ヨーロッパにおける絵本のルーツは印刷技術の進歩とともに
絵本の歴史をたどっていくと、そのルーツが印刷技術の進歩とともにあることがわかります。
1445年にドイツで、ヨハネス・グーテンベルクが活版印刷技術を発明すると、これに興味を持ったウィリアム・キャクストンが、1476年にイギリスで最初の印刷所をはじめました。そこで、 キャクストンは、フランス語版「イソップ物語」を英語版に翻訳したり、『アーサー王伝説』や『マビノギオン』などのイギリス文学の宝を掘り起こしました。
『アーサー王の死』
著/トマス・マロリー
定価/1100円(税込)
ちくま文庫
1485年発行
17世紀後半まで子どもに喜ばれなかった子どもの本
ただし、こうした文学は上流階級の大人向けに出されたもので、子どもを対象とした本も、親が喜ぶことを前提とした、しつけや教育を目的とした「教科書」的なものに限られました。
それは1600年代後半にチャップ・ブック(Chapbook)が一般に浸透するまで続きます。チャップ・ブックとは、4、8、12、16、24ページで構成されたポケットサイズの安価な冊子です。内容は、宗教的なもの、幽霊話や占いといった超自然的なもの、昔話、笑い話、伝説、ABCの本やそれに類したものとさまざまなものがありました。そのころから少しずつ挿絵が入るようになりました。
「子どもを楽しませる」新しい価値の夜明け
本当の意味で、はじめて「子どもを楽しませるための本」を本格的に出版したのは、ロンドンの書籍商ジョン・ニューベリーです。
1744年に出された『小さなかわいいポケットブック(A Little Pretty Pocket Book)』 は、子どもに楽しみを与えた最初の本と言われています。古い時代の教訓的要素を含みながらも、子どもの興味を引き出し、遊ばせながら学ばせるようにユーモラスな挿絵を使いました。
彼は児童文学の父と称され、最も優れた児童文学者に与えられる「ニューベリー賞」は、世界で最も古く権威のある文学賞のひとつです。
▲ジョン・ニューベリーの出版物の中で最もよく読まれたものの一つ『くつふたつの物語』。初版1765年
日本でも手に入るイギリスのおすすめ絵本&文学
『ピーターラビットのおはなし』
作・絵/ビアトリクス・ポター
訳/いしい ももこ
定価/770円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
原作/1902年10月発行
いたずらっこのピーターは、お母さんの言うことを聞かず、マグレガーさんの畑に忍び込みます。れたすやさやいんげん、はつかだいこんを食べた後、ぱせりを探していると、目の前に現れたのはマグレガーさん。怒ったマグレガーさんはピーターを追いかけます。何度かマグレガーさんに捕まりそうになりながら、上着も靴もなくして命からがら逃げ帰ったピーター。疲労困憊のピーターに、お母さんは煎じ薬を飲ませてくれました。
『ビロードのうさぎ』
作/マージェリィ・ウィリアムズ・ビアンコ
絵/酒井 駒子
定価/1650円(税込)
対象/幼児から
ブロンズ新社
原作/1922年発行
ある日、ぼうやのもとにやってきたビロードのうさぎ。子どもに心から愛されたおもちゃにおとずれる「子どもべやのまほう」の話を耳にします。やがて、ぼうやにとってかけがいのないものになったうさぎは……
『プーのはちみつとり』
文/A.A.ミルン
絵/E.H.シェパード
訳/石井 桃子
定価/1100円(税込)
対象/児童から
岩波書店
原作/1926年発行
クリストファー・ロビンにひきずられて階段の上からバタンバタンとクマのプーさん登場! くいしんぼうのプーさんは青い風船につかまって、ハチにばれないようにハチミツをとろうと大ふんとうしますが…….装いをあらたに一話読み切りでお届けする、これがプーさん最初のお話。
『かしこいビル』
作/ウィリアム・ニコルソン
訳/まつおか きょうこ、よしだ しんいち
定価/980円(税込)
対象/幼児から
ペンギン社
原作/1926年発行
メリーちゃんはおばさんの家に泊まりに出かけますが、人形のビルをうっかり忘れてしまいました。ビルは線路づたいに走って無事追いつきました。半世紀以上も子ども達に愛されてきた古典的名作。人形のビルは大好きなメリーが乗った汽車を追いかけ……細部まで心配りを感じる本。
『ねこのオーランドー』
作・絵/キャスリーン・ヘイル
訳/脇 明子
定価/2090円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
原作/1938年発行
ご主人から念願の夏休みをもらったお父さん猫のオーランドーは、意気揚々と家族ぐるみのキャンプに出かけました。気持ちよく乾いた場所にテントを張って、いよいよキャンプの始まりです。オーランドーは、子猫たちにあやとりを教えたり、釣りを教えたり、ハイキングに出かけたりして、楽しく過ごします。そして最後の晩は、キャンプファイヤーを焚いて、歌ったり踊ったり…。猫たちの楽しそうな様子が、大型の画面一杯にあふれます。
『機関車トーマス』
文/ウィルバート・オードリー
絵/レジナルド・ダルビー
訳/桑原 三郎
定価/880円(税込)
対象/3歳から
ポプラ社
原作/1946年発行
ちびっこ機関車のトーマスは、いたずら好きであわてんぼう。トラブルをおこしては周囲をひやひやさせています。そんなトーマスの活躍を4つのお話で描きます。
『くまのパディントン』
作/マイケル・ボンド
絵/ペギー・フォートナム
訳/松岡 享子
定価/660円(税込)
対象/小学中学年から
福音館書店
原作/1958年発行
一度読み始めたらやめられない、おかしなおかしなクマのパディントンのお話の第1冊目。ブラウン夫妻がパディントン駅で見つけた子ぐまが、夫妻にひきとられ縦横無尽に活躍します。
『ロージーのおさんぽ』
作/パット・ハッチンス
訳/わたなべ しげお
定価/1320円(税込)
対象/3歳から
偕成社
原作/1967年発行
何も知らず散歩を楽しむめんどりのロージーと、あとを追いかけるきつねが織りなす、スリルあるドラマを“絵で語る”異色の絵本。
『おちゃのじかんにきたとら』
作・絵/ジュディス・カー
訳/晴海 耕平
定価/1650円(税込)
対象/4歳から
童話館
原作/1968年発行
ある日、ソフィーとお母さんがお茶の時間にしようとしていると、「ごめんください、お茶の時間にご一緒させていただけませんか」と毛むくじゃらのとらが入ってきます。お母さんは言います「もちろん、いいですよ。どうぞおはいりなさい」二人は次々に食べものをすすめ、それを、とらはぜんぶたべてしまいました。家中の食べものも飲みものもなくなってしまうまでです!
『さむがりやのサンタ』
作・絵/レイモンド・ブリッグズ
訳/すがはら ひろくに
定価/1320円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
原作/1973年発行
「やれやれまたクリスマスか!」面倒くさそうに目を覚ましたのは、サンタクロース。寒さに愚痴をいい、煙突に文句をいいながら町の子どもたちにプレゼントを配ります。南の島に憧れながら、一日の仕事をおえると、お風呂にはいり、ビールを一杯飲んで、ごちそうを楽しみます。トナカイたちにおいしいえさをあげることも忘れていません。皮肉屋だけど実はやさしい、人間味あふれるサンタクロースを描いたクリスマスにぴったりの絵本です。
『チムとゆうかんなせんちょうさん』
作/エドワード・アーディゾーニ
訳/せた ていじ
定価/1430円(税込)
対象/5、6歳から
福音館書店
原作/1974年発行
船乗りになりたくてたまらないチムは、お父さんやお母さんに内緒で大きな汽船に乗り込みます。チムを見つけた船長さんは、チムを叱りつけ、ただで船に乗るなら、しっかりと働くようにと甲板そうじを命じます。チムは一生懸命働き、船乗りたちや船長さんにも少しずつ認められる存在となります。そんなある夜、船が岩にぶつかり座礁してしまいます。船に取り残されたチムと船長さん。ふたりが絶対絶命を覚悟したそのとき……。
『ゆきだるま』
絵/レイモンド・ブリッグズ
定価/1430円(税込)
対象/幼児から
評論社
原作/1978年発行
少年のつくったゆきだるまが、真夜中にうごきだした! 少年は家の中をあんないし、ゆきだるまは少年をつれて空をとび、遠い外国の町をみせてくれます。そして朝がきて……。少年とゆだるまが楽しくあそんだ、ファンタスティックな一夜のできごと。
『もものきなしのきプラムのき』
作/ジャネット・アルバーグ
絵/アラン・アルバーグ
訳/佐藤 凉子
定価/1430円(税込)
対象/幼児から
評論社
原作/1978年発行
ほんをひらいて、よくみてごらん。かくれているひと、みつけてごらん。おやゆびトム、シンデレラ、三びきのくまさん、ロビン・フッドなど、おなじみの童話の主人公たちが、絵の中のどこかにかくれています。
『ねえ、どれがいい?』
作/ジョン・バーニンガム
訳/松川 真弓
定価/1650円(税込)
対象/幼児から
評論社
原作/1978年発行
「ネコとボクシング……」「サルとくすぐりっこ……」「サイのしたじき……」つぎつぎと繰り出される、ギョッとおどろく選択肢。子どもたちは「どれもイヤだ~!」と言いながら大よろこびで、こっちかな~、あっちかな~、と悩みます。
『すきですゴリラ』
作・絵/アンソニー・ブラウン
訳/山下 明生
定価/1540円(税込)
対象/幼児から
あかね書房
原作/1983年発行
ハナはゴリラがだいすき。いつも忙しいお父さんは動物園にもつれていってくれません。でも誕生日の真夜中ふしぎな事が……。
『パンやのくまさん』
作・絵/フィービ&セルビ・ウォージントン
訳/まさき るりこ
定価/1100円(税込)
対象/3歳から
福音館書店
原作/1987年発行
パンやのくまさんは、朝早く起きて、パンやパイ、お誕生日のケーキを作ります。パンがほかほかに焼きあがると、車にパンをつみこみ売りに行きます。パンが売れると、次はお店に帰りお店番。仕事が終わると、お店の奥の家に帰って、暖炉の前で晩ごはんを食べ、今日いただいたお金を数えた後、2階に上がって眠るのです。こうして淡々と、そしてきっちりと、パンやさんの仕事をこなすくまさんの絵本です。
『きょうはみんなでクマがりだ』
再話/マイケル・ローゼン
絵/ヘレン・オクセンバリー
訳/山口 文生
定価/1650円(税込)
対象/幼児から
評論社
原作/1989年発行
「きょうは みんなで クマがりだ。そらは すっかり はれてるし こわくなんか あるもんか!」。リズミカルな文章と、ダイナミックなイラストで人気の絵本です。
『ぜったいたべないからね』
作/ローレン・チャイルド
訳/木坂 涼
定価/1540円(税込)
対象/3歳から
フレーベル館
原作/2000年発行
チャーリーのいもうとローラには、きらいなたべものがたくさん! とくにトマトは「ぜったい」いやなんですって。 チャーリーは、なんとかしてローラにたべさせようとするのですが……?
『もっかい!』
作・絵/エミリー・グラヴェット
訳/福本 友美子
定価/1320円(税込)
対象/3歳から
フレーベル館
原作/2011年発行
おやすみ前の絵本の時間。もっかい読んでほしいのに、だめだよママが先に寝ちゃうなんて! 遊び心いっぱいの絵本です。
『クレヨンからのおねがい!』
文/ドリュー・デイウォルト
絵/オリヴァー・ジェファーズ
訳/木坂 涼
定価/1650円(税込)
対象/4歳から
ほるぷ出版
原作/2013年発行
ケビンが絵をかこうとクレヨンの箱を取り出すと、ケビン宛の手紙の束が。それは、クレヨンからの手紙でした……ユーモアあふれる視点で、クレヨンたちの気持ちを代弁したユニークな作品。