おすすめの絵本

『しろくまちゃんのほっとけーき』

作/わかやま けん
定価/880円(税込)
対象/0歳から
こぐま社
1972年発行

 


我が家の長女は甘いものが苦手だ。
生クリームやケーキが食べられない。好きなおやつはせんべいと甘栗。3歳にしては渋いラインナップである。

そんな彼女が唯一食べられる甘いものがホットケーキ。
だから、我が家の冷蔵庫には、いつもホットケーキミックスが常備してある。長女が生まれてからというもの、記念日にはケーキを買うのではなく、家でホットケーキを焼くのが定番となった。

長女がホットケーキ好きになった理由が、実はもう一つある。
『しろくまちゃんのほっとけーき』を読んだからなのだ。

しろくまちゃんがホットケーキを作ります。卵を割って、牛乳を入れて……。焼き上がったらこぐまちゃんを呼んで、二人で「おいしいね」。見開きいっぱいに描かれたホットケーキの焼ける場面は、子どもたちに大人気。

これほどまでホットケーキが食べたくなる絵本があるだろうか。
ホットケーキの生地を混ぜる音、フライパンに流す音……。全ての描写がとにかく美味しそうで、大人でも思わず食べたくなってしまう。
オレンジ色の表紙も印象的で、子どもの目につきやすいのか、保育園のお友達も皆この絵本が大好きだそうだ。

最近料理にも興味を持ち始めた長女。ホットケーキを作る際は、「卵割りたい! まぜまぜしたい!」と言ってくる。
休日限定、ドロドロに汚れること必須のお手伝いなのだが、長女と一緒にホットケーキを焼くこの時間は、どんな朝ご飯よりも私の心を満たしてくれる。

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『おもちのきもち』

作/かがくい ひろし
定価/1650円(税込)
対象/幼児から
講談社
2005年12月17日発行

 


我が家の近くに大きな児童館がある。そこにはたくさん絵本が置いてあり、絵本好きの長女がとても気に入っている。

児童館に行くと彼女はだいたいいつも同じ絵本を読むのだが、今日は見たことのない絵本を持ってきた。
タイトルは『おもちのきもち』。「だるまさんシリーズ」で有名なかがくいひろしさんの絵本だ。絵本作家デビューのきっかけになった本らしい。
季節はちょうど、もうすぐお正月。さっそく長女を膝にのせて絵本を読んでみた。

面白い!

第27回講談社絵本新人賞受賞作。おもちだって、いろいろなやみがあるんです。きょうだいたちは、にんげんにたべられてしまうし……。そこでわたくし「かがみもち」は、お正月、とある決心をしました! びっくり、めでたい、驚愕の「おもちワールド」へ出発。

まず、主人公のお餅(正確には鏡餅)がなんとも憎めない。なんと「食べられるのが怖い」と、ペッタンペッタン逃げ出してしまうのだ。お餅たちはこんなことを考えていたのか、と笑ってしまう。最後のオチも衝撃的だ。心の底から「そうきたか」と思った。

私は一気にかがくいワールドに引き込まれた。長女も楽しそうに「おもち歩いてる!」と笑っている。

今年のお正月はこの絵本を持って帰省してみようか。長女はきっと、じいじばあばと一緒にこの絵本を見て、お餅を食べて笑っているだろう。
お正月の家族団らんがよく似合う、とてもあたたかい気持ちにさせてくれる絵本だ。

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『だるまさんが』

作/かがくい ひろし
定価/935円(税込)
対象/0歳から
ブロンズ新社
2008年1月発行

『だるまさんの』

2008年8月発行

『だるまさんと』

2009年1月発行

 


失礼ながら、「これ子どもが分かるのかな?」と思っていた。
なぜなら、小さい子どもは“だるま”なんて知らないだろうし、分からないんじゃないかと思っていたからだ。

かがくいひろしさんの「だるまさんシリーズ」。有名なのでよく目にしていたが、そんな理由から手に取っていなかった。

しかし、たまたまシリーズのうちの一つ『だるまさんが』を知り合いにいただく機会があり、「だるまさん」が我が家の本棚に仲間入りした。当時長女は1歳くらいだった。

「だ・る・ま・さ・ん・が」左右にうごくだるまさん。ページをめくると……あらら、びっくり! 大わらい! さて、おつぎは……? 0歳の赤ちゃんから大人まで、ページをめくるたびわらいの渦に引きこまれる、とびきりゆかいな「だるまさん」シリーズ第1弾です。

だるまさんシリーズの絵本は究極にシンプル。擬音語とリズムの良い文章だけで作られた絵本だ。だるまさんの顔がなんとも表情豊かである。

しかし、これが長女に空前絶後の大ヒット。だるまなんて見たこともない長女が、だるまさんと一緒に「どてっ」と転び、「びろーん」と伸び、「ぷっ」とオナラをし……と、大爆笑している。

なんだこの絵本。正直とてもびっくりした。

「だるまさん」はあっという間に長女のお気に入り絵本の一つになり、その後すぐにシリーズの他2冊『だるまさんの』『だるまさんと』を購入した。

「だるまさん」を読んでいて、分かったことがある。だるまを知ってようが知らなかろうが、子どもには関係ない。長女にとっては絵本の中の「だるまさん」はお友達で、一緒に音やリズムを楽しむ遊び仲間である。それで十分なのだ。

余談だが、私にとっても「だるまさんシリーズ」はお気に入りの絵本だ。
なぜなら、読むのがとても簡単なうえに、身体を使った遊びもできるからだ。子どもの夜の体力消耗に一役買ってくれるのだ。

そんな「だるまさん」に、きっと今夜もお世話になるのである。

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『いっせーの ばあ』

作/新井 洋行
定価/1210円(税込)
対象/赤ちゃんから
ポプラ社
2017年11月16日発行

 


「ばぁー、どこ?」

もうすぐ3歳になる長女が尋ねてきた。
彼女は今、ある絵本を探して本棚をあさっている。それは『あけてびっくり しかけえほん いっせーの ばあ』という絵本だ。

「まだ探してる……」

実を言うと、この絵本はもうない。先日私が捨ててしまったのだ。

この絵本は、見開きページが折り畳まれており、開くとページが上に大きく飛び出すようになっている。卵の絵を開けばヒヨコが、砂にあいた穴の絵を開けばチンアナゴが飛び出すしかけだ。

いっしょに あそぼ! なにが とびだすかな? それじゃ いくよ! いっせーの……ばあ!
チンアナゴ、おばけに、ぬいぐるみに、こどもたちの大好きなものがたくさん飛び出すよ。そして最後に飛び出すのは……? ページが上に大きく開き、あっという間に大型絵本に早変わり。ダイナミックなしかけに子供たちは大興奮! まったく新しい、いないいないばあ絵本です!

長女はこの絵本を病的に気に入っていた。
何度も読んでとせがまれ、時には1人で「ばぁー!」と言いながら、ページをパタパタさせ喜んでいた。しかし、彼女があまりにも読むので、すぐにあちこち破れ始めた。そのつど修理し何とか読んでいたのだが、とうとう先日開くページが一枚もなくなった。

「最近は読む頻度も少なくなってきたし、もういいだろう」

私はそう思い、本を処分したのだ。
しかし、彼女はすぐに気がつき、以来「ばぁーがない」と絵本を探し続けているのだ。

そんな彼女に私は言った。「本破れちゃったからアナゴさんもういないよ? 面白くないでしょ?」

それに対する長女の返事。「アナゴさん描いてあげるの」と、クレヨンを持ってきたではないか。

いやはや、まいった。そして、捨ててごめん。ボロボロでもあなたにとって大事な物なのにね。

私は通販サイトを開き、同じ絵本を購入した。彼女なら、またボロボロになるまで読んでくれるだろう。
いつだって、子供はまっすぐで正しい。親は教わることばかりである。

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『あかまるどれかな?』

作/しみず だいすけ
定価/990円(税込)
対象/0歳から
ポプラ社
2017年12月発行

 


「あお!」

長女が初めて覚えた色が「青」だった。それはこの絵本がきっかけだったように思う。タイトル通り、「あかまる」を探し、指差しで遊ぶ絵本だが、ページを開けばカラフルでいろいろな図形がいっぱいだ。

長女のお気に入りは、いつも「青」だった。それ以来、我が家では「あかまる」ではなく「あお」を指差す絵本となった。

「あかいろどれかな?」「おおきいのはどっち?」などの質問に答えて、「これ!」とゆびさし。ただ書いてあることを覚えるのではなく、自分で考えて答えを出すから、「できた!」よろこびもぐーんとUP! 子どもの「できた!」が増えるたび、親のよろこびもぐーんとUP! 親子で楽しく遊びながら、“地頭=自分で考える力”がぐんぐん育つ、新感覚の絵本です。

0歳のころは眺めていただけだが、2歳では「ママ、青い丸はどれ?」と、逆に質問してくるようなった。

もうすぐ3歳になる現在では、0歳の次女に向かって「青い丸はどれですか?!」と読み聞かせをするようになった。

この絵本は、色だけではなく「四角いのはどれ?」「一番大きいのはどれ?」と、子供の成長に合わせて質問を変えて楽しむことができる。さらに、単純な絵本なので年齢の違う兄弟、姉妹で一緒に読むことができるのも良い。

相変わらず「青」が大好きな長女。最近はピンクも捨てがたいようで、毎朝服を選ぶ時のコーディネートは真剣そのものだ。

これから成長していく中で、たくさんの色を知ってもらいたい。私も知らないようないろんな景色もたくさん見てほしい。

次女に向かって得意げに絵本を読んでいる長女を見ながら、そんな風に思う。

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『しましまぐるぐる』

絵/柏原 晃夫
定価/968円(税込)
対象/0歳から
学研プラス
2009年4月9日発行

 


赤ちゃんや幼児の手が好きだ。

ふっくらした小さな手のかわいらしさときたら格別。紅葉のような手、という表現がまさにぴったりだ。

『しましまぐるぐる』という絵本がある。
生まれて間もない赤ちゃんは、赤や黒といったコントラストの強い色や、目鼻口のある顔の絵は認識することができる。この絵本にはストーリーはないが、顔のついたカラフルなぐるぐる模様やしま模様がたくさん出てくる。

あかちゃんが注目する黒を中心に、2カ月児でも見やすいコントラストの強い配色にデザインしたベイビーブック。あかちゃんが生まれながらに反応する「顔」や、反応のいいとされる「しましま」と「ぐるぐる」がいっぱいのかわいくてきれいな絵本。

長女が生後3ヵ月のときにこの絵本を見せたのだが、口を大きく開けて「きゃあ!」と笑い、食い入るように見つめていた。

まだ大した遊びもできない時期だったので、初めて長女とコミュニケーションが取れてとても嬉しかった記憶がある。

あんよができる頃になると、一緒に模様を指差して遊べるようになった。「ちまちま~」と言いながら可愛らしい手が絵をなぞっていく。本人はいたって真剣である。

もうすぐ3歳になる長女の手はずいぶん大きくなったが、しましま模様を指差す手はまだまだ紅葉だ。でも、きっとすぐ「子どもの手」になってしまうんだろう。

この手を眺める時間もまるごと愛おしい。何気ない瞬間の中にたくさんの「見逃したくないもの」があると、この絵本が教えてくれたように思う。

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『おやこでぎゅっ!』

作/まつばら いわき
定価/935円(税込)
対象/0歳から
ひかりのくに
2014年11月発行

 


「まま、”ぎゅっ!”よんで」

我が家では寝る前に絵本を読む。中でもこの絵本は2歳の長女のお気に入りだ。

この絵本には、いろんな動物の親子が抱きしめ合っている様子が出てくる。動物によってそれぞれ違った抱きしめ方をしているのだが、その挿絵がリアルに描かれていてとてもかわいい。

赤ちゃん向けのふれあい絵本。いきいきとした本物のような動物たちをしっかりと見ることができます。「ぎゅっ」と抱きしめる、愛情あふれるしぐさや表情に、読んでいて思わず笑みがこぼれます。

「はーい、おいで。ぎゅー!」

挿絵の動物たちをマネして、私たちもぎゅっと抱き合う。頬と頬をくっつけ合うと、長女はいつも楽しそうに笑う。

今年の夏に次女が生まれ、早くもお姉さんになった長女。次女にママを取られたように感じていたのだろうか。今まで以上にこの絵本を読んでくれとせがむようになった。

眠りについた長女を見ながら、思う。大きくなったようでも、まだまだ2歳。赤ちゃんと子どもを行ったり来たり。きっとこの絵本は、まだ言葉のつたない長女にとって、「さみしい」を伝えられる唯一のツールなのだ。

「おかあさん、おかあさん。ねえ、ぎゅってして」

絵本に出てくるこのセリフは、長女の複雑な気持ちを代弁してくれるのだろう。この絵本は、そんな長女と私に、何物にもかえがたい親子の時間を作ってくれる。

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『てぶくろ』

絵/エウゲーニー・M・ラチョフ
訳/内田 莉莎子
定価/1100円(税込)
対象/3歳から
福音館書店
1965年11月1日発行

 


この時期になると、読みたくなる1冊です。好きな絵本ベスト10に入る作品。
『よあけ』と同じで、これも絵本じゃないと味わえない魅力があります。

おじいさんが森の中に手袋を片方落としてしまいます。雪の上に落ちていた手袋にネズミが住みこみました。そこへ、カエルやウサギやキツネが次つぎやってきて、「わたしもいれて」「ぼくもいれて」と仲間入り。手袋はその度に少しずつ大きくなっていき、今にもはじけそう……。最後には大きなクマまでやって来ましたよ。手袋の中はもう満員! そこにおじいさんが手袋を探しにもどってきました。さあ、いったいどうなるのでしょうか?

活字だけを頼りに、てぶくろに動物が次々に入っていくシーンを具体的に想像することは簡単なことではありません。
ラチョフの絵は「入るはずのない」ファンタジーを、実に自然に見せてくれ、読者を物語の世界へ誘ってくれます。

最初に登場するのはねずみ。小さなねずみならてぶくろにすっぽり収まって、温かく暮らす様子に違和感はありません。この導入がうまい。

次にかえる。かえるだって小さいのでてぶくろに入るでしょう。でもよく見ると、もうラチョフは絵に仕掛けをつくりはじめているんですね。てぶくろに「はしご」がかかっています。

次のうさぎがやってくる時には、読者は「てぶくろ=お家」でページをめくっているはず。そのイメージチェンジの滑らかなこと!

玄関ができ、窓が開き、変化していく「お家」に、きつね、いのしし、おおかみと大型動物たちも、ぎゅうぎゅうと肩を寄せ合う姿が微笑ましい。

どれくらいの時間が経ったのか、オチではおじいさんが戻ってきて、ファンタジーの世界からきちんと現実の世界に戻してくれる。それも見事。子どもたちは安心してこの物語を閉じることができるのです。

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『あかですよ あおですよ』

作/かこ さとし
定価/990円(税込)
対象/2歳から
福音館書店
2017年2月5日発行

 


かこさんの絵はうまくない。
うまくないけれど、これほど魅力的な絵を描く作家は他にいないと思います。

『だるまちゃんとてんぐちゃん』にたくさんのぼうしが見開きいっぱいに描かれた場面がありますが、ひとつとしてウソがない。

ともすれば、ぼうし“らしい”ものを描いて済ませるところを、子どもが手にとるからこそ、どれもちゃんと調べて丁寧に描かれています。僕も子ども心に「説得力」を感じていたのか、大好きな場面だったなあ。

『あかですよ あおですよ』でも、何気なく背景に描かれたサンゴや海藻の確かさと言ったら、まさにかこさとしワールドここにあり。

ここは海の中。たこたこ学校の生徒たちは、たこ先生と一緒に絵の勉強です。たこ先生が「はじめは、あかですよー」と言うと、みんなはりんご、いちご、トマトなど赤い絵を描きました。喜んだ先生は子どもたちをほめ、子どもたちは紫、青、緑、黄色……と、次々といろいろな色の絵を描いていきます。最後のお題は「黒」。おやおや、面白いもので黒い絵を描いている子がいますよ……。思いもかけない形で学校はおしまい!

モノの名前をおぼえはじめる段階の子どもにとっては、指さし会話も広がりそうな優しい展開です。

大人はさらっと絵を流し見してしまいそうですが、子どもは生徒の「ろくちゃん」が車の絵ばかり描いていることに気がつくと思います。赤い車、紫の車、青い車……ろくちゃん、ずるい! と注目を集めたところで、これがしっかりオチに効いてくるというフリがお見事。

平和な世界の何でもないお話が好き。

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