エンブックスの理念を「子どものうれしいを増やす」に変えることにしました。
立ち上げ時は「子どもともっとコミュニケーション」、その後の「Make Kids Smile」と、軸は変わらないのですが、今エンブックスが伝えたいことをまとめなおしましたので、読んでもらえたらうれしいです。
親子のコミュニケーション不足がもたらす未来を想像してほしい
「待機児童」なんて言葉は、10年前にはまだなかったと思います。それくらい共働き世帯はどんどん増えていて、今では僕の子ども時代(1970年代)の専業主婦世帯数とそっくり入れ替わりました。
一方で、子どもの数はどんどん減っています。それでも保育園が不足しているというので、大きな問題になっているわけですが、その裏で確実に減っているのは「親子コミュニケーション」の総量です。
厄介なことにコミュニケーションは目に見えないので、ものすごいスピードで減っていても気づきにくく、多くの人の関心は今目の前にある問題に向けられがちです。
でも、僕は親子コミュニケーションの不足が、いずれ未来にもっと大きな問題となって現れる可能性を想像し心配しています。人間が生きていくうえでの本質的な問題として捉え、「不」を解消しなくちゃいけないと思っています。
絵本は単なる読みものではなく親子のコミュニケーション・ツール
「どうして絵本なんですか」と質問されることがあります。もともと僕自身が絵本作家として描きたくて、もがきながらたどり着いた現状ですが、エンブックスとして絵本づくりに取り組んできてわかったのは、読んで聞かせることが前提の絵本は「親子のコミュニケーション・ツール」であるということです。
だから今は、絵本をつくっているのではなく、親子が一緒に楽しむ時間をつくっていると考えています。
子どもにとって何よりうれしいのは、親がそばにいてくれる空間であり時間です。その空間や時間をより有意義にするのが「良い絵本」なんだと思います。僕たち作り手は、なるべくつまらないものを届けないように、気をつけ工夫しながら「良い絵本」づくりに取り組んでいます。
エンブックスの理念は子どもの「うれしい」を増やすこと
泣いたり怒ったりも全部含めて親子コミュニケーションですが、その中でも子どもの「うれしい」を増やしたい、これがエンブックスの理念です。子どものうれしいは親もうれしいだろうし、うれしいの循環は世界の空気清浄機になるはずだから。
もう少し丁寧にいうと、子どものうれしいを増やすことができるのはやっぱり親が一番なので、エンブックスとしては絵本を通じてきっかけを与えることができれば良いと思っています。
だからこそ、まずは絵本界の再活性化を成し遂げたいし、若い絵本作家の創作意欲が決して途絶えないような新しい仕組みをつくらなければいけません。もちろん単に出版の枠にとらわれず、絵本よりもっと優れた親子コミュニケーションツールの発明をするのも楽しそうです。
言葉が人生を豊かにする
人間と動物の大きな違いのひとつに「言葉」があります。言葉があるからこそ、相手に伝えることができるし、相手の考えを聞くことができます。発するまでもなく頭の中で考えるときもやっぱり言葉が必要です。
つまり人間は言葉とともに生きて、言葉のキャッチボールによって社会と関わっていく生きものなのです。
生まれたばかりの赤ちゃんは言葉のない世界からやってきて、親の発した言葉を食べて大きくなっていきます。だから、食べ物の栄養を気にかけるのと同じように、幼い子ども時代には良い言葉をたくさん食べさせてあげて欲しいと思います。