エンブックスからのお知らせ

好みで選べる製本3タイプ! 「在庫リスクなし」の21世紀型エコ出版モデルを実現したエンブックス

 

絵本の版元エンブックス(代表:西川季岐/にしかわとしみつ 事業所:東京都豊島区)は、6月20日(木)より、大日本印刷株式会社(本社:東京都新宿区)協力のもと、独自POD(Print On Demand)体制を整えます。

「受注生産」によって在庫リスクをなくすと同時に、これまでは高い生産コストがネックになっていた「同タイトルで複数タイプの製本」を実現。読者の好みやライフスタイルに応じて「ハードカバー」「ペーパーバック」「デジタル」の最大3タイプから選択できるようになります。

新体制での作品第一弾は、「2013年度 ボローニャ国際絵本原画展」でSM国際出版賞(Fundación SM International Award for Illustration)を受賞した刀根里衣(とねさとえ)さんの国内デビュー作『トトとココのパーティー』。この賞は、35歳以下の入選者から選出される「世界一」の栄誉(日本人初の快挙!)で、その高い芸術性はすでに世界のお墨付きです。A5判ペーパーバック(148×210mm)なら850円(税込)と、手にとりやすい価格になっています。

ひとまわり大きなA4変形判ハードカバー(200×264mm)は、2400円(税込)と、やや割高な印象ですが、「受注生産」ならではのメリットを活かし、希望者にはオリジナルメッセージを印刷できる無料オプションをご利用いただけます。ペーパーバックにはないトビラ絵も魅力のハードカバーは、お子様への特別なギフトとしてもオススメです。

今後は、既刊のハードカバー化も決定。また、年内刊行に向けて、新作の制作もすでに進行中です。新体制のもと、これまで以上に絵本づくりを加速させ、エンブックスの「エン」に願いを込めた、こどもと絵本の「縁」を、たくさん創り出していきたいと考えています。これからのエンブックスにますますご注目ください。

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目次

  1. 『ニコニコしょうてんがい』絵本原画展レポート①
  2. 『ニコニコしょうてんがい』絵本原画展レポート②

 


画家ソ・ミジの全部を見せる

 

出版にあわせて開催された展覧会場には、『ニコニコしょうてんがい』の全原画の他、編集者しか見ることのできないな貴重なラフや、これまでのミジさんの軌跡をたどる作品も盛りだくさんに飾られました。

劇場が併設された会場は、ものすごく広いんです。こんなステキな場所で個展ができるよろこびと、どうやったら会場が埋まるんだという不安のなかで準備ははじまり、結果的に「全部見せる」ことになったのは、観覧者にとっても、作家にとっても、幸運なことだったと思います。

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来場者数822名の大盛況にニコニコにっこり

 

初日は平日ということもあって、閑古鳥が鳴いていたものの、連休に入ってからは雨ニモ負ケズ、期待以上のお客様に来場していただきました。

5月3日は100名を超え、さらに翌4日は200名を、会期中の総来場者数は822名という大盛況で幕を閉じることができました。遠くはセルビアからも、そして、たくさんの子どもたちも遊びにきてくれてうれしかったです。

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ニコニコしょうてんがい原画展

とびきりのサプライズもありました。絵本に登場する「くだものやさんのおじさん」のモデルになった、青果店を営まれているおじさんがいらっしゃったのです。原画と登場人物を一度に楽しめる、そんな愉快な展覧会が他にあったでしょうか。

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展覧会のあとに続く物語

 

今回、出版にあわせて原画展の開催が実現したのは、あうるすぽっと(公益財団法人としま未来文化財団)の全面的なご協力があってのことです。

会場をはじめ、絵を飾るためのフレーム、小物を並べるためのガラスケース、テレビのモニターやテーブルに至るまで、すべて無償で貸していただきました。これほど贅沢な展覧会は滅多にできるものではありません。本当にありがとうございました。

最大級の感謝を込めて、ミジさんからあうるすぽっとのスタッフの皆様へ、貴重な原画が贈られたのはステキな後日談。

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ニコニコしょうてんがい絵本原画展


会場/あうるすぽっとホワイエ
住所/東京都豊島区東池袋4-5-2 ライズアリーナビル2F
TEL/03-5391-0751
会期/4月25日(水)~5月6日(日)
開館時間/12:00〜19:00
観覧料/無料
主催/あうるすぽっと(公益財団法人としま未来文化財団)

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26日、27日の2日間にわたって『ばあばのおうち』出版記念イベントを開催しました。

まずはクラウドファンディングを通じて、この絵本づくりにご支援いただいたみなさま、そしてわざわざ時間をつくってサンドイッチ屋「GARTEN」までお越しいただいたみなさま、本当にありがとうございました。

実際に読者のみなさまとお会いし、直接お届けできてうれしかったです。さらには、うれしい言葉をたくさんかけていただいたり、目の前で子どもたちに読み聞かせてくれたりと、最高にステキな場にしていただきました。

そんな最高にステキな場を支えてくれたチーム・ガルテンのスタッフのみんな、ラッピングを手伝ってくれた萌さんファミリーも、どれだけ助けられたことか。ありがとうございました。

心配していた天気は、両日とも、まるで奇跡のように晴れ間をのぞかせてくれました。
途中、萌さんと「空からキラキラしたものが降ってるよね、なんだろね」と話していたのですが、あとから考えてみれば、ばあばが雲の上から、「晴れの粉」をまいてくれていたのかもしれません。

 


今日は去年から楽しみにしていた村上萌さんの絵本 #ばあばのおうち の発売と、早稲田大学の卒業式。 私は今秋卒業なので、お見送りだけだったけど袴姿の可愛いみんなに会えて単純に嬉しかったし、やっぱり寂しくなりました…😞 . 自分の人生は、自分の手で切り開いて歩いていこうと思わせてくれた萌さんに出会えたのも大学に行ったから。自分が信じたものはこのままずっとずっと抱きしめながら、あと約半年、大学生活頑張りますっ – #ばあばのおうち#絵本#人生を変えたひと#カスタマイズエブリデイ#卒業おめでとう ♡

Sakura Inoさん(@osakuriiii)が投稿した写真 –

絵本ゲット!!! * サンドイッチうまし!!! * 桃代 @suzy_momo さんや、 @cafenavy のなかでら @kidottichan さんにもお会いできたし!!! * 天氣いいし!!! * なんていい日なんだ!!! * 寄り道して良かったーーー!!!寄り道ばんざーい!!! * 萌 @moemurakami_ さん出版、おめでとうございます!!! * GARTEN @garten_jp の季節のフルーツサンドは、今はイチゴとキウイで春を満喫できますよー!!! * さあ皆、青山まで寄り道して、絵本ゲットしてサンドイッチ頬張って、春を味わうんだぜイェーイ!!! * #よりみちサンドイッチ #garten #commune246 #sandwich #coffee #book #picturebook #beautiful #like #love #congratulations #aoyama #tokyo #grandma #ちゅうもえ #ちゅうもえ関西 #桃代党 #igersjp #instagramersjapan #wu_japan #icu_japan #gf_japan #おめでとう #おいしい #ごちそうさま #サンドイッチ #東京 #桃代さんがむっちゃお元氣そうで嬉しかったです #萌さんお疲れさま #皆さんありがとう

Kai Olohiaさん(@kai_olohia)が投稿した写真 –

ちゅうもえ大人clubで萌ちゃんと♡ #ちゅうもえ #桃代党 #garten

HITOMIさん(@hitominano)が投稿した写真 –

昨日は私にとって初めての絵本の発売日でした。 去年の夏、熱い作者と熱い編集さんと打ち合わせをし、期待感とプレッシャーの入り混じった不思議な気持ちになったのを覚えています。 この物語は作者の村上萌ちゃんがおばあちゃんと過ごした幼い頃の思い出をまとめた実話。登場人物のキャラクターや部屋の家具配置、庭に咲く花々の位置など、誰よりも物語の世界に没頭しなければなりませんでした。 大切な思い出達を絵で表現していくのは想像以上にプレッシャーで、何度も何度もくじけそうになりました。 長い長い取材と構想期間を経て、最終的に絵を描いたのは日数でいえば一週間も無かったです。その時は思い出を語るかのように、どんどん筆が進んで、1日で5ページ描ききった日も。きっとその時は私の所にばぁばが来てくれたんだろうなぁ。。 そんな難産で産み落とした絵本『ばぁばのおうち』は愛おしい子供のようです。この子がこれから先、たくさんの子供達に「ばぁばが教えてくれた大切なこと」を伝えていけますように。 #ばあばのおうち #illustration #picturebook #家糸プロジェクト #絵本 #ばぁばありがとう

NozomiYuasaさん(@joetonozomi)が投稿した写真 –

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  1. 阿川佐和子さん講演会「妄想のススメ」レポート①
  2. 阿川佐和子さん講演会「妄想のススメ」レポート②

 


テレビでもおなじみのエッセイスト、阿川佐和子さん。ユーモアを交えてたっぷり語ってくれた子ども時代は、意外にも読書が苦手だったとか。そんな少女が、どうして「かつら文庫」に通うことになったのか、石井桃子さんとの思い出、そして阿川さんが考える絵本の魅力について、2回に分けてレポートします。

こどものとも

 


かつら文庫のはじまりの本当

 

1958年に、石井桃子さんが荻窪の自宅を改装してはじめた、地域の子どものためのちいさな図書館が「かつら文庫」です。
子どもの本に関わる仕事をしていた石井桃子さんは生涯独身。阿川さんによると、子どものいなかった石井さんが、もっと子どもの気持ちに寄り添いたいと自宅を開放して招いたというのが、「かつら文庫」のはじまりだそう。

ときどき2階から、執筆中の原稿を持った石井桃子さんが降りてきて、子どもたちを集めて実際に読んで聞かせては「なるほど、これは良し、これは直し」と、その反応を作品に活かしていたということです。
「かつら文庫」の棚には、教訓的なもの、偉人の伝記のような本は1冊もなかったという話も印象的でした。

 


バージニア・リー・バートンにがっかり?!

 

そんな「かつら文庫」ができてすぐに、読書家のお兄さんが通うことになり、本よりも外で遊ぶことが好きだった幼い阿川さんも、ただお兄さんのマネっこがしたくて一緒についていくことに。
なにより、子どもたちだけで出かけ、電車に乗り、荻窪までの大冒険が楽しかったそうで、「かつら文庫」に着いても、ひとり縁側から庭に出て、お花を摘んだり、サルスベリの木に登ったりして遊んでいたというおてんば。

それでも、石井桃子さんが訳した絵本『ちいさいおうち』は大好きだったと阿川さん。それを知っていた石井桃子さんの計らいで、小学生低学年のとき、バージニア・リー・バートンに会わせてもらったというのは、子ども時代のうらやましい宝物のようなエピソードです。
大きな模造紙を壁にはり、その場で即興で絵を描いてくれるというリー・バートンに、「ちいさいおうちの、どの場面を描いてくれるんだろう!」と、胸を躍らせていた少女。
ところが、勢いのある長い線で描かれたのは思ってもみなかった「恐竜」で、当時は「本当にがっかりした」と、いかにも子どもらしい本音が。
そう、お察しの通り、その後出版される『せいめいのれきし』の一場面です。このときの原画は今でも「東京子ども図書館」に飾ってあるそうです。観てみたい!

 


『正義のセ』

著/阿川 佐和子
絵/荒井 良二
定価/1430円(税込)
角川書店
2013年3月発行

 


『ちいさいおうち』

文・絵/バージニア・リー・バートン
訳/石井 桃子
定価/1870円(税込)
対象/4、5歳から
岩波書店
1965年12月16日発行

 


『せいめいのれきし』

文・絵/バージニア・リー・バートン
訳/石井 桃子
定価/1870円(税込)
対象/小学中学年から
岩波書店
1964年12月15日発行

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  1. アムステルダム公共図書館 見学レポート①
  2. アムステルダム公共図書館 見学レポート②
  3. アムステルダム公共図書館 見学レポート③
  4. アムステルダム散策 番外編

 


旅のはじまりは雨に濡れながら

 

今から8年前、2度目に訪れたオランダのアムステルダムは、どしゃ降りの雨でした。

到着間もなく、アムステルダム公共図書館訪問のアポイントがあったので、駆け足でタクシー乗り場へ向かい、「図書館までお願いします」というと、「それなら近いから歩いた方が早いよ、駅のあっち側」と、指をさしてやんわり乗車拒否。傘持ってないのに。

嫌な予感は的中するもので、運転手さんはすぐ近くといったけれど、知らない国だし、当時はスマホもなくて、なかなか図書館が見つかりません。びちゃびちゃに濡れながら、スーツケースを引きずってたどり着いた頃には、アポイントの時間をとうに過ぎていました。

 


すっかり落ち込んだ僕の気持ちを吹き飛ばしてくれた図書館

 

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入口ではシロクマのぬいぐるみが、うらやましいくらい乾いた毛並みで迎えてくれました。
アムステルダムにある公共図書館は、去年(2007年)の7月にオープンしたばかり。外観はまるで美術館です。総面積は、ヨーロッパ最大規模(当時)の広さを誇ります。

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1階には児童書コーナーがあります。まず児童書の数におどろいて、そのあとインテリアのセンスにおどろきます。快適すぎる! ソファの真ん中で寝っ転がって、天井の写真を撮っている大人がいるくらい。わかります、その気持ち。

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子どもにとっては、まさに本のお城でしょう。少々騒いだってなんてことありません。日本だと声を出すのもためらうことがあるのに。

 


オランダの子どもたちに人気の絵本

 

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図書館員にいくつか人気の本を紹介してもらいました。どれも見ていて楽しい気分になる絵本ばかりです。作品を選び抜く子どもの目に狂いはありませんね。

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中にはこんな大きな絵本もありました。どうやってめくるのでしょうか。そのまま絵本の世界に飛び込めそうです。

本の角のくたびれた感じを見ると、じわじわ嬉しい気持ちになります。滞在10分で、すっかりアムステルダム公共図書館の気持ちよさに魅了されました。雨のアンラッキーからの逆転ハッピー。

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幼児向け絵本の出版社エンブックス(代表:西川季岐/にしかわとしみつ 事業所:東京都豊島区)は、オリジナル絵本の製本サービス「エホンリー」のサイトをリデザインし、2015年4月13日(月)より公開いたしました。

エホンリーは、2014年7月のリニューアルに伴い、創作や編集に関する複雑な機能を全て廃止し、「描いて、送る」だけに特化したサービスへと転換いたしました。以降、順調に製本数を伸ばしはじめ、これまでに累計69冊のオリジナル絵本をお届けしております。

ご利用いただいたユーザーからは「売り込みに行った海外の出版社から高い評価をいただいた」「卒業の記念に創作して忘れられない思い出になった」「想像以上のきれいな仕上がりでまた使いたい」など、うれしい感想をいただいております。

今回のリデザインで、以前よりお問い合わせの多かった「具体的な作り方」がわかりやすくなりました。2015年は年間200冊の製本を目指します。今後も改善を重ねながら、より良いサービスを提供していきますので、よろしくお願いいたします。

エホンリーについて

「誰でも、簡単に」オリジナル絵本づくりができるオンデマンド製本サービス。「1冊から製本できる」「4つ製本タイプから選択できる」「圧倒的低価格」「市販の絵本と同レベルの製本クオリティ」が特徴。これまでにないアプローチで絵本市場の新規開拓を狙う。

主な変更点

  • 製本タイプ別の具体的なサイズ表記
  • データ作成方法の表記
  • 「お振込」による決済方法の追加
  • 製本に関する専門知識のビジュアル補足

エホンリーをはじめる

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名古屋デザイナー学院にお招きいただいて実現した、エンブックスにとってはじめての講演会。

絵本を含むアート全般を勉強する学生たちに、彼らが本来学びたいであろう制作の実践的なテクニックではない絵本界の実情や、裏方としての編集の話をするんですから、当日は少なくない心配を抱えて臨みました。

結果的には、120名の満員御礼に応えるカタチで90分の持ち時間を延長し、およそ2時間の長丁場になりました。みんな熱心に耳を傾けてくれてうれしかったです。

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作成した資料はPDFにして90枚。おおまかなプロットはこんな感じです。

  • 絵本にかかわるきっかけ
  • 絵本のマーケットの現状と課題
  • これからの絵本とエンブックスのこと
  • 具体的な絵本づくり
  • 次世代を担う作家さんへメッセージ

 


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僕自身も絵描きからスタートしているからこそクリエイターの気持ちはよくわかります。描くことにチカラを注いでいるうちは、対話しているのはたいてい自分自身で、どうやったらもっと上手く描けるか、どうやったら新しい表現ができるか、そんなことばっかりに気が向きがちです。

ところが、クリエイティブというものは、実はすごく「時代性」と相性が良いものなんです。言い換えると「ニーズ」。例えば、今「モナリザ」を描いても「うまい」以上のことにはならないと思います。あれはルネサンスという時代に求められた作品だったから。同じ理由で、ルネサンスにピカソの絵は受け入れられなかったでしょう。

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自分の足元にある「時代」は、見えにくいものです。でも、クリエイターは「世の中」を知らなくちゃいけない。そんな話をしました。

この講演を聞いてくれた若い学生が、そのうちすばらしい絵本作家に育ったときに、一緒に仕事ができたら最高です。

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目指したのではなく、導かれるように絵本作家へ

 

細いカラダ、丸眼鏡に蓄えたひげ、つぶらな瞳。
それでいて、発する言葉は強く、あちこちにほとばしるエネルギーは、いかにも芸術家らしい。

大学時代に制作した絵本『しばてん』を、親交のあった和田誠さんが、すでに売れっ子作家だった今江祥智さんに売り込んでくれたことが絵本作家になるきっかけだそうです。
だいたいこういうエピソードは、どうして著名な人同士がつながっているのか不思議に思っていたこともありますが、違うんですよね。良い環境が人をつくる、その結果が今なんです。だから腕を磨くのと同じくらい、どこに属すのかを見極めることが大事。

話がそれましたが、今江さんは電車の中でそれを読んで、感動して涙したといいます。
田島さんは、自分の絵が「顔も知らない誰かを感動させることができるんだ」と感激して、本格的に絵本を出版社に売り込んでいきます。

ところが、どこも相手にしてくれなかった。
唯一、福音館書店の松居直さんだけが「この作品は子ども向きじゃないけれど、絵がおもしろいから、僕とつきあってくれますか」と声をかけてくれたそうです。いかにも松居さんらしい穏やかな言い回しで、そのときの様子が目に浮かぶようです。

当時の田島さんは何しろお金がなくて、「松居さん、つきあっている間もお金はもらえますか」と尋ねました。
もちろん、そんなことはできるはずがないのですが、その代わりに「なるべく早く本にしましょう」と松居さんは答えました。
そうやってできたはじめての絵本が『ふるやのもり』(文・瀬田貞二)で、1964年のことです。
本屋に並んだ時は「うれしかった!」と目を輝かせ、ずっと棚の横でお客さんが来るのを待っていたと、当時を振り返っていました。

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「こどもの美しい花園を踏みにじる汚い絵」と酷評されて奮起

 

おそらく、その頃の田島さんは、こどものよろこびのため以上に、自分が生きることで精一杯だったと思います。
そうだとしても、幼稚園の先生たちからは「こども向きじゃない汚らしい絵だ」と散々な言われようでした。なかでも

「芸術家のエゴで、こどもの美しい花園を踏みにじるのはやめてほしい」

という言葉は強烈で、今でもはっきりと記憶しているといいます。

一方で、長新太さんや赤羽末吉さんといった憧れの作家たちが、独創的な絵を気に入ってくれ、瀬川康男さんはその頃住んできた3畳間を尋ねてやってきて、泊まって帰ったこともあったそうです。そうしたことを励みに、どんなに敵が多くてもこの道はゆずれない、と絵本作家としての覚悟を決めました。

今も通じる難しい問題だなと思うのは、覚悟を決めても、散々に言われた絵描きの仕事が続かないことです。
幼稚園の先生や、親の目線に合わせるだけでは、表現者は窮屈になるし、新しいものは生まれない。だからといって、本を選んで買う読者を無視していれば、そもそも絵本を手にとってもらうことはできません。やがて田島さんは栄養失調になります。

なんとか生かさないといけない。これは想像ですが、田島さんの画家としての才能を信じた編集者や仲間の作家たちが、アイデアを絞り出したんだと思います。売れっ子の今江祥智さんの文に、絵を描けば本にできるんじゃないか。この『ちからたろう』(ポプラ社、1968年)はよく売れて、翌年には「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」において「金のりんご賞」を獲得します。

 


老いて知る表現者としての本当の戦いかた

 

「若い時は戦う姿勢が強すぎた」と田島さんはいいます。
自分の思い描く世界と、それを受け入れてくれる世界のギャップが苦しかったんだと思います。

『ちからたろう』がせっかく評価されたにも関わらず、ようやくつながった次の作品では、まったく違う表現の絵を描いて、編集者や読者の期待を裏切る。
少なくない印税が入るようになったらなったで、「お金が入るとダメになる」と考え、今まさに売れている絵本を出版社に掛けあって絶版にしてもらう。そんなことをしているうちに、またお金がなくなったら、今度は違う出版社に再販のお願いをする。
出版社である僕の立場からすれば、嫌な汗が流れるような恐ろしい話です。絵本づくりにどれだけの人がかかっているのか、周囲の苦労など微塵も考えなかったそうです。

それでも、今もこうして絵本作家として活躍を続けられていることは、芸術家としてのプライドと、絵本づくりにおけるアウトプットの試行錯誤に、自分なりの折り合いをつけることができたからでしょう。
そして、それ以上に大きいのは、こどもが大好きだということ。廃校を舞台にした立体絵本「絵本と木の実の美術館」の活動を、とても楽しそうに話す田島さんの姿から、そんなふうに感じました。

 


『ちからたろう』

文/今江 祥智
定価/1100円(税込)
対象/3歳から
ポプラ社
1967年6月発行

百かんめの金ぼうをかた手に、のっしじゃんが、のっしじゃんがと力修行にでて行くちからたろうのゆかいなお話。

 


『ふるやのもり』

再話/瀬田 貞二
定価/990円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1969年4月10日発行

じいさんとばあさんが育てている子馬をねらって、泥棒と狼は、それぞれ厩に忍びこんでかくれていました。じいさんとばあさんが「この世で一番怖いのは、泥棒よりも、狼よりも“ふるやのもり”だ」と話しているのを聞いて、泥棒と狼は、どんな化け物だろうと震えていると、そのうち雨が降ってきて古い家のあちこちで雨漏りしてきて……。

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目次

  1. アムステルダム公共図書館 見学レポート①
  2. アムステルダム公共図書館 見学レポート②
  3. アムステルダム公共図書館 見学レポート③
  4. アムステルダム散策 番外編

 


不思議な縁で導かれたアムステルダムで最も有名な絵本店

 

アムステルダムでの移動手段は、トラムと呼ばれる路面電車です。小回りが効くので、ちょっとした移動に便利。
ただ、路線図を頼りに降車駅を確認して乗ったとしても、僕のようにゆったりした気分で街を眺めていると、ひと駅乗り過ごしてしまうなんてこともあります。

反対車線を走る路面電車に乗るのか、それとも今乗って来た道を歩いて戻るのか。結局、散歩がてら戻っていると、道沿いにかわいい本屋さんを発見。路面電車の車窓からは見逃していた本屋さんです。

早速、店主に尋ねてみると、そこがアムステルダムで最も有名な絵本店だとわかりました。ほんの数分前の選択が導いてくれた不思議な出会い。これこそが旅のおもしろさですよね。

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前日にアムステルダム公共図書館でおすすめしてもらった本を探していると、
「あれをごらん」と、店主が僕の肩をたたきます。

本屋の入口にあったのは、まさに絵本の表紙そのもの。しばらくすると、近所の子どもたちが遊びにやって来て、ますます表紙そっくりの光景に。あの時の、店主の誇らしげな顔は忘れません。

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