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7月9日(土)に、東京大学で開催されたウェンディ・クーリングさんの講演会に参加してきました。
彼女が幼かった時は、まだそれほど本がなかった時代です。父は彼女を膝のうえに座らせ、新聞を読んでくれたそうです。内容はよくわからなかったけれど、彼女にとってその時間は「特別なもの」でした。
彼女は「ブックスタート」の活動を通じて、本を読むことを指導せず、ただ純粋に本を読むことの素晴らしさを伝えています。それができたのは「特別なもの」を知っていたからに違いありません。

 


読書は流れに身をまかせて

 

絵本から教訓を得ることを目的にするのはつまらないと思います。
絵本をパラパラとめくって選ぶ時に、わかりやすい教訓が描かれている本が良い本だと考えるなら、それは子どもにとってプレッシャーになっているかもしれません。

とかく親や先生は本について説明したがります。
でも、優れた絵本は(教科書に掲載されている作品もありますが)そもそも何かを教えるものとして描かれていませんし、楽しい物語を与えてやれば子どもは好奇心の赴くままに勝手に「学ぶ」ものです。 だから、本選びやそれを読むタイミングは、子どもの個性を尊重し流れに身をまかせるのが正解です。

いろんなことを感じて、自分で考える。この能動的な学びの積み重ねはテストの点数で測ることはできませんが、測ることができないことにこそ価値(=人生を豊かにする種)があるのだと思います。

この世界に生まれてきて、まだ何も経験しないうちから、大人が知っている今の社会の価値観で 「あれはダメ」とか「これはイイ」とか決めつけたところで、これからの未来がどこに向かうかなんてわかりません。

子どもが楽しんでいる本こそ良い本です。そして親にとって楽しいことも大事。

 


生まれてすぐに絵本を楽しめる赤ちゃん

 

絵本を読むのに早過ぎることはありません。赤ちゃんは声がわかります。もっというと、優しい声や良い声を聞き分けることができます。クーリングさんは生後2日の赤ちゃんにアヒルの絵本を読んであげたことがあるそうですが、(内容はわからなくて当然でも)アヒルの声をマネしてやるとよろこんだといいます。

絵本は時間も空間も自分の好きなように――赤ちゃんの思いもしない反応にあわせてページをめくったりとめたりしながら、世界を広げていくことができます。そこに本というメディアならではのおもしろさがありますし、やっぱり読者がいてはじめて絵本は「完成」するのだと思います。

 


寄り道のできない旅はつまらない

 

そして、お話を楽しむことと、本を読めるようになることは全く目的が違います。
学校の先生はその立場上、読書を「高速道路」と考えるので、だんだん難しい本を読めるようにしていきます。そして、読めるようになることをゴールに設定する人もいます。

でも、本を読むというのは田舎の小道を寄り道しながら歩くようなもので、その旅が終わることはありません。 これも流れに身をまかせるのが正解です。

ブックスタートについて

市区町村自治体が行う0歳児健診などの機会に、「絵本」と「赤ちゃんと絵本を楽しむ体験」をプレゼントする活動。 赤ちゃんと保護者が、絵本を介して、心ふれあう時間を持つきっかけを届けます。
▶NPOブックスタート

 


日時/7月9日(土)
会場/東京大学 伊藤謝恩ホール
住所/東京都文京区本郷7-3-1
時間/13:00~15:50

講演「すべての赤ちゃんに絵本を」
13:00~14:15/ウェンディ・クーリング

対談「赤ちゃんと絵本」
14:30~15:50/ウェンディ・クーリング × 佐々木宏子(鳴門教育大学名誉教授)

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エンブックスのオンデマンド絵本は、これまで読者のライフスタイルやお好みに応じて、2つの製本タイプから選べるようになっていました。

この度、新たに「大判ペーパーバック絵本」が加わり、選べる製本タイプが最大3つに増えます。
大判ペーパーバック絵本は、既存のハードカバー絵本と同じサイズ(200×264mm)で、よりお話の世界をダイナミックに楽しむことができると同時に、オンデマンド絵本でありながら手に取りやすい価格設定が魅力です。

まずは7月20日(月)発行予定の新刊絵本『ゆきちゃんのおさいふ』(ぶん・え/松村 真依子)から適応し、既存の作品についても、作家の了解を得たものから随時適応していく予定です。

これまで以上に、お子さまと楽しい時間をお過ごしいただけるきっかけになればうれしいです。

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「家糸プロジェクト」のはじまり

 

まるで、名作絵本 『ちいさいおうち』が、そっくりそのまま飛び出してきたかのような佇まい。僕が、そのお家のことを知ったのは、インスタグラムに投稿された1枚の写真がきっかけです。

ところが、昨春に主を失ったそのお家は、間もなく取り壊されることが決まっていました。カタチあるものは、いつか失われることが宿命とはいえ、そこで4番目の孫として育った村上萌さんには「残したい」気持ちがありました。

僕はすぐに、日本の『ちいさいおうち』のような絵本をつくりませんか、と声をかけました。絵本であれば、また次の100年も語り継いでいくことができる。これが「家糸プロジェクト」のはじまりです。

 


物語のテーマは「大切なこと」

 

東京は田園調布の、閑静な住宅街。なかでも一際存在感のあるお家は、有形文化財にも登録された築100年の洋館です。その長い歴史の、限りなく最後に近いゲストとして、僕は招かれました。

お家の中を案内しながら、彼女はおばあちゃんとの思い出を、ひとつひとつ宝箱から取り出すように、語り聞かせてくれました。

そこで暮らした家族の物語には、子どもたちに語り継ぎたい「大切なこと」が、たくさん散りばめられていました。彼女のお話を、できるだけ素直に、そのままの温度で、絵本にしようと決めました。

家糸プロジェクト

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お家のその後と、サンドイッチ屋「GARTEN」

 

壊されてしまったお家の一部は、もうひとつの「家糸プロジェクト」として、村上さんが運営するサンドイッチ屋「GARTEN(ガルテン)」のオープンに合わせて、田園調布から青山まで運ばれました。印象的な淡いグリーンの窓枠は、新たな場所でも大きく開かれ、以前と同じようにお客様を心地よく招いてくれます。

「お天気のいい朝、庭に出てサンドイッチを食べる楽しみを教えてくれた」おばあちゃんは、「足りないものがあると、ハーブやフルーツはそこらへんで摘んできて、 ささっと添えてくれた」そう。この場所もまた、語り継ぎたい大切なことがあふれています。

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物語の導入(仮)

 

爽やかな5月の北海道から届いた手書きの原稿は、「迷うことなく、文(ぶん)は完成しました。」と村上さん自身がいうように、次から次へと言葉があふれてきたことがわかるものでした。ほとんど消した後すらなくて、最初から最後まで、まるで書くことが決まっていたかのようなそれをみて、僕は大きな編集は必要がないと判断しました。

ありさは、はるの おひさまの ひかりと トーストの こうばしいかおりで、めを さましました。まっさきに となりを みると、やっぱり おばあちゃんの ふとんは、からっぽに なっていました。リビングに おりると、ふたりぶんの おさらと ティーカップが、よういされていました。ありさは、すこし おとなになったみたいで おとまりした あさのじかんが、だいすきでした。

 


物語と相性の合う絵

 

絵本は「絵と文の総合芸術」だといいます。ひとりで絵と文を描く作家の場合は「相性」を気にする必要はありませんが、絵と文の描き手が違う場合、それは重要な条件のひとつになります。この物語に合うだろう何名かの画家候補を見つけて村上さんに相談したところ、「一緒にやりたい人がいる」と推薦されたのが、イラストレーターの湯浅望さんです。

絵本の絵は、1枚もののイラストレーションと違って、15枚が揃ってはじめてひとつの作品になります。それぞれの場面は、最初から文が入ることを想定して構図を決めなきゃいけないし、ページをめくる方向にあわせて、物語の時間軸を考える必要もあります。文で言えば行間と同じように、ページ間を「語る絵」が描けなければ、物語の世界に奥行きはでないでしょう。何より子どもが好きになってくれる絵を描くというのは、「上手」とは全く違う性質のものです。

 


絵本の絵を描ける人の条件

 

1ヵ月待っても、2ヵ月待っても、ラフの1枚もあがってこないのをみて、僕の不安は的中したと思いました。余裕をもってスタートした制作時間は刻々と短くなっていきます。いよいよ3ヵ月を過ぎて、ダンドリの調整も限界にさしかかった時に、湯浅さんが物語の主人公になりきって、実際の街を散策して歩いていたことを知りました。

それを聞いて、湯浅さんは絵本の絵を描ける画家だと確信しました。絵本を描く上で、デッサン力よりも遥かに大切なこと。それは物語の世界を知ることです。作家が世界の隅々まで知っているからこそ、物語にリアリティが生まれる。リアリティのある物語は、子どもをあっというまにその世界へ誘うのです。

家糸プロジェクト

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自分で考える人は「詩人」であり「科学者」

 

自分で考える、それ自体が「科学」なんだ、と教えてくれる大人が身近にいる子どもは、きっと自然に勉強が好きになると思います。もちろん、本当の意味での勉強で、無理やり正解を詰め込むような勉強ではありません。

考える過程が一番おもしろくて、学びが大きいのだから、正解を知らないというのはすごく楽しいこと。
どうして雷が鳴るんだろう、どうしてトマトは赤いんだろう――世界は不思議でいっぱいで、自分で考えた答えを持っている人は、まさに「詩人」であり、「科学的」です。(自分なりのトマトが赤い理由を語れる人は、エンブックスにご連絡くださいね、そのまま絵本ができるかもしれません)

最近話題になる絵本の多くは、ノウハウものや知育ものばかりで、僕はちょっと気がかり。子どもが自分で選ぶとは思えない絵本ばかりです。大人は子どもに正解を用意するのではなく、考えるきっかけを与えることが大切です。

 


以下、『言葉の力 人間の力』より抜粋
語り手:中村桂子(生命誌研究館 館長)

 

 生命誌研究館にお越しの保育園の先生が、(中略)「生きているってどういうことだろう」と問いかけられて、「植物は生きているだろうか?」と子どもたちにきいたのだそうです。ほとんどの子は頭で理解しているのでしょうね。「植物だって生きものだよ」と答えたそうです。
 ところが、一人だけ「植物は生きものではない」と主張する子がいたんですって。先生としては植物も生きものだということを言いたい。でも、その子は「だって、動かないのに生きもののはずがない」と主張したといいます。

 (中略)ある日、外で草取りをした時に、草を抜いたら、根っこのところから少し水が出てきた。するとその子はそれをみて、「ああ、植物って泣くよ! やっぱり生きているんだ」と言ったというのです。
 根から出た水はもちろん涙ではないし、科学では、「生きている」ということはそんなことで判断するのではありません。でも「あ、生きているんだ」とまず思うこと。そう実感して、そこからだんだん、三年生、四年生になった時に、いろんなことが解ればいいのです。私は、五十人いる保育園児の中で、この子が一番、ある意味で科学が解る完成の持ち主だなと思いました。

 ただお母さんは、みんなが「植物も生きものだ」とすぐに解っているのに、うちの子はなかなか解らないと心配する。今の世の中では、知識として教えられれば疑いもなく納得して信じることがよいと決められがちです。
 科学者としての私は、(中略)この子をとってもすてきだと思ったんです。

 自分で観察したことから答えを自分で見つけて出す。科学って正しい必要はありません。(中略)間違えていても、自分で考えたことをきちんと言って、それがまた次に新しい発見につながる。
 (中略)科学はきちんと見て、きちんと考えて、「こう思います」と言えばよいのです。(中略)十年経ったらあれは間違いだったということになったとしても、とても意味のあることを言うことがある、それが科学なのです。

 ただ、その時に、「きちんと見て、きちんと考えてある」ということが条件です。(中略)でたらめではいけない。それなら、たとえ間違えても、とても意味のある間違いになるのですね。だから科学は正しいことを言うことではなくて、よく見て、よく考えることなのです。

 その子は、ほんとに周りが全員そうだと言っても、自分は自分で見て納得しないとそうだと言わない。しかも、植物は生きものじゃないと言っていたのに、自分が見て、根から水が出てきたら、「泣いているんだから」、と答えを訂正する。まさに「詩人」であり、「科学的」です。

 


『言葉の力 人間の力』

著/松居 直、中村 桂子、舘野 泉、加古 里子
定価/1650円(税込)
佼成出版社
2012年7月25日発行

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7月8日(金)に、元福音館書店専務の田中秀治さんにお話を伺ってきました。
林明子さんデビュー作の担当編集者として、また「こどものとも 年少版」の創刊メンバーとして、たくさんの優れた絵本を世に送り出してきた経験から語っていただいたのは、絵本の良し悪しでも、絵本づくりのノウハウでもなく、親子の在り方の「本質」だったと思います。

 


子どもと絵本の関わりかたが変わってきた30年

 

2歳頃から子どもは絵本を楽しめるといわれた1970年代、2歳から4歳までの子どもたちを対象とした「こどものとも 年少版」が創刊されたのは1977年のことです。
1990年代に入ると、1歳頃から子どもは絵本を楽しめるといわれはじめ、1995年に「こどものとも0.1.2.」が創刊されました。
子どもと絵本の関わりかたは時代とともに刻々と変化していて、今では0歳児が絵本を楽しむことも珍しくありません。

こうして長い年月を俯瞰してみると、モノが豊かになるにつれて子どもの遊び道具はとてつもなく増えているはずなのに、絵本は端に追いやられるどころか対象の幅を広げてきたことがわかります。
その理由は、絵本は「親子で楽しむもの」だから、に尽きると思います。

 


絵本は親子で楽しむもの

 

田中さんは「読み聞かせ」という言葉が好きじゃないといいます。
幼い子どもはまだ絵本をひとりで読むことができないので、親が読んであげないといけません。だから、つい上の立場で「読み聞かせ」といってしまいがちですが、実際に絵本を読んでいると楽しいのは子どもだけじゃないことがよくわかります。それは、単に描かれたお話が楽しいというだけではありません。

絵本が親子にもたらすもの

  • 時間と空間で愛情を伝える
  • 子どもの感性の元をつくる

 


まず、絵本を前に親子は肌を触れ合わせます(=スキンシップ)。
そしてお話を通じて、親はたくさんの「ことば」を声にのせて投げかけ、子どもはそれを「愛情」として受け取ります。また、子どもは親の元で安心してお話の世界に入っていき、たくさんの「感動体験」をしてきます。
まだ言葉の意味がわからない赤ちゃんでも、ケラケラ笑う反応をみれば愛情が伝わっていること、コロコロ変わる表情から感性が磨かれていることは手に取るようにわかります。

実は、絵本を読むという行為を通じて、親子は愛情のキャッチボールをしています。
子どものうれしいは親もうれしい。もしかすると、親のほうが子どもに「読み聞かせ」をさせてもらっているんじゃないかとさえ思えます。田中さんのメッセージの本意を僕はそんなふうに理解しました。

 


絵本があればたくさんの言葉をかけてあげることができる

 

はじめての子育てで、子どもにどうやって接していいかわからないときもあるかと思います。
幼い子どもの行動範囲は限られているのに好奇心は限りなくて、期待に応えてたくさんの豊かな言葉をかけてあげたいと思っても、自分の引き出しにある語彙では心細いかもしれません。

今ではすっかり赤ちゃん絵本の定番になった『もこもこもこ』を開いてみると、不思議なカタチに美しい色の抽象画に「もこ」とか「にょきにょき」とか、日常会話ではなかなか出てこない絵本だからこそかけてあげられる豊かな言葉が並んでいます。
そういう「こどもだましではない本物」の絵本は、最高の親子の架け橋になってくれると信じています。

 


『くだもの』

作/平山 和子
定価/990円(税込)
対象/2歳から
福音館書店
1981年10月20日発行

すいか、もも、ぶどう、なし、りんごなど、日常子どもたちが食べるくだものを、まるで実物かと思わせるほど鮮やかに描いた、いわば果物の画集。

 


『たまごのあかちゃん』

文/神沢 利子
絵/柳生 弦一郎
定価/990円(税込)
対象/2歳から
福音館書店
1993年2月10日発行

「たまごのなかでかくれんぼしているあかちゃんはだあれ?でておいでよ」と呼びかけると、卵の中から次々と赤ちゃんが出てきます。リズミカルな文と、ユーモラスな絵が楽しめます。

 


『でてこい でてこい』

作/はやし あきこ
定価/880円(税込)
対象/0歳から
福音館書店
1998年4月15日発行

だれかかくれているよでてこいでてこい」と色紙に呼びかけると、「げこげこげこ」「ぴょーんぴょん」といろいろな動物たちが跳び出してきます。色と形の愉快な絵本です。

 


『もう おきるかな?』

文/松野 正子
絵/薮内 正幸
定価/880円(税込)
対象/0歳から
福音館書店
1998年6月10日発行

動物たちが親子で気持ちよさそうに眠っています。「もうおきるかな?」ページをめくると「あー、おきた! 」最後にゾウの親子も起き上がり、さあ、鼻と鼻をつないでおでかけです。

 


『いないいないばあ』

文/松谷 みよ子
絵/瀬川 康男
定価/770円(税込)
対象/0歳から
童心社
1967年4月15日発行

「赤ちゃんだからこそ美しい日本語と最高の絵を」の想いから、日本初の本格的な赤ちゃん絵本として誕生して半世紀。はじめて出会う一冊として、世代を越えて読みつがれています。いないいない、ばあ。にゃあにゃが、くまちゃんが、ほらね、いないいない……。親子の伝承遊びを絵本に再創造した作品。

 


『がたん ごとん がたん ごとん』

作/安西 水丸
定価/880円(税込)
対象/0歳から
福音館書店
1987年6月30日発行

がたんごとんがたんごとんと、まっ黒な汽車がやってきます。駅で待っているのは哺乳瓶。「のせてくださーい」と言って汽車に乗り込みます。ふたたび出発し、がたんごとんと次の駅へ行くと、こんどはコップとスプーンが「のせてくださーい」。さらに次の駅では、リンゴとバナナが、ネコとネズミが「のせてくださーい」。みんなをのせて汽車は「がたんごとん」と終着駅へ。そこは……。

 


『もこ もこもこ』

作/谷川 俊太郎
絵/元永 定正
定価/1430円(税込)
対象/赤ちゃんから
文研出版
1977年4月発行

「しーん、もこもこ、にょきにょき」とふくれあがったものは、みるまに大きくなってパチンとはじけました。詩人と異色の画家がおりなす不思議でおかしな世界の絵本。

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ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)

 

1965年にスロヴァキア共和国の首都ブラティスラヴァで創設され、50周年の節目を迎えた、絵本画家に贈られる最も古い国際賞のひとつです。

第1回ビエンナーレは2年後の1967年に開催され、25カ国から320の作品が集まりました。これまでに100カ国、7000を超える作品に展示の機会を提供し、世界中の出版社や子どもたちの注目を集めています。

刊行された絵本から、特に芸術性の高い作品や、実験的で新鮮な表現や、独創的でユニークな作品が評価され、1点のグランプリ、5点の「金のリンゴ賞」、同じく5点の「金牌」が選出されます。その選出方法から、絵本のこれからをうかがい知ることができる賞だといえます。

 


日本人画家 歴代「グランプリ」受賞作品

 

  1. 1967年 瀬川 康男『ふしぎなたけのこ』
  2.  


  3. 1998年 中辻 悦子『よるのようちえん』
  4.  


  5. 2003年 出久根 育『あめふらし』

 


日本人画家 歴代「金のりんご賞」受賞作品

 

  1. 1969年 田島 征三『ちからたろう』
  2.  


  3. 1971年 丸木 位里、丸木 俊『日本の伝説』
  4.  


  5. 1973年 梶山 俊夫『かぜのおまつり』
  6.  


  7. 1977年 安野 光雅『あいうえおの本』
  8.  


  9. 1979年 安野 光雅『旅の絵本 2』
  10.  


  11. 1979年 谷内 こうた『のらいぬ』
  12.  


  13. 1981年 谷内 こうた『つきとあそぼう』
  14.  


  15. 1983年 藤城 清治『銀河鉄道の夜』
  16.  


  17. 1989年 瀬川 康男『清盛』(絵巻平家物語)
  18.  


  19. 1997年 梶山 俊夫『わらべうた』
  20.  


  21. 1997年 北見 隆『聖書物語』
  22.  


  23. 1999年 関屋 敏隆『オホーツクの海に生きる』
  24.  


  25. 2001年 高部 晴市『やまのじぞうさん』
  26.  


  27. 2013年 きくち ちき『しろねこくろねこ』
  28.  


  29. 2013年 はいじま のぶひこ『きこえる?』
  30.  


  31. 2015年 ミロコ マチコ『オレときいろ』
  32.  


  33. 2017年 荒井 真紀『たんぽぽ』
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◎仕様

ぼくとロボット『ぼくとロボット』
ぶん・え/山越 萌生
定価/2750円(本体2500円+税)
対象/幼児から
2014年11月24日発行

32Pハードカバー製本(カバーなし)
サイズ/幅200×高264mm
ISBN 978-4-905287-18-6

*この絵本は受注生産でお届けします

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◎概要

お片付けが苦手な男の子は、お母さんに叱られて、つい遊び相手のおもちゃに八つ当たり。捨てられかけたロボットは、男の子を道連れにゴミ箱へ落ちてしまいます。「外に出して!」と怒ったおもちゃたちを前に、遊ぶことは大得意の男の子は、みんなと一緒に脱出方法を考えます。
見どころは、後半の「特製ロケット」の場面。無事に脱出できるかどうかで盛り上がるのはもちろん、その過程に描かれる男の子とロボットの心の交流があたたかいお話です。

 


◎作家プロフィール

山越 萌生
金沢美術工芸大学大学院 美術工芸研究科修了。フランス北部の都市ナンシー在住。

 


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◎仕様

こわくないもん『こわくないもん』
ぶん・え/そのだ えり
定価/726円(本体660円+税)
対象/幼児から
2011年4月20日発行

32Pペーパーバック製本
サイズ/幅148×高210mm
ISBN 978-4-905287-00-1

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◎概要

ある晩、チカちゃんはおしっこがしたくなって目を覚まします。でも、まだ小さなチカちゃんは夜のトイレにひとりで行きたくありません。
すると、いつも一緒に寝ている、ぬいぐるみのうさちゃんとくまちゃんが「いっしょにいこう」といいます。3人はそろって、真っ暗なろうかを歩き、トイレへ向かいますが──

 


◎作家プロフィール

そのだ えり
昭和女子大学で建築を学んだあと、東洋美術学校 グラフィック・デザイン科を卒業。2007年度「ボローニャ国際絵本原画展」入選。『ちいさなりすのエメラルド』(文溪堂)など。
▶ https://erie-sonoda.com/

 


◎試し読み

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7月下旬に紀伊国屋書店新宿南店の撤退が決まりました。
こういうニュースが流れると、「書店で本を買おう」とか「Amazonのせいだ」とか、まるで書店が予期せぬ力で潰されたかのような声を聞くことがあります。でも、それって本当でしょうか。

 


書店は減っているのではなく、より良く整理されている

 

確かに日本の書店はどんどん減っています。2003年からわずか10年で書店数が4分の3になったというのは、かなりインパクトがあります。

2016書店数推移

ところが、実際に店舗を持っている書店に限ってみれば、減少は15%に過ぎません。さらによく調べてみると、書店は一方的に潰れていっているわけではなく、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返しながら、大型書店へ集約されていっていることがわかります。(紀伊国屋書店新宿南店は大型書店ですが、新宿本店のみに絞るという意味での集約だと思います)

例えば、僕の家の近所に書店が2つ、ひとつは商店街の小さな本屋さん、ひとつは駅前の大型書店、がある場合、まず間違いなく大型書店に行きます。もう買うと決めている本を求めるにしても、思いもしない新たな出会いを求めるにしても、大型書店に行ったほうが確率が高いからです。

書店が取次を通じて本を仕入れる以上、そこで扱われる商品は全く同じものなので、量で勝負ができなくなった書店は淘汰される。今起きていることは単純明快、ごく当然の流れです。

 


書店が減っても10年前より不便になったとは思わない

 

そもそも、Amazonだって書店だということを忘れてはいけません。ネット書店があるからリアル書店が潰されるなんていうのは勝手な思い込みで、実際は読者にとっての「不」を抱えた書店がなくなっていっているだけ。だから、実感として10年前よりも本が手に入りにくくなった、と感じる人はほとんどいないはずです。

読者にとって価値のある書店は絶対に潰れません。今後も書店数は減って、1万店舗を割り込むことはあっても、必要以上になくなることはありません。読者はわざわざ「書店で本を買おう」なんて心配しなくて良くて、自分の好きなように本を求めれば、それにともなって世界が最適化していくと思います。

 


これから必要とされるのは本屋の個性

 

絵本には専門書店があります。そういう書店のオーナーは、僕のような編集者よりも遥かに知識が豊富です。だから、自分が売りたい本が明確で、決して受け身の仕入れをしません。オーナーの好きが詰まった棚は、読者にもちゃんと伝わるので、「絵本を買うならあの書店に行こう」となるわけです。むしろこじんまりとした、棚の隅々まで目が行き届くくらいの規模だからこそ、どんな大型書店にも、どんな人工知能にも負けない強みを発揮できるともいえます。

世の中には、わけあってエンブックスのように取次を通じた書店流通ができないけれど、クオリティの高い絵本もたくさんあります。取次まかせの受け身の仕入れではほとんど見つけることができない絵本も、オーナーさえその気になれば、出版社から直接注文をすることができる。そうやって自分の目で仕入れた絵本が並ぶ棚は、他のどんな書店とも違う、そこだけのとっておきです。

そういう意味では、今エンブックスの絵本を手に取ることのできる書店は、相当すごい目利きの書店員さんがいるということで、間違いなく生き残っていく書店だと思いますし、そういう書店が増えていけば、エンブックスにとっても読者にとってもうれしいことです。

リアル書店が大型化し、ネット書店が効率化を進めるなら、町の書店は個性でアプローチするしかありません。あの本屋さんは辞書に強い、あそこは歴史に関するものが豊富、医学系ならあのオーナーより詳しい人はいない……僕たちが行きたくなるのはそんな書店です。

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