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「孫にプレゼントすることができました。素晴らしい絵本で感動しています。末永く読み継いでいくことでしょう。」

 


ある日、読者からこんなステキなメッセージをいただきました。
エンブックスが作りたいのは、これから30年、長く愛されて読み継がれていく絵本です。たちあげ当初からずっと「ニッチ」ではなく「スタンダード」を目指した絵本づくりをやってきました。

だから、お届けした絵本がひとりの読者にとっての新たなスタンダードになったと知って、本当にうれしい気持ちになりました。それに、励まされたというか、元気がでました。

エンブックスは今でも書店流通が実現できていないために、あの手この手と運営の工夫が必要になります。オンデマンド絵本が実現したのも、メディアの運営をはじめたのも、販路がない圧倒的ピンチの中で、どうやって絵本を届けるのかを考えぬいた末の産物です。

結果として、エンブックスは着々と直接読者と触れ合える独自のマーケットを築きつつあります。
出版社は通常、書店で購入する読者の顔を知りませんが、エンブックスではオンライン注文があるごとにひとつずつ自らの手で梱包し、宛名を書いてお届けします。
もちろん、まだまだ僕の理想とする世界とは大きく乖離がありますが、それでも「21世紀型の出版社」の糸口が見えてきたことは確かです。

読者との距離が近いということは、絵本づくりの向こう側にいつも読者の姿が見えるということです。
ちょっとした緊張もあります。でも、それが良いんですよね。読者をもっとよろこばせたい、楽しいお話の時間を過ごしてもらいたいという気持ちが、いつだって創作の勢いになっています。

エンブックスのいちばん近くにいる「こども編集部員」も、いつのまにか50名近くになりました。

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目次

  1. アムステルダム公共図書館 見学レポート①
  2. アムステルダム公共図書館 見学レポート②
  3. アムステルダム公共図書館 見学レポート③
  4. アムステルダム散策 番外編

 


母国語で読み聞かせしてもらうミッフィー

 

オランダで「ナインチェ(Nijntje)」と呼ばれ、子どもたちに親しまれているのは、日本でもおなじみの「ミッフィー」、あるいは「うさこちゃん」です。

ミッフィーが生まれた故郷で、この絵本を手に取る感激。せっかくの機会なので、図書館員の女性に読み聞かせをしてもらえないかとお願いしてみました。

「わたしが?」ハニカミながらあっさりOKしてくれました。

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ミッフィーの母国オランダ語でしばし聞き入ります。もちろん……意味は全然わかりません。全然わからないけれど、なんだかとっても良いのです。

一冊の絵本を読み終えるまでは、ほんのわずかな時間です。でも、とてもきらめいた時間でした。オランダの子どもたちはこうして「ナインチェ」に親しんでいくんですね。

こういう体験は、絵本の翻訳にきっと役に立つと思います。だって翻訳が難しいのは、原作の文の「調べ(=リズム)」をどう再現できるかだから。

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目次

  1. アムステルダム公共図書館 見学レポート①
  2. アムステルダム公共図書館 見学レポート②
  3. アムステルダム公共図書館 見学レポート③
  4. アムステルダム散策 番外編

 


アムステルダム公共図書館の内部に迫る

 

アムステルダム公共図書館は、信じられないことに10階建て(地上9階、地下1階)で、吹き抜けになった設計は、まるで高級ホテルかデパートのようです。

エスカレーターで昇っていくと、フロアごとに、カテゴリー別に整頓された本が並んでいます。
「僕は美術関連の本が見たいから3階にいるね」
「じゃあ、1時間後に4階の小説コーナーの前で待ち合わせしましょ」
通りがかったオランダ人カップルが、そんな会話をしているような気がしました。

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まるでUFOのようなデザインのDVDフロア。紫のライティングが未来的です。

微動だにしない人がちらほらといるのは、タイトルを決めかねているのだと思います。端からタイトルを見ていく間に、
映画を何本か観られるかもしれません。

 


至れり尽くせりのホスピタリティ

 

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上の階の窓際は特等席です。あいにくのどしゃ降りで景色はぼんやりしていましたが、それはそれで悪くないものです。読書をするにはもちろん、時々ぼうっと過ごすのも良さそうです。

館内のいたるところにアーティストの作品が展示されています。美術館のような雰囲気はこうして作られているようです。

パソコンは各フロアに並んでいます。本の検索端末ではなくて、インターネット使いたい放題。アムステルダムでネットカフェを起業しようと思っているなら、今すぐ白紙に戻したほうがいいかもしれませんね。

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さらに昇っていくと、ラジオのスタジオまであります。ちょうど生放送直前の慌ただしい現場でしたが、ディレクターに直撃インタビューをしてみると、
「放送の現場を公開したら、学生たちにとって何よりの勉強になるだろう」
といっていました。図書館内のスタジオならではの新しい試みで、ぜひ実現させて欲しいと思いました。そのうち、学生が作る番組もここから生まれていくのでしょう。

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最上階はレストランになっています。どこまでも至れり尽くせり。
晴れた日なら、テラス席で本の感想なんかをゆらゆら語りながら、ゆっくり過ごすデートもいいものです。妄想です。

隣のフロアの白黒が交互に並ぶ床を見て、フェルメールの絵が思い浮かびました。レンブラントやフェルメールも、ビールを片手に芸術の未来について語ることがあったのでしょうか。

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『わたしが正義について語るなら』

著/やなせ たかし
定価/858円(税込)
対象/中学生から
ポプラ社
2013年11月発行

 


『それいけ! アンパンマン』

作・絵/やなせ たかし
定価/968円(税込)
対象/4歳から
フレーベル館
1975年11月発行

 


正義の味方というけれど、本当の正義とはいったい何だろう? 我々が本当にスーパーマンに助けてもらいたいのは、たとえば、失恋して死にそうな時、おなかがすいてたおれそうな時、あるいは旅先でお金がなくなった時、その他いろいろあるわけで、そういう細かいところに気がつく優しいスーパーマンがいてほしいのです。

アンパンマンを人気者にしたのは園児たちです。
1975年に出版された絵本『それいけ! アンパンマン』は最初、おなかをすかせた人を助ける設定が子どもには難しいとか、顔を食べさせるなんて残酷とか、大人には全然受け入れられなかったそうです。

でも、子どもはこの絵本のおもしろさに気がつきました。
ある幼稚園の棚で、ボロボロになるまで読まれた「アンパンマン」をみて、ようやく大人はその考えを改めたといいます。

自分の哲学を語れる作家は強いです。
その信念を信じてこれを絵本にしたフレーベル館の編集者もすごいです。この本を読んだ後、改めて「アンパンマン」を読んでみると、もっと心が豊かになると思います。

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好みで選べる製本3タイプ! 「在庫リスクなし」の21世紀型エコ出版モデルを実現したエンブックス

 

絵本の版元エンブックス(代表:西川季岐/にしかわとしみつ 事業所:東京都豊島区)は、6月20日(木)より、大日本印刷株式会社(本社:東京都新宿区)協力のもと、独自POD(Print On Demand)体制を整えます。

「受注生産」によって在庫リスクをなくすと同時に、これまでは高い生産コストがネックになっていた「同タイトルで複数タイプの製本」を実現。読者の好みやライフスタイルに応じて「ハードカバー」「ペーパーバック」「デジタル」の最大3タイプから選択できるようになります。

新体制での作品第一弾は、「2013年度 ボローニャ国際絵本原画展」でSM国際出版賞(Fundación SM International Award for Illustration)を受賞した刀根里衣(とねさとえ)さんの国内デビュー作『トトとココのパーティー』。この賞は、35歳以下の入選者から選出される「世界一」の栄誉(日本人初の快挙!)で、その高い芸術性はすでに世界のお墨付きです。A5判ペーパーバック(148×210mm)なら850円(税込)と、手にとりやすい価格になっています。

ひとまわり大きなA4変形判ハードカバー(200×264mm)は、2400円(税込)と、やや割高な印象ですが、「受注生産」ならではのメリットを活かし、希望者にはオリジナルメッセージを印刷できる無料オプションをご利用いただけます。ペーパーバックにはないトビラ絵も魅力のハードカバーは、お子様への特別なギフトとしてもオススメです。

今後は、既刊のハードカバー化も決定。また、年内刊行に向けて、新作の制作もすでに進行中です。新体制のもと、これまで以上に絵本づくりを加速させ、エンブックスの「エン」に願いを込めた、こどもと絵本の「縁」を、たくさん創り出していきたいと考えています。これからのエンブックスにますますご注目ください。

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目次

  1. 『ニコニコしょうてんがい』絵本原画展レポート①
  2. 『ニコニコしょうてんがい』絵本原画展レポート②

 


画家ソ・ミジの全部を見せる

 

出版にあわせて開催された展覧会場には、『ニコニコしょうてんがい』の全原画の他、編集者しか見ることのできないな貴重なラフや、これまでのミジさんの軌跡をたどる作品も盛りだくさんに飾られました。

劇場が併設された会場は、ものすごく広いんです。こんなステキな場所で個展ができるよろこびと、どうやったら会場が埋まるんだという不安のなかで準備ははじまり、結果的に「全部見せる」ことになったのは、観覧者にとっても、作家にとっても、幸運なことだったと思います。

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来場者数822名の大盛況にニコニコにっこり

 

初日は平日ということもあって、閑古鳥が鳴いていたものの、連休に入ってからは雨ニモ負ケズ、期待以上のお客様に来場していただきました。

5月3日は100名を超え、さらに翌4日は200名を、会期中の総来場者数は822名という大盛況で幕を閉じることができました。遠くはセルビアからも、そして、たくさんの子どもたちも遊びにきてくれてうれしかったです。

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ニコニコしょうてんがい原画展

とびきりのサプライズもありました。絵本に登場する「くだものやさんのおじさん」のモデルになった、青果店を営まれているおじさんがいらっしゃったのです。原画と登場人物を一度に楽しめる、そんな愉快な展覧会が他にあったでしょうか。

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展覧会のあとに続く物語

 

今回、出版にあわせて原画展の開催が実現したのは、あうるすぽっと(公益財団法人としま未来文化財団)の全面的なご協力があってのことです。

会場をはじめ、絵を飾るためのフレーム、小物を並べるためのガラスケース、テレビのモニターやテーブルに至るまで、すべて無償で貸していただきました。これほど贅沢な展覧会は滅多にできるものではありません。本当にありがとうございました。

最大級の感謝を込めて、ミジさんからあうるすぽっとのスタッフの皆様へ、貴重な原画が贈られたのはステキな後日談。

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ニコニコしょうてんがい絵本原画展


会場/あうるすぽっとホワイエ
住所/東京都豊島区東池袋4-5-2 ライズアリーナビル2F
TEL/03-5391-0751
会期/4月25日(水)~5月6日(日)
開館時間/12:00〜19:00
観覧料/無料
主催/あうるすぽっと(公益財団法人としま未来文化財団)

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◎仕様

すえっこリスのひみつ『すえっこリスのひみつ』
ぶん・え/かたやま なのあ
定価/825円(本体750円+税)
対象/幼児から
2011年11月20日発行

32Pペーパーバック製本
サイズ/幅148×高210mm
ISBN 978-4-905287-01-8

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◎概要

すえっこリスのモモは何をするにものんびりで、いたずら好きの兄姉にいつもからかわれていました。
さみしい毎日を過ごすなかで、モモは一匹のあおむしと運命的にめぐり合います。あおむしとの出会いによって明らかになる、モモに隠されたある秘密とは──

 


◎作家プロフィール

かたやま なのあ
武蔵野美術大学卒。出版社でデザイナーとして勤務したのち、イラストレーターとして独立。書籍や広告の仕事を手掛ける。
▶ https://www.nanoa.net/

 


◎試し読み

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26日、27日の2日間にわたって『ばあばのおうち』出版記念イベントを開催しました。

まずはクラウドファンディングを通じて、この絵本づくりにご支援いただいたみなさま、そしてわざわざ時間をつくってサンドイッチ屋「GARTEN」までお越しいただいたみなさま、本当にありがとうございました。

実際に読者のみなさまとお会いし、直接お届けできてうれしかったです。さらには、うれしい言葉をたくさんかけていただいたり、目の前で子どもたちに読み聞かせてくれたりと、最高にステキな場にしていただきました。

そんな最高にステキな場を支えてくれたチーム・ガルテンのスタッフのみんな、ラッピングを手伝ってくれた萌さんファミリーも、どれだけ助けられたことか。ありがとうございました。

心配していた天気は、両日とも、まるで奇跡のように晴れ間をのぞかせてくれました。
途中、萌さんと「空からキラキラしたものが降ってるよね、なんだろね」と話していたのですが、あとから考えてみれば、ばあばが雲の上から、「晴れの粉」をまいてくれていたのかもしれません。

 


今日は去年から楽しみにしていた村上萌さんの絵本 #ばあばのおうち の発売と、早稲田大学の卒業式。 私は今秋卒業なので、お見送りだけだったけど袴姿の可愛いみんなに会えて単純に嬉しかったし、やっぱり寂しくなりました…😞 . 自分の人生は、自分の手で切り開いて歩いていこうと思わせてくれた萌さんに出会えたのも大学に行ったから。自分が信じたものはこのままずっとずっと抱きしめながら、あと約半年、大学生活頑張りますっ – #ばあばのおうち#絵本#人生を変えたひと#カスタマイズエブリデイ#卒業おめでとう ♡

Sakura Inoさん(@osakuriiii)が投稿した写真 –

絵本ゲット!!! * サンドイッチうまし!!! * 桃代 @suzy_momo さんや、 @cafenavy のなかでら @kidottichan さんにもお会いできたし!!! * 天氣いいし!!! * なんていい日なんだ!!! * 寄り道して良かったーーー!!!寄り道ばんざーい!!! * 萌 @moemurakami_ さん出版、おめでとうございます!!! * GARTEN @garten_jp の季節のフルーツサンドは、今はイチゴとキウイで春を満喫できますよー!!! * さあ皆、青山まで寄り道して、絵本ゲットしてサンドイッチ頬張って、春を味わうんだぜイェーイ!!! * #よりみちサンドイッチ #garten #commune246 #sandwich #coffee #book #picturebook #beautiful #like #love #congratulations #aoyama #tokyo #grandma #ちゅうもえ #ちゅうもえ関西 #桃代党 #igersjp #instagramersjapan #wu_japan #icu_japan #gf_japan #おめでとう #おいしい #ごちそうさま #サンドイッチ #東京 #桃代さんがむっちゃお元氣そうで嬉しかったです #萌さんお疲れさま #皆さんありがとう

Kai Olohiaさん(@kai_olohia)が投稿した写真 –

ちゅうもえ大人clubで萌ちゃんと♡ #ちゅうもえ #桃代党 #garten

HITOMIさん(@hitominano)が投稿した写真 –

昨日は私にとって初めての絵本の発売日でした。 去年の夏、熱い作者と熱い編集さんと打ち合わせをし、期待感とプレッシャーの入り混じった不思議な気持ちになったのを覚えています。 この物語は作者の村上萌ちゃんがおばあちゃんと過ごした幼い頃の思い出をまとめた実話。登場人物のキャラクターや部屋の家具配置、庭に咲く花々の位置など、誰よりも物語の世界に没頭しなければなりませんでした。 大切な思い出達を絵で表現していくのは想像以上にプレッシャーで、何度も何度もくじけそうになりました。 長い長い取材と構想期間を経て、最終的に絵を描いたのは日数でいえば一週間も無かったです。その時は思い出を語るかのように、どんどん筆が進んで、1日で5ページ描ききった日も。きっとその時は私の所にばぁばが来てくれたんだろうなぁ。。 そんな難産で産み落とした絵本『ばぁばのおうち』は愛おしい子供のようです。この子がこれから先、たくさんの子供達に「ばぁばが教えてくれた大切なこと」を伝えていけますように。 #ばあばのおうち #illustration #picturebook #家糸プロジェクト #絵本 #ばぁばありがとう

NozomiYuasaさん(@joetonozomi)が投稿した写真 –

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  1. 阿川佐和子さん講演会「妄想のススメ」レポート①
  2. 阿川佐和子さん講演会「妄想のススメ」レポート②

 


テレビでもおなじみのエッセイスト、阿川佐和子さん。ユーモアを交えてたっぷり語ってくれた子ども時代は、意外にも読書が苦手だったとか。そんな少女が、どうして「かつら文庫」に通うことになったのか、石井桃子さんとの思い出、そして阿川さんが考える絵本の魅力について、2回に分けてレポートします。

こどものとも

 


かつら文庫のはじまりの本当

 

1958年に、石井桃子さんが荻窪の自宅を改装してはじめた、地域の子どものためのちいさな図書館が「かつら文庫」です。
子どもの本に関わる仕事をしていた石井桃子さんは生涯独身。阿川さんによると、子どものいなかった石井さんが、もっと子どもの気持ちに寄り添いたいと自宅を開放して招いたというのが、「かつら文庫」のはじまりだそう。

ときどき2階から、執筆中の原稿を持った石井桃子さんが降りてきて、子どもたちを集めて実際に読んで聞かせては「なるほど、これは良し、これは直し」と、その反応を作品に活かしていたということです。
「かつら文庫」の棚には、教訓的なもの、偉人の伝記のような本は1冊もなかったという話も印象的でした。

 


バージニア・リー・バートンにがっかり?!

 

そんな「かつら文庫」ができてすぐに、読書家のお兄さんが通うことになり、本よりも外で遊ぶことが好きだった幼い阿川さんも、ただお兄さんのマネっこがしたくて一緒についていくことに。
なにより、子どもたちだけで出かけ、電車に乗り、荻窪までの大冒険が楽しかったそうで、「かつら文庫」に着いても、ひとり縁側から庭に出て、お花を摘んだり、サルスベリの木に登ったりして遊んでいたというおてんば。

それでも、石井桃子さんが訳した絵本『ちいさいおうち』は大好きだったと阿川さん。それを知っていた石井桃子さんの計らいで、小学生低学年のとき、バージニア・リー・バートンに会わせてもらったというのは、子ども時代のうらやましい宝物のようなエピソードです。
大きな模造紙を壁にはり、その場で即興で絵を描いてくれるというリー・バートンに、「ちいさいおうちの、どの場面を描いてくれるんだろう!」と、胸を躍らせていた少女。
ところが、勢いのある長い線で描かれたのは思ってもみなかった「恐竜」で、当時は「本当にがっかりした」と、いかにも子どもらしい本音が。
そう、お察しの通り、その後出版される『せいめいのれきし』の一場面です。このときの原画は今でも「東京子ども図書館」に飾ってあるそうです。観てみたい!

 


『正義のセ』

著/阿川 佐和子
絵/荒井 良二
定価/1430円(税込)
角川書店
2013年3月発行

 


『ちいさいおうち』

文・絵/バージニア・リー・バートン
訳/石井 桃子
定価/1870円(税込)
対象/4、5歳から
岩波書店
1965年12月16日発行

 


『せいめいのれきし』

文・絵/バージニア・リー・バートン
訳/石井 桃子
定価/1870円(税込)
対象/小学中学年から
岩波書店
1964年12月15日発行

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