パリのルーブル美術館へ行ったとき、館内に堂々とイーゼルをたてかけて模写をしている学生の姿がありました。
実際に自分の腕で名画を描いてみることで、あらためて構図のすばらしさに驚き、筆の運びかたに画家の思いを感じ、色彩の豊かさに圧倒されることがあるだろうと思います。
教科書で学ぶことも大切ですが、おそらくその何百倍の学びがあるはずです。
僕も小学校時代は「自由帳」のはじっこに、レオ・レオニの『スイミー』や赤羽末吉の『スーホーの白い馬』を真似て描いていました。大学生になってからは、ロートレックからレンブラント、さらに美人画の上村松園まで、良いと思った画家の作品はなんでも真似て描いてみたものです。
実は「学ぶ」と「真似る(まねぶ)」は同じ語源だそうです。
「真似る」ことで先人の知恵や工夫を知る。これから絵本作家になろうというなら、やはり名作といわれる絵本を、それこそ全ページに渡って模写してみることをススメます。もちろん時間のかかる作業ですが、絵本とは何ぞやを知るには急がば回れです。
物語の組み立てかた、次のページをめくらせる工夫や、余白の使いかた、文章の量と音読したときのリズム。自分ひとりで創作したときには気づかなかったさまざまな発見があることでしょう。
そういえば、ある大作家にお話をうかがったとき、「西条八十の詩に挿絵を描いてみなさい」とおっしゃっていたのを思い出しました。これも模写と同じこと。「良い絵本の描き方」に正解はありませんが、先人たちが試行錯誤してきたことの上に、次の創作があることを知っておかなければいけません。
カタタタキ
詩:西條八十
カアサン オカタヲタタキマセウ
タントン タントン タントントン
カアサン シラガガアリマスネ
タントン タントン タントントン
オエンガワニハ ヒガイッパイ
タントン タントン タントントン
マッカナケシガ ワラッテル
タントン タントン タントントン
カアサン ソンナニイイキモチ
タントン タントン タントントン
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