歳から
偕成社
1983年7月発行

「じどうしゃ ぶーぶーぶーぶー」「みず じゃあじゃあじゃあ」、楽しく明解な絵とリズミカルなことば。音から物を認識する絵本です。

 


『もいもい』

作/市原 淳
監修/開 一夫
定価/1540円(税込)
対象/赤ちゃんから
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017年7月13日発行

東京大学あかちゃんラボ発。あかちゃんといっしょに作ったあかちゃんのための絵本です。

 


『ごぶごぶ ごぼごぼ』

作・絵/駒形 克己
定価/880円(税込)
対象/0歳から
福音館書店
1999年4月15日発行

「ぷーん」「ぷくぷくぷく」「ぷぷぷ」などの音(言葉)の響きやリズムの楽しさを、色あざやかなオレンジ、赤、青などの丸の動きで子どもたちに届けます。

 


『だるまさんが』

作/かがくい ひろし
定価/935円(税込)
対象/赤ちゃんから
ブロンズ新社
2008年1月発行

「だ・る・ま・さ・ん・が」左右にうごくだるまさん。ページをめくると……あらら、びっくり、大笑い。0歳の赤ちゃんから大人まで、ページをめくるたび笑いの渦に引きこまれる、とびきりゆかいな絵本です。

 


『あっはっは』

作/谷川 俊太郎
絵/堀内 誠一
定価/1100円(税込)
対象/赤ちゃんから
くもん出版
2009年6月発行

テーマは笑い声。面白いのは、誰が読んでも「あっはっは」は豪快になり、「いひひ」はちょっといじわるそうになり、「おほほほほ」で上品ぶってみたりしてしまうこと。男の子と女の子の顔を大胆に並べ、その表情だけで二人の空気感の変化までをも読ませてしまう堀内誠一さんの絵が冴えわたります。

 


『ぴよぴよ』

作/谷川 俊太郎
絵/堀内 誠一
定価/1100円(税込)
対象/赤ちゃんから
くもん出版
2009年6月発行

「ぴよぴよ」から始まり「しゅばしゅば」「とぷん」「きいいっ」など、擬音だけで場面が進んでいきます。これ以上ないくらいのシンプルな谷川さんの言葉に、カラフルで愛らしい堀内さんの絵がかぶさって、読んでみれば小さなひよこの冒険物語となっています。

 


『ぱたぱたえほん』


作・絵/miyauni
定価/1320円(税込)
対象/赤ちゃんから
エンブックス
2010年7月22日発行

この作品の特徴はなんといっても「ぱたぱたする」こと。見開きごとに画面いっぱいに美しくデザインされた「とり」や「ちょうちょ」などを、音(声)に合わせて開いて閉じて楽しみます。「絵本+手遊び」という新しい提案は、本だからこそ。この単純明快な手遊びによって、赤ちゃんの興味は作品へと注がれ、親子の時間をよろこびに変えることでしょう。

 


『だっだぁー』
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作/ナムーラ ミチヨ
定価/770円(税込)
対象/赤ちゃんから
主婦の友社
2004年8月11日発行

「だっだぁ」「べっれー」「ふにゃはにゃ」……これらの不思議な擬音語は赤ちゃんことばです。擬音語の不思議な会話はもちろん意味をもちませんが、心のコミュニケーションが生まれることを実感できるはず。俳人でもある作者が生み出したことばなだけに、音の響きやリズムも秀逸です。ころんとかわいい表情豊かな粘土のお顔を見ながら、大きな声をあげて、赤ちゃんといっしょに言葉あそびを楽しんでください。

 


『もこ もこもこ』

作/谷川 俊太郎
絵/元永 定正
定価/1430円(税込)
対象/赤ちゃんから
文研出版
1977年4月発行

「しーん、もこもこ、にょきにょき」とふくれあがったものは、みるまに大きくなってパチンとはじけました。詩人と異色の画家がおりなす不思議でおかしな世界の絵本。

 


『ころ ころ ころ』

作/元永 定正
定価/990円(税込)
対象/2歳から
福音館書店
1984年11月22日発行

色々な色をした小さな玉が転がり出しました。一列に並んでころころ、ころころ。階段を上ってころころ、おりながらころころ。でこぼこ道をころころ、坂道もころころ。嵐の道で吹き飛ばされてもころころ、山道もころころ。ころころころころ終点までころころ……。色とりどりの鮮やかな丸の形が、絵本の上をところせましと動きまわります。小さな子どもたちが体でその動きを感じ、鮮やかな色の世界を楽しむことができる赤ちゃん絵本です。

 


『もけら もけら』

作/山下 洋輔
絵/元永 定正
構成/中辻 悦子
定価/1320円(税込)
対象/2歳から
福音館書店
1990年11月30日発行

天才ジャズ・ピアニストとモダンアートの鬼才のコンビによる美しく面白いもう一つの宇宙。言葉はリズムとなって、つぎつぎに展開する絵の世界を行進し、私たちの心を解き放ちます。

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『ぺんぎんたいそう』

作/齋藤 槙
定価/880円(税込)
対象/0歳から
福音館書店
2016年6月5日発行

「ぺんぎんたいそうはじめるよ。いきをすって~、はいて~。くびをのばして~、ちぢめて~。おなかとあたまをぴったんこ」。水族館や動物園でおなじみのペンギン。そのユニークな動きや、伸び縮みをして姿かたちが変わる様子は、まるで体操をしているかのようです。読みながら、思わず身体が動いてしまう絵本です。

 


『あかちゃんたいそう』

作/鈴木 まもる
定価/1034円(税込)
対象/赤ちゃんから
小峰書店
2011年2月7日発行

ねこさんと、ほっぺとほっぺ、すりすりすり。ここちよいリズムの言葉とともに、体を動かして遊べる、親子で楽しむスキンシップ絵本。子育て日記で赤ちゃんの姿を描いてきた作者が、親子のふれあいのために描いた絵本です。

 


『うさこちゃんのだんす』

文・絵/ディック・ブルーナ
訳/松岡 享子
定価/770円(税込)
対象/2歳から
福音館書店
2009年9月25日発行

うさこちゃんは、先生にダンスを教わりました。とても上手にできたので、みんなに見せに行くことにしました。お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん。お友だちのくまのぼりすやぶたのうたこさんにも見せましたよ。そして、みんなと一緒に踊りました! うさこちゃんの仲間が勢ぞろいして、うさこちゃんと一緒に踊ります。大好きな家族やお友だちと踊る楽しさがいっぱいの作品です。

 


『みんなでたいそう』

文/新沢 としひこ
絵/長谷川 義史
監修/三石 知佐子
定価/1540円(税込)
対象/2歳から
童心社
2004年9月1日発行

けんちゃんたいそうはじまるよ。みんなで一緒に腕を回して、ケンタカタッタ ケンタッタ! すると、うさちゃんがやってきて……

 


『パンダ なりきりたいそう』

作/いりやま さとし
定価/1100円(税込)
対象/幼児から
講談社
2016年10月13日発行

「なりきりたいそう はじめるよ」チューリップ、バナナ、おにぎり、ひこうき……、何かになりきるのって、たのしいね! さあ、絵本を見ながら、パンダといっしょに、おもいっきり体をうごかそう!

 


『おどります』

作/高畠 純
定価/1320円(税込)
対象/幼児から
絵本館
2005年6月発行

「メケメケ フラフラ メケメケ フラフラ」と、ぶたがおどります。うまがおどります。いぬがおどります。かばがぞうがおどります。ついつい踊りだしたくなるとびきりたのしいナンセンス絵本です。

 


『ブタとタコのダンス』

作・絵/長 新太
定価/本体1200円(税込)
対象/3歳から
学研プラス
2005年5月26日発行

いいお天気のある日。ブタが海辺を歩いていると、タコがピューッと飛んできて、なんとブタの鼻の穴に入っちゃった! さあ、ブタとタコはこれからどうなるでしょう? リズミカルな文章と、コミカルな展開が楽しい、ナンセンス絵本。

 


『うさぎのダンス』

文・絵/彩樹 かれん
定価/1100円(税込)
対象/4、5歳から
ひさかたチャイルド
1998年8月発行

しかけ絵本。うさぎさんたちのダンスに入りたくて、うさぎに化けようとする子だぬきのポンちゃん。でも、失敗ばかり。そこで、にんじんを食べて再挑戦!

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しりとり遊びは良いことだらけ

 

小学生の姪っ子は、今でも退屈になると「しりとり」遊びをしようと誘ってきます。
普段は遠距離なので、「LINE」でしりとりすることもあるくらい好きな遊びのひとつです。使える言葉が増えてくると、楽しいですよね。

よくよく考えてみると、しりとりは日本語に適したゲームです。「りんご→ゴリラ→ラッパ」と、言葉と声に出した音が一致するからこそ、「ご、ご、ごからはじまる言葉ってなんだっけ……」と考えることができます。

英語の場合だと、「apple」の語尾の発音は「る」なのに、「E」ではじまる言葉を探さなければいけません。これだと難しくてゲームになりません。

大人が子どもに読んであげることが大前提の絵本と同じで、しりとりも必ず2人以上必要、ひとりじゃできない遊びというのも良いなと思います。遊びであって、コミュニケーションでもある。子どもは言葉の幅を広げるアタマの体操になるし、親にとっては道具がいらないというのもありがたいところです。

とはいえ、だんだん慣れてくるとエンドレスになりがちなので、そんなときは絵本を参考に「終わりかた」を知っておくと役に立つかもしれません。

 


『どうぶつしりとりえほん』

作/薮内 正幸
定価/880円(税込)
対象/赤ちゃんから
岩崎書店
2010年10月5日発行

らっこ→こあら→らくだ……と、美しい絵とともにしりとりをします。赤ちゃんからの読み聞かせに最適です。最後はびっくりの動物が?

 


『おしり しりしり』

作/長野 ヒデ子
絵/長谷川 義史
定価/1430円(税込)
対象/2歳から
佼成出版社
2007年8月1日発行

「おしり しりしり しりとりすきで おしり しりしり しりとりあそび♪」。「おしり」で始まったしりとりは、どこへ行き着くのでしょう……? 親子で踊り出しちゃうほど、楽しい絵本です。

 


『ままです すきです すてきです』

文/谷川 俊太郎
絵/タイガー立石
定価/990円(税込)
対象/2歳から
福音館書店
1992年2月15日発行

不思議で奇妙なしりとり遊びの絵本。「たぬききつねねこ……」に始まって、ページを繰るごとに思いがけない展開で言葉と言葉が結びつき、とてもおかしな空想の世界へ読者を誘います。

 


『ぶたたぬききつねねこ』

作/馬場 のぼる
定価/1100円(税込)
対象/3歳から
こぐま社
1978年発行

子どもの大好きなしりとり遊びの絵本。朝「おひさま」が「まど」と「どあ」を照らすと、家の中から「あほうどり」が出てきて……。しりとりのことばだけなのに、絵を追ってゆくと愉快なお話が見えてきます。

 


『うんこしりとり』

作・絵/tupera tupera
定価/968円(税込)
対象/3歳から
白泉社
2013年10月発行

こいきな「うんこ」と「しりとり」が奇跡の出会い。こきみよいしりとりで、ことばもどんどん覚える! こどもにはこそばゆいうんこ問題も、ここちよくてこころはずむ「うんこタイム」に変身?!

 


『ぐりとぐらのしりとりうた』

作/なかがわ りえこ
絵/やまわき ゆりこ
定価/660円(税込)
対象/3歳から
福音館書店
2009年9月10日発行

「一月はおしょうがつつるとかめめでたいいずみのみずをのむ……」「十二月はしわすすみずみのすすすすはらい……」。軽快なリズムにのって、一月から十二月までの季節感たっぷりに、しりとりが次々に登場します。個性的で愛らしい動物たちに、子どもたちに大人気のぐりとぐらが加わって、楽しさ満点。絵と言葉のみごとなハーモニーをお楽しみください。

 


『しりとりのだいすきなおうさま』

作/中村 翔子
絵/はた こうしろう
定価/1430円(税込)
対象/3歳から
すずき出版
2001年6月発行

なんでもしりとりの順に並んでいないと気がすまない王様、料理の順番も、もちろんしりとり。そして最後は好物プリンと決まっています。間違ってラーメンなんかで食事が終わろうものなら、王様はかんかんです。悪戦苦闘する家来たちは、そんな王様をこらしめてやろうと、ある作戦を考えました。

 


『しりとりあそびえほん』

文/石津 ちひろ
絵/荒井 良二
定価/1100円(税込)
対象/3歳から
のら書店
2002年発行

おおきくなるしりとり、ちいさくなるしりとり、色のしりとりなどの、楽しいしりとりがいっぱい! 鮮やかな色彩の絵も魅力的な絵本です。

 


『しりとり』

作・絵/安野 光雅
定価/990円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
2021年2月5日発行

あさひ、ひしもち、ちからこぶ……ページをめくって絵をたどり、しりとりで遊びましょう。おしりが「ん」になったらおしまいです。あれ、最後のページまで読んでも「ん」にならない? そんなひとは、最初のページに戻ると続きが始まりますよ。何度もくりかえし遊べて、美しい絵が目にも楽しい、安野光雅流のしりとり絵本です。

 


『しりとりしましょ! たべものあいうえお』

作/さいとう しのぶ
定価/1980円(税込)
対象/幼児から
リーブル
2005年11月発行

しりとりしましょ! はじめは「あ」ではじまる楽しい「たべものしりとりあいうえお」。「あ」から「ぽ」まで67音ではじめられます。「ん」がつくたべものを出したら「しりとり番犬」がきます。

 


『てっちゃんの しりとりライオン』

作/もとした いづみ
絵/日隈 みさき
定価/1430円(税込)
対象/幼児から
PHP研究所
2007年8月1日発行

てっちゃんは、お母さんに玄関の前の掃除をたのまれました。玄関の前から、門の前、門の外へと落ち葉掃きをしていると……小さなかわいいライオンに出会いました。ライオンが、てっちゃんの持っている物をみて、「それなあに?」と聞くので、「ちりとりと ほうき」と教えてあげました。すると、「ちりとり」を「しりとり」と聞き間違えたライオンは、そのまましりとりを始めてしまったのです。

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赤ちゃんたちのオノマトペへの関心

 

赤ちゃんたちはオノマトペが大好きです。「どんぐりころころ、どんぐりこ」といった童謡を歌うとき、また散歩で見かけた犬や猫のことを「わんわん」「にゃあにゃあ」と呼ぶときの笑顔は見ているだけで楽しい気持ちになります。

私自身、小さい頃は母親に『おむすびころりん』(絵/すがわら けいこ)の絵本を繰り返し読んでもらっていました。もう絵本そのものは行方不明ですが、「おむすびころりん、すっとんとん」のフレーズを何度も口ずさんでいたことだけはよく覚えています。

赤ちゃんだった頃の私たちはなぜオノマトペを好んだのでしょうか? そこにはどんな理由があるのでしょうか。

 


オノマトペとは?

 

オノマトペとは、擬声語や擬音語の総称です。
擬声語というのは、『おむすびころりん』における、ねずみたちの「ちゅーちゅー」、意地悪なまま母などの笑い声を表現するのに使われる「げらげら」など、動物の鳴き声や人間の声を真似た言葉です。
水滴が落ちる「ぽたぽた」、ドアを勢いよく閉める「ばたん」などは、物音を真似ているため擬音語と呼ばれています。
日本においてはこの二つに限らず、「てきぱき」と仕事を片付ける、「つるつる」となめらかな感触だ、などの状態を表す擬態語も含むケースが普通です。
参考資料:『賢治オノマトペの謎を解く』(著/田守育啓)

今回は擬声語・擬音語・擬態語全てをまとめてオノマトペと呼ぶこととしましょう。
オノマトペを全く使わずとも生活をすることは可能です。ですが、少し考えてみてください。遊園地のジェットコースターに乗った感想を誰かに伝える際に「ものすごくスリルがあって面白かった!」と言うより、「上るまでグラグラ揺れてドキドキしたけど、ビューって降りるときが爽快だった」と言った方がより表現の幅が広がって伝わりやすいと思いませんか?

外国語にもオノマトペは存在しますが、擬態語を含まないケースの方が多いようです。たくさんのオノマトペは日本語の持つ特色であり、ひいては文化の一つとも呼べます。

 


子どもはみんなオノマトペが大好き!

 

赤ちゃんたちがオノマトペを好む理由は、言葉を覚えていく過程に隠されています。
生後おおよそ7ヶ月ほど、赤ちゃんは喃語を喋っています。「あーあー」「ぶー」「だーだーだー」などといった、あまり意味の見て取れない言葉です。

生後9~10ヶ月ほどになると喃語が減り、身振り手振りをしたり「ママ」「パパ」などといった言葉を話せるようになります。この頃に最初に話した言葉は「初語」と呼ばれます。ちなみに、私の初語は「あめ(だめ)」でした。両親が先に教えていた言葉だったそうです。

そこから赤ちゃんは、大人が話している言葉のうち、聞き取りやすく簡単な言葉を覚えていきます。
大人向けのしゃべり方では、単語がどこにあるかわかりにくくあまり覚えてくれません。反対に発話が短く変化があり、目で見える形に合った音をしている言葉はすぐに覚えることができます。

この条件に合う言葉が、赤ちゃん言葉と擬音語・擬声語・擬態語……すなわち、オノマトペです。

赤ちゃんにも物の形と音の関連がわかるということは研究で明らかになっています。
ま行の単語では「丸いもの」、か行やぱ行においては「とがったもの」を連想するのだそうです。特にオノマトペの多くは聞こえる音や感覚を表現したものですから、赤ちゃんたちにとっても直感的でわかりやすく、そして覚えやすいのです。

1歳から2歳前後になった赤ちゃんは、覚えた単語一つで大人たちの会話と同じことを伝えようとします。
これは「一語期」と呼ばれています。例えば、突然子どもが「にゃあにゃあ(猫)」と言い出してどこかに手を伸ばしたら、私たちはその方向を見てどこに猫がいるか見ます。これだけで「あそこに猫がいるよ」と私たちにはわかります。たったこれだけでも通じ合うことができるなんて、とても素敵なことだと思いませんか?

場面一つをオノマトペで表し、自身の感情を表すことができるオノマトペは赤ちゃんにとって立派な言語のひとつです。自分の言いたいことが大人に伝わって嬉しい赤ちゃんは、もっと言葉を話したい、聞きたいと思うことでしょう。オノマトペを発語するとき嬉しそうにしている赤ちゃんたちは、学んでいく喜びを体いっぱいに表現しているのかもしれません。

 


オノマトペを使った絵本で赤ちゃんとの関わりを増やす

 

オノマトペを生かして、赤ちゃんとコミュニケーションを取りたい……そんなときにぴったりの楽しい絵本をいくつか紹介します!

『もこ もこもこ』

作/谷川 俊太郎
絵/元永 定正
定価/1430円(税込)
対象/赤ちゃんから
文研出版
1977年4月発行

『もこ もこもこ』のイラストは眺めているだけで想像力を掻き立てられます。地面からもこもこっと何かが飛び出し、隣ではにょきにょきと生える何か……ほぼ全てがオノマトペの絵本ですが、決して退屈なお話ではありません。「もこもこもこ」は表情豊かに、「ぷうっ」は一息に読みます。緩急やアクセントをつけて読めば、たちまち赤ちゃんは、盛り上がるものを見たら「もこもこ」、風船を見たら「ぷうっ」と喜ぶようになるでしょう。

 


『むにゃむにゃ きゃっきゃっ』

作/柳原 良平
定価/990円(税込)
対象/0歳から
こぐま社
2009年発行

こちらも本文は全てオノマトペです。かわいい模様のキャラクターたちが文字通り「ぷくぷく」と泡になって浮かんでいたり、「どすーん」と落下したり。一語期の赤ちゃんは、大人たちの言葉だけではなく身振りや顔の表情にも反応を示すようになります。目のついたキャラクターがオノマトぺを体現しているという点において、赤ちゃんにとっては魅力的な絵本といえます。

 


『ぽんぽんポコポコ』

作/長谷川 義史
定価/935円(税込)
対象/赤ちゃんから
金の星社
2007年1月発行

誰のお腹が「ぽんぽん」されているのか、赤ちゃんと一緒に考えてみる絵本です。ぽんぽんぽこぽこ、ぽんぽんぽこぽこ……と、赤ちゃんのお腹を「ぽんぽん」しながら読んでみましょう。答えの動物によって「ぽんぽん」の読み方を変えたりと楽しみ方は様々です。赤ちゃんと一緒に体を動かすような遊びがしたいという方に特におすすめします。

 


『ゆき ふふふ』

作/ひがし なおこ
絵/きうち たつろう
定価/880円(税込)
対象/0歳から
くもん出版
2010年10月発行

「きせつのおでかけえほん」シリーズの一つです。この絵本のテーマは「雪」。冷たい冬の雪遊びが美しいイラストと共に描かれています。雪がふわふわと降ってきてしゅわんしゅわんと溶けていく様子を繰り返し読めば、自然と子どもも雪を待ち遠しく思うに違いありません。私も久々に雪遊びをしてみようかという気持ちになりました。
シリーズのほかの作品もおすすめです!

 


『だるまさんが』

作/かがくい ひろし
定価/935円(税込)
対象/赤ちゃんから
ブロンズ新社
2008年1月発行

だるまさんが……と言えば、「転んだ!」ですよね。ですがこの絵本は違います。この絵本のだるまさん、転ぶだけではなく「ぷしゅー」、「ぷっ」などバリエーション豊かな動きをします。次はどんなだるまさんなのか赤ちゃんに聞いてみたりするのもいいかもしれません。どんなオノマトペを赤ちゃんが口に出すか楽しみですね。最後のページをめくれば大人も子どももみんな笑顔になることは間違いありません。詳しくはどうぞ実物の絵本を手にとってご覧ください。

 


『ぱたぱたえほん』


作・絵/miyauni
定価/1320円(税込)
対象/赤ちゃんから
エンブックス
2010年7月22日発行

エンブックスの新刊赤ちゃん絵本『ぱたぱたえほん』では、ページいっぱいのとりさんを「ぱたぱた」、ちょうちょさんを「ひらひら」させつつ、開いたり閉じたりして遊ぶことができます。おめめを「ぱちくり」するところで目をぱちぱちしてみたり、身振り手振りも交えて遊んでみましょう! 楽しい時間になることは間違いなしです。子どもたちが「赤ちゃん」でいる時期はあっと言う間です。今しかできない親子スキンシップを楽しんでみませんか?

 


執筆者/吉田 茜
淑徳大学 人文学部 表現学科3年
文芸表現コースを専攻。現在の研究テーマは「邦訳について」です。文章について学びたいという思いから表現学科のカリキュラムに惹かれ淑徳大学へと入学しました。レポートや論文などにおいて事前調査をまとめていく作業が最も楽しいと感じています。好きな絵本は『ミッケ!』シリーズ。

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絵本で親子のふれあいは増やせる?

 

エンブックスの新刊の赤ちゃん絵本は「親子がスキンシップしたくなる」をコンセプトに作られました。
絵本を通して、親子の心の距離を今よりもっと縮めてもらうのが狙いです。ページをめくるごとに、かわいらしい動物たちが「なでて、なでて」と繰り返し赤ちゃんに呼びかけます。

しかし、私はスキンシップを増やすためになぜ絵本を選んだのだろうと、疑問を感じました。
親子のふれあいを増やすのなら、一緒に手遊び歌をしたり、工作をしたり……もっと他に方法があるのではないか、と。
よりこの絵本を理解するために、淑徳大学短期大学部の子ども学科准教授、またご自身も幼稚園教諭の経験がある小薗江幸子先生にお話を伺いました。

 


interview
小薗江幸子 准教授
以前まで幼稚園に勤めており、現在は淑徳大学短期大学部にて保育士、幼稚園教諭を目指す学生を支えている。
専門分野:臨床発達心理学及び保育学子ども理解
担当科目:人間関係、教師論、教育心理学、保育課程論、実習指導Ⅱ


 


大切なのは、読み聞かせで「何を」育みたいのか

 

――まず、「なでてなでて」を読んでみた感想はいかがでしたか?

絵がさわりたくなる柔らかい色合いで、材質の感じがよく表れています。
また文章に無駄がなく、「なでてなでて」という繰り返しの呼びかけもシンプル。車を「ぶーぶー」と言ったり、赤ちゃんが物の状態を音に置き換えて結びつける段階が、ちょうど1歳半から2歳なんです。そういった意味も含めて、言葉の使い方がとても適切ですね。

 

――先生も幼稚園では大勢の子どもたちに絵本を読み聞かせていらっしゃったと思います。でもこの「なでてなでて」はお父さん、あるいはお母さんと赤ちゃんの一対一で読む絵本ですよね。

そうですね。幼稚園での読み聞かせは友だちと大勢でイメージを共有する、という楽しさがありますが、一対一の絵本は距離の近さがポイントになると思います。お母さんのひざの上で、自分に直接読んでくれている。それが赤ちゃんたちは嬉しいのではないでしょうか。

 

――この絵本は「親子でスキンシップしたくなる」をコンセプトに作られています。親子の絆やつながりを深めるために、やはり絵本は重要なのでしょうか?

絵本を読み聞かせすることで、話しかけられて嬉しい、お母さんの声が聞けて気持ちいいとか、赤ちゃんが得られるものはたくさんあると思います。ですがそれだけでなく、読み聞かせをすることでどの部分を育みたいのかということが大切なんですね。
本があればいいというわけではないと思います。その点、この「なでてなでて」はコンセプトにぴったり合っていますね。
ただ読んでいて楽しいだけでなく、言葉のリズムの心地よさやふれあう喜びなど、より本質的な内容に仕上がっているという印象を持ちました。

 


『なでてなでて』は親子のふれあいを増やしてくれる

 

2人で味わえる感動、言葉のリズムの心地よさ、ふれあう喜び。
これらの要素は絵本の読み聞かせでしか得られないものです。お父さん、お母さんの膝の上で同じものを見て、触れて、気持ちを共有する。絵本が赤ちゃんたちにとって大切なものになるように、本を読んで一緒に過ごした時間が宝物になるかもしれません。

よく見てみると文章や言葉だけでなく、見開きのページが実にこだわって描かれているのが分かります。
例えば、ねことハリネズミを見比べてみると、先生のおっしゃった通りそれぞれの質感がリアルに伝わってきますが、それだけではありません。「ふわふわ」と「ちくちく」、どちらの文字も手描きで、しかも異なるフォントで描かれています。「ふわふわ」はあたたかみのある丸い文字。「ちくちく」はとがったような四角い文字。字が読めない赤ちゃんでも、文字の雰囲気や印象から、動物たちのさわった感触が想像できるのではないでしょうか。

他にもなでるときの手の形が違うなど、いろんな発見があるかもしれません。ぜひ赤ちゃんの反応を見ながら、一緒に探してみてください。
読んで楽しむだけでなく、「なでてなでて」は心の距離をぐっと縮めてくれる絵本です。絵本を通して、家族と過ごす時間がより素敵なものになってほしいと思います。

 


執筆者/田中 夏未
淑徳大学 人文学部 表現学科3年
文芸表現コースを専攻。研究テーマは「悲話の持つ要素は何か」です。作家か声優を目指し「文芸表現コース」「放送表現コース」がある淑徳大学に入学。授業を通して作られた役を演じるより、自分で一から物語を描く楽しさを再認識しています。好きな絵本は『ルリユールおじさん』。


『なでてなでて』


え/日隈 みさき
ぶん/西川 季岐
定価/1320円(税込)
対象/赤ちゃんから
2017年10月20日発行

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言葉は耳で覚えます。耳で聞いたその言葉が示す「何か」を、目で見たり触って感じたり何度も確かめながら、言葉と「何か」が結びついたときにはじめて意味が生まれます。だから、ほとんどの赤ちゃんはお母さんの言葉を食べて、一番耳にする言葉から覚えていくようになります。

ランキング1位の「まんま」は、生後10カ月から話されはじめ、平均1歳3カ月で話されたそうです。はじめて赤ちゃんが話す言葉をみていると、なるほどあいさつを中心にお母さんが子どもに話しかけながら、育児をしている様子が見えてくるようで、なんだかとても幸せな気分になります。今でもやっぱり「いないいないばぁ」をするんだとか、逆に新鮮。

マザータング(mother tongue)は母国語と訳しますが、子どもが自然に覚えるまさに母の言葉という意味です。人間はかしこいので、まさかスマホやロボットの機械語がマザータングになる時代がやってくるとは思いませんが、時代が変わっても子どもには親がたくさんの言葉をかけてあげることが大事であることは変わりません。

はじめて赤ちゃんが話す言葉ランキング20

順位 言葉
1 まんま(ごはん)
2 おっぱい
3 いないいないばぁ
4 ママ
5 はーい(返事)
6 ワンワン
7 ねんね
8 パパ
9 バイバイ
10 よいしょ
11 どうぞ
12 お母さん
13 お父さん
14 ニャンニャン
15 くっく(靴)
16 ある、あった
17 痛い
18 ないない(片付ける)
19 バナナ
20 ブーブー(車)

※2008年、NTTコミュニケーション科学基礎研究所調べ
対象:生後10カ月~3歳の子どもを持つ親398人
期間:2007年4月~2008年2月

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