文/マリア・テルリコフスカ
絵/ボフダン・ブテンコ
訳/内田 莉莎子
定価/990円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1969年8月10日発行
かがく絵本に注目しています。
フランスの文学史家ポール・アザールは「子どもの心を押しつぶしてしまうほどたくさんの材料をつめこむ本ではなく、心の中に一粒の種子をまいて、それを内側から育てるような知識の本を好む」と、『本・子ども・大人』の中で記しています。
何かやりたいなあ、と「一粒の種子」を探し中。
『しずくのぼうけん』はかがく絵本でありながら、ミリオンセラーを突破した稀有な作品です。うまく考えないと、とたんにお勉強くさくなってしまう「かがく」を見事に楽しい絵本にしあげています。
バケツからぴしゃんと飛び出した水のしずくは冒険の旅へ。お日さまにぎらぎら照らされて水蒸気になったかと思ったら、空にのぼって雲のところへ……。今度は雨になって地上に逆戻り。地上では岩のあいだにはさまって、寒い夜に氷になったかと思えば、朝のお日さまに温められて再びしずくなって、川へと流れ出します。
「しずく」を擬人化して主人公にしたこと。そして、物語に仕立てたこと。この工夫で、読者の子どもは「水の不思議」をおもしろがって体感することができるんですよね。50年前の作品ですが鮮度は変わらず。
見開きの片面ずつ、全部で23場面の大冒険です。子どもの絵本としては場面数は多いのですが、すいすい読める調子の良い文体もすばらしい。それもそのはず、内田莉莎子さんは『てぶくろ』や『おおきなかぶ』も手掛けている翻訳者だもの。
こんな絵本をつくりたい!
Comments are closed.