育児・子育て

目次

  1. 食べ物を大切にする心が育まれる絵本
  2. 食べることに興味を持ち楽しみになる絵本
  3. 好き嫌いしないように考えるきっかけになる絵本
  4. 行儀よく食事することを教えてくれる絵本
  5. 食事とからだの健康の関係がわかる絵本

 


◎食事とからだの健康の関係がわかる絵本

 

『みんなうんち』

作/五味 太郎
定価/990円(税込)
対象/4歳から
童心社
1981年2月2日発行

子どもにとって興味のある、そして大事な「うんち」をユーモアいっぱいの絵本にしました。「いきものはたべるから、みんなうんちをするんだね」というお話。

 


『たべもののたび』

作/かこ さとし
定価/1430円(税込)
対象/4、5歳から
童心社
1976年10月1日発行

黄色い栄養のカバンを持って旅に出た食べ物たちが、ももいろのトンネルをとおって、いぶくろこうえんを通り、しょうちょうのジェットコースターに乗ってすすみます。たべものが口から入って身体の中で消化され、栄養となって、排泄されるまでのプロセスを、「たべもののたび」として、わかりやすく楽しく描いたロングセラー絵本。絵本を通じて、正しい知識と、食べることの大切さを子どもたちに伝えます。

 


『たべものたべたら』

文/中川 ひろたか
絵/藤本 ともひこ
定価/1320円(税込)
対象/幼児から
保育社
2013年7月発行

昨日たべたとうもろこしが、うんこに出てきた。どうしてだろう? 「ぼく」といっしょに、おなかのなかを旅しながら、「たべもの」と「うんこ」の間をつなぐ「消化のしくみ」を楽しく学べる絵本。

 


『うんぴ・うんにょ・うんち・うんご』

文/村上 八千世
絵/せべ まさゆき
定価/1320円(税込)
対象/幼児から
ほるぷ出版
2000年10月1日発行

うんこは、はずかしいものではなく、生きていくうえで自然で大切なこと。だから、いっしょにうんこを考えてみよう。楽しいネーミングをしたりアイディアいっぱいで、気持ちよくトイレにいけるようになる絵本。

 


『たべることはつながること』

作/パトリシア・ローバー
絵/ホリー・ケラー
訳/くらた たかし、ほそや あおい
定価/1430円(税込)
対象/5、6歳から
福音館書店
2009年5月30日発行

自然界の生き物は、食べたり食べられたりして互いに密接につながっています。このつながりを食物連鎖といいます。この絵本では、食物連鎖について、自分たちが食事をすることを通して、地球上のいろいろな生き物とつながっているということをやさしい文と絵で描いています。読者のみなさんも、自分の食べたものがどんな生き物とつながるかを、実際に絵にして考えてみましょう。

Read more

目次

  1. 食べ物を大切にする心が育まれる絵本
  2. 食べることに興味を持ち楽しみになる絵本
  3. 好き嫌いしないように考えるきっかけになる絵本
  4. 行儀よく食事することを教えてくれる絵本
  5. 食事とからだの健康の関係がわかる絵本

 


◎行儀よく食べることを教えてくれる絵本

 

『いただきますあそび』

作/きむら ゆういち
定価/748円(税込)
対象/0歳から
偕成社
1988年12月発行

ぽかぽかミルクあったかそう。ねこのミケがカップをもっている手の仕掛けをめくると、「いただきまーす」とミルクをごくり。こいぬのコロも大きなお口で「いただきまーす」とサンドイッチをぱくり。ことりのピイちゃんも元気な声で「いただきまーす」。ゆうちゃんも、ママも、かいじゅうさんも「いただきまーす」。あーおいしかった。ごちそうさま。

 


『スプーンちゃん』

作/小西 英子
定価/880円(税込)
対象/0歳から
福音館書店
2018年1月15日発行

「スプーンちゃん プリン たべるの プリリンリン」「メロン たべよう ララランロン」「いちごと ミルクを ぎゅっ ぎゅっ ぎゅっ」……リズミカルな言葉と共にスプーンちゃんが登場します。グリーンピースをころころこぼしたり、オムライスの場面ではケチャップと戯れたり、スプーンちゃんの茶目っ気ぶりに親近感がわきます。黄色、緑、赤と彩り豊かな食べ物は、子どもたちが大好きなものばかり。思わず手がのびてしまう、おいしそうな食べ物絵本。

 


『いただきます』

作/いもと ようこ
定価/858円(税込)
対象/赤ちゃんから
講談社
2018年8月12日発行

「いただきます」はたべものや作ってくれた方への感謝をこめたたいせつなことば。つたえたいあいさつことばは、絵本をよみながらおぼえていきましょう。

 


『いただきまあす』

文/わたなべ しげお
絵/おおとも やすお
定価/990円(税込)
対象/1歳から
福音館書店
1980年6月1日発行

これはお行儀の本ではありません。いざ食事をはじめようとするくまくん=幼児の悪戦苦闘ぶりをあるがままに、しかしあたたかくユーモラスに語った楽しい絵本です。

 


『テーブルマナーの絵本』

作/高野 紀子
定価/1760円(税込)
対象/小学低学年から
講談社
2011年11月発行

知っておきたい和・洋・中のテーブル作法を、イラストをふんだんに盛り込んでわかりやすく紹介する、小学生のためのテーブルマナー本。

Read more

目次

  1. 食べ物を大切にする心が育まれる絵本
  2. 食べることに興味を持ち楽しみになる絵本
  3. 好き嫌いしないように考えるきっかけになる絵本
  4. 行儀よく食事することを教えてくれる絵本
  5. 食事とからだの健康の関係がわかる絵本

 


◎好き嫌いしないように考えるきっかけになる絵本

 

『にんじん』

作・絵/せな けいこ
定価/770円(税込)
対象/1歳から
福音館書店
1969年11月10日発行

「にんじんの すきなこ だあれ」というよびかけに、「うまさんは にんじんが すき だいすき ああ おいしい」とうまがこたえます。きりんさんも、おさるさんも、ぶたさんも、にんじんを美味しそうに食べます。小さいにんじんはねずみさん、大きいにんじんはぞうさんがいただきます。では、にんじんが一番すきなのはだあれ? 貼り絵を使った独特の温かみのある技法で描かれた、赤ちゃんの絵本です。

 


『おやおや、おやさい』

文/石津 ちひろ
絵/山村 浩二
定価/990円(税込)
対象/2歳から
福音館書店
2010年6月10日発行

今日は野菜たちのマラソン大会。野菜たちが、スタジアムや外の川べりを走る様をユーモラスに描きます。マラソンといえば、ドラマがつきもの。この作品でも、思わぬハプニングが起こり、小さなドラマが展開されていきます。「そらまめそろってマラソンさ」「かぼちゃのぼっちゃんかわにぼちゃん」など、韻を踏んだような言葉遊びがとても楽しい。愉快な野菜たちの絵がついて、子どもたちは文句なしに大喜びすることでしょう。

 


『ぜったいたべないからね』

作/ローレン・チャイルド
訳/木坂 涼
定価/1540円(税込)
対象/3歳から
フレーベル館
2016年11月発行

チャーリーのいもうとローラには、きらいなたべものがたくさん! とくにトマトは「ぜったい」いやなんですって。チャーリーは、なんとかしてローラにたべさせようとするのですが……?

 


『サラダでげんき』

作/角野 栄子
絵/長 新太
定価/990円(税込)
対象/3歳から
福音館書店
2005年3月10日発行

りっちゃんはお母さんが病気になってしまったので、なにかいいことをしてあげたいと考えます。そこで、美味しいサラダを作ることにしました。きゅうり、きゃべつ、とまと、をお皿に乗せたところで、ねこ、いぬ、すずめ、あり、うまが次々とやってきて、サラダ作りのアドバイス。北極からは白熊の電報が届き、最後にはぞうが飛行機に乗って登場します。みんなが手伝ってくれたおかげで、美味しいサラダの出来上がり。りっちゃんのお母さんはそのサラダを食べてたちまち元気になりました。

 


『やさいのおしゃべり』

作/泉 なほ
絵/いもと ようこ
定価/1320円(税込)
対象/幼児から
金の星社
2005年5月12日発行

「ぼく、すてられちゃうのかな……」。ある日、れいちゃんは冷蔵庫の中でくさりかけて悲しそうにしている野菜の声を聞いた。キュウリ嫌いのれいちゃんは……。

 


『たべるのだいすき! みんなげんき』

作/吉田 隆子
絵/せべ まさゆき
定価/1430円(税込)
対象/幼児から
金の星社
1997年4月発行

食事が人間の元気をつくることを楽しく語りかけます。食べ物を4つの色のグループに分け、その種類や生まれるまでの様子を紹介。

 


『ちゃんとたべなさい』

文/ケス・グレイ
絵/ニック・シャラット
訳/よしがみ きょうた
定価/1430円(税込)
対象/5、6歳から
小峰書店
2002年5月15日発行

デイジーはおまめがだいきらい。ママはおまめを食べたら、よふかししてもいいし、おふろにはいらなくていいし、アイスを100個、ぞうやペンギン、ロケットだって買ってくれるって……!?

Read more

赤ちゃんたちのオノマトペへの関心

 

赤ちゃんたちはオノマトペが大好きです。「どんぐりころころ、どんぐりこ」といった童謡を歌うとき、また散歩で見かけた犬や猫のことを「わんわん」「にゃあにゃあ」と呼ぶときの笑顔は見ているだけで楽しい気持ちになります。

私自身、小さい頃は母親に『おむすびころりん』(絵/すがわら けいこ)の絵本を繰り返し読んでもらっていました。もう絵本そのものは行方不明ですが、「おむすびころりん、すっとんとん」のフレーズを何度も口ずさんでいたことだけはよく覚えています。

赤ちゃんだった頃の私たちはなぜオノマトペを好んだのでしょうか? そこにはどんな理由があるのでしょうか。

 


オノマトペとは?

 

オノマトペとは、擬声語や擬音語の総称です。
擬声語というのは、『おむすびころりん』における、ねずみたちの「ちゅーちゅー」、意地悪なまま母などの笑い声を表現するのに使われる「げらげら」など、動物の鳴き声や人間の声を真似た言葉です。
水滴が落ちる「ぽたぽた」、ドアを勢いよく閉める「ばたん」などは、物音を真似ているため擬音語と呼ばれています。
日本においてはこの二つに限らず、「てきぱき」と仕事を片付ける、「つるつる」となめらかな感触だ、などの状態を表す擬態語も含むケースが普通です。
参考資料:『賢治オノマトペの謎を解く』(著/田守育啓)

今回は擬声語・擬音語・擬態語全てをまとめてオノマトペと呼ぶこととしましょう。
オノマトペを全く使わずとも生活をすることは可能です。ですが、少し考えてみてください。遊園地のジェットコースターに乗った感想を誰かに伝える際に「ものすごくスリルがあって面白かった!」と言うより、「上るまでグラグラ揺れてドキドキしたけど、ビューって降りるときが爽快だった」と言った方がより表現の幅が広がって伝わりやすいと思いませんか?

外国語にもオノマトペは存在しますが、擬態語を含まないケースの方が多いようです。たくさんのオノマトペは日本語の持つ特色であり、ひいては文化の一つとも呼べます。

 


子どもはみんなオノマトペが大好き!

 

赤ちゃんたちがオノマトペを好む理由は、言葉を覚えていく過程に隠されています。
生後おおよそ7ヶ月ほど、赤ちゃんは喃語を喋っています。「あーあー」「ぶー」「だーだーだー」などといった、あまり意味の見て取れない言葉です。

生後9~10ヶ月ほどになると喃語が減り、身振り手振りをしたり「ママ」「パパ」などといった言葉を話せるようになります。この頃に最初に話した言葉は「初語」と呼ばれます。ちなみに、私の初語は「あめ(だめ)」でした。両親が先に教えていた言葉だったそうです。

そこから赤ちゃんは、大人が話している言葉のうち、聞き取りやすく簡単な言葉を覚えていきます。
大人向けのしゃべり方では、単語がどこにあるかわかりにくくあまり覚えてくれません。反対に発話が短く変化があり、目で見える形に合った音をしている言葉はすぐに覚えることができます。

この条件に合う言葉が、赤ちゃん言葉と擬音語・擬声語・擬態語……すなわち、オノマトペです。

赤ちゃんにも物の形と音の関連がわかるということは研究で明らかになっています。
ま行の単語では「丸いもの」、か行やぱ行においては「とがったもの」を連想するのだそうです。特にオノマトペの多くは聞こえる音や感覚を表現したものですから、赤ちゃんたちにとっても直感的でわかりやすく、そして覚えやすいのです。

1歳から2歳前後になった赤ちゃんは、覚えた単語一つで大人たちの会話と同じことを伝えようとします。
これは「一語期」と呼ばれています。例えば、突然子どもが「にゃあにゃあ(猫)」と言い出してどこかに手を伸ばしたら、私たちはその方向を見てどこに猫がいるか見ます。これだけで「あそこに猫がいるよ」と私たちにはわかります。たったこれだけでも通じ合うことができるなんて、とても素敵なことだと思いませんか?

場面一つをオノマトペで表し、自身の感情を表すことができるオノマトペは赤ちゃんにとって立派な言語のひとつです。自分の言いたいことが大人に伝わって嬉しい赤ちゃんは、もっと言葉を話したい、聞きたいと思うことでしょう。オノマトペを発語するとき嬉しそうにしている赤ちゃんたちは、学んでいく喜びを体いっぱいに表現しているのかもしれません。

 


オノマトペを使った絵本で赤ちゃんとの関わりを増やす

 

オノマトペを生かして、赤ちゃんとコミュニケーションを取りたい……そんなときにぴったりの楽しい絵本をいくつか紹介します!

『もこ もこもこ』

作/谷川 俊太郎
絵/元永 定正
定価/1430円(税込)
対象/赤ちゃんから
文研出版
1977年4月発行

『もこ もこもこ』のイラストは眺めているだけで想像力を掻き立てられます。地面からもこもこっと何かが飛び出し、隣ではにょきにょきと生える何か……ほぼ全てがオノマトペの絵本ですが、決して退屈なお話ではありません。「もこもこもこ」は表情豊かに、「ぷうっ」は一息に読みます。緩急やアクセントをつけて読めば、たちまち赤ちゃんは、盛り上がるものを見たら「もこもこ」、風船を見たら「ぷうっ」と喜ぶようになるでしょう。

 


『むにゃむにゃ きゃっきゃっ』

作/柳原 良平
定価/990円(税込)
対象/0歳から
こぐま社
2009年発行

こちらも本文は全てオノマトペです。かわいい模様のキャラクターたちが文字通り「ぷくぷく」と泡になって浮かんでいたり、「どすーん」と落下したり。一語期の赤ちゃんは、大人たちの言葉だけではなく身振りや顔の表情にも反応を示すようになります。目のついたキャラクターがオノマトぺを体現しているという点において、赤ちゃんにとっては魅力的な絵本といえます。

 


『ぽんぽんポコポコ』

作/長谷川 義史
定価/935円(税込)
対象/赤ちゃんから
金の星社
2007年1月発行

誰のお腹が「ぽんぽん」されているのか、赤ちゃんと一緒に考えてみる絵本です。ぽんぽんぽこぽこ、ぽんぽんぽこぽこ……と、赤ちゃんのお腹を「ぽんぽん」しながら読んでみましょう。答えの動物によって「ぽんぽん」の読み方を変えたりと楽しみ方は様々です。赤ちゃんと一緒に体を動かすような遊びがしたいという方に特におすすめします。

 


『ゆき ふふふ』

作/ひがし なおこ
絵/きうち たつろう
定価/880円(税込)
対象/0歳から
くもん出版
2010年10月発行

「きせつのおでかけえほん」シリーズの一つです。この絵本のテーマは「雪」。冷たい冬の雪遊びが美しいイラストと共に描かれています。雪がふわふわと降ってきてしゅわんしゅわんと溶けていく様子を繰り返し読めば、自然と子どもも雪を待ち遠しく思うに違いありません。私も久々に雪遊びをしてみようかという気持ちになりました。
シリーズのほかの作品もおすすめです!

 


『だるまさんが』

作/かがくい ひろし
定価/935円(税込)
対象/赤ちゃんから
ブロンズ新社
2008年1月発行

だるまさんが……と言えば、「転んだ!」ですよね。ですがこの絵本は違います。この絵本のだるまさん、転ぶだけではなく「ぷしゅー」、「ぷっ」などバリエーション豊かな動きをします。次はどんなだるまさんなのか赤ちゃんに聞いてみたりするのもいいかもしれません。どんなオノマトペを赤ちゃんが口に出すか楽しみですね。最後のページをめくれば大人も子どももみんな笑顔になることは間違いありません。詳しくはどうぞ実物の絵本を手にとってご覧ください。

 


『ぱたぱたえほん』


作・絵/miyauni
定価/1320円(税込)
対象/赤ちゃんから
エンブックス
2010年7月22日発行

エンブックスの新刊赤ちゃん絵本『ぱたぱたえほん』では、ページいっぱいのとりさんを「ぱたぱた」、ちょうちょさんを「ひらひら」させつつ、開いたり閉じたりして遊ぶことができます。おめめを「ぱちくり」するところで目をぱちぱちしてみたり、身振り手振りも交えて遊んでみましょう! 楽しい時間になることは間違いなしです。子どもたちが「赤ちゃん」でいる時期はあっと言う間です。今しかできない親子スキンシップを楽しんでみませんか?

 


執筆者/吉田 茜
淑徳大学 人文学部 表現学科3年
文芸表現コースを専攻。現在の研究テーマは「邦訳について」です。文章について学びたいという思いから表現学科のカリキュラムに惹かれ淑徳大学へと入学しました。レポートや論文などにおいて事前調査をまとめていく作業が最も楽しいと感じています。好きな絵本は『ミッケ!』シリーズ。

Read more

絵本で親子のふれあいは増やせる?

 

エンブックスの新刊の赤ちゃん絵本は「親子がスキンシップしたくなる」をコンセプトに作られました。
絵本を通して、親子の心の距離を今よりもっと縮めてもらうのが狙いです。ページをめくるごとに、かわいらしい動物たちが「なでて、なでて」と繰り返し赤ちゃんに呼びかけます。

しかし、私はスキンシップを増やすためになぜ絵本を選んだのだろうと、疑問を感じました。
親子のふれあいを増やすのなら、一緒に手遊び歌をしたり、工作をしたり……もっと他に方法があるのではないか、と。
よりこの絵本を理解するために、淑徳大学短期大学部の子ども学科准教授、またご自身も幼稚園教諭の経験がある小薗江幸子先生にお話を伺いました。

 


interview
小薗江幸子 准教授
以前まで幼稚園に勤めており、現在は淑徳大学短期大学部にて保育士、幼稚園教諭を目指す学生を支えている。
専門分野:臨床発達心理学及び保育学子ども理解
担当科目:人間関係、教師論、教育心理学、保育課程論、実習指導Ⅱ


 


大切なのは、読み聞かせで「何を」育みたいのか

 

――まず、「なでてなでて」を読んでみた感想はいかがでしたか?

絵がさわりたくなる柔らかい色合いで、材質の感じがよく表れています。
また文章に無駄がなく、「なでてなでて」という繰り返しの呼びかけもシンプル。車を「ぶーぶー」と言ったり、赤ちゃんが物の状態を音に置き換えて結びつける段階が、ちょうど1歳半から2歳なんです。そういった意味も含めて、言葉の使い方がとても適切ですね。

 

――先生も幼稚園では大勢の子どもたちに絵本を読み聞かせていらっしゃったと思います。でもこの「なでてなでて」はお父さん、あるいはお母さんと赤ちゃんの一対一で読む絵本ですよね。

そうですね。幼稚園での読み聞かせは友だちと大勢でイメージを共有する、という楽しさがありますが、一対一の絵本は距離の近さがポイントになると思います。お母さんのひざの上で、自分に直接読んでくれている。それが赤ちゃんたちは嬉しいのではないでしょうか。

 

――この絵本は「親子でスキンシップしたくなる」をコンセプトに作られています。親子の絆やつながりを深めるために、やはり絵本は重要なのでしょうか?

絵本を読み聞かせすることで、話しかけられて嬉しい、お母さんの声が聞けて気持ちいいとか、赤ちゃんが得られるものはたくさんあると思います。ですがそれだけでなく、読み聞かせをすることでどの部分を育みたいのかということが大切なんですね。
本があればいいというわけではないと思います。その点、この「なでてなでて」はコンセプトにぴったり合っていますね。
ただ読んでいて楽しいだけでなく、言葉のリズムの心地よさやふれあう喜びなど、より本質的な内容に仕上がっているという印象を持ちました。

 


『なでてなでて』は親子のふれあいを増やしてくれる

 

2人で味わえる感動、言葉のリズムの心地よさ、ふれあう喜び。
これらの要素は絵本の読み聞かせでしか得られないものです。お父さん、お母さんの膝の上で同じものを見て、触れて、気持ちを共有する。絵本が赤ちゃんたちにとって大切なものになるように、本を読んで一緒に過ごした時間が宝物になるかもしれません。

よく見てみると文章や言葉だけでなく、見開きのページが実にこだわって描かれているのが分かります。
例えば、ねことハリネズミを見比べてみると、先生のおっしゃった通りそれぞれの質感がリアルに伝わってきますが、それだけではありません。「ふわふわ」と「ちくちく」、どちらの文字も手描きで、しかも異なるフォントで描かれています。「ふわふわ」はあたたかみのある丸い文字。「ちくちく」はとがったような四角い文字。字が読めない赤ちゃんでも、文字の雰囲気や印象から、動物たちのさわった感触が想像できるのではないでしょうか。

他にもなでるときの手の形が違うなど、いろんな発見があるかもしれません。ぜひ赤ちゃんの反応を見ながら、一緒に探してみてください。
読んで楽しむだけでなく、「なでてなでて」は心の距離をぐっと縮めてくれる絵本です。絵本を通して、家族と過ごす時間がより素敵なものになってほしいと思います。

 


執筆者/田中 夏未
淑徳大学 人文学部 表現学科3年
文芸表現コースを専攻。研究テーマは「悲話の持つ要素は何か」です。作家か声優を目指し「文芸表現コース」「放送表現コース」がある淑徳大学に入学。授業を通して作られた役を演じるより、自分で一から物語を描く楽しさを再認識しています。好きな絵本は『ルリユールおじさん』。


『なでてなでて』


え/日隈 みさき
ぶん/西川 季岐
定価/1320円(税込)
対象/赤ちゃんから
2017年10月20日発行

Read more

7月9日(土)に、東京大学で開催されたウェンディ・クーリングさんの講演会に参加してきました。
彼女が幼かった時は、まだそれほど本がなかった時代です。父は彼女を膝のうえに座らせ、新聞を読んでくれたそうです。内容はよくわからなかったけれど、彼女にとってその時間は「特別なもの」でした。
彼女は「ブックスタート」の活動を通じて、本を読むことを指導せず、ただ純粋に本を読むことの素晴らしさを伝えています。それができたのは「特別なもの」を知っていたからに違いありません。

 


読書は流れに身をまかせて

 

絵本から教訓を得ることを目的にするのはつまらないと思います。
絵本をパラパラとめくって選ぶ時に、わかりやすい教訓が描かれている本が良い本だと考えるなら、それは子どもにとってプレッシャーになっているかもしれません。

とかく親や先生は本について説明したがります。
でも、優れた絵本は(教科書に掲載されている作品もありますが)そもそも何かを教えるものとして描かれていませんし、楽しい物語を与えてやれば子どもは好奇心の赴くままに勝手に「学ぶ」ものです。 だから、本選びやそれを読むタイミングは、子どもの個性を尊重し流れに身をまかせるのが正解です。

いろんなことを感じて、自分で考える。この能動的な学びの積み重ねはテストの点数で測ることはできませんが、測ることができないことにこそ価値(=人生を豊かにする種)があるのだと思います。

この世界に生まれてきて、まだ何も経験しないうちから、大人が知っている今の社会の価値観で 「あれはダメ」とか「これはイイ」とか決めつけたところで、これからの未来がどこに向かうかなんてわかりません。

子どもが楽しんでいる本こそ良い本です。そして親にとって楽しいことも大事。

 


生まれてすぐに絵本を楽しめる赤ちゃん

 

絵本を読むのに早過ぎることはありません。赤ちゃんは声がわかります。もっというと、優しい声や良い声を聞き分けることができます。クーリングさんは生後2日の赤ちゃんにアヒルの絵本を読んであげたことがあるそうですが、(内容はわからなくて当然でも)アヒルの声をマネしてやるとよろこんだといいます。

絵本は時間も空間も自分の好きなように――赤ちゃんの思いもしない反応にあわせてページをめくったりとめたりしながら、世界を広げていくことができます。そこに本というメディアならではのおもしろさがありますし、やっぱり読者がいてはじめて絵本は「完成」するのだと思います。

 


寄り道のできない旅はつまらない

 

そして、お話を楽しむことと、本を読めるようになることは全く目的が違います。
学校の先生はその立場上、読書を「高速道路」と考えるので、だんだん難しい本を読めるようにしていきます。そして、読めるようになることをゴールに設定する人もいます。

でも、本を読むというのは田舎の小道を寄り道しながら歩くようなもので、その旅が終わることはありません。 これも流れに身をまかせるのが正解です。

ブックスタートについて

市区町村自治体が行う0歳児健診などの機会に、「絵本」と「赤ちゃんと絵本を楽しむ体験」をプレゼントする活動。 赤ちゃんと保護者が、絵本を介して、心ふれあう時間を持つきっかけを届けます。
▶NPOブックスタート

 


日時/7月9日(土)
会場/東京大学 伊藤謝恩ホール
住所/東京都文京区本郷7-3-1
時間/13:00~15:50

講演「すべての赤ちゃんに絵本を」
13:00~14:15/ウェンディ・クーリング

対談「赤ちゃんと絵本」
14:30~15:50/ウェンディ・クーリング × 佐々木宏子(鳴門教育大学名誉教授)

Read more