編集長の読書感想文 『くっついた』でおなじみ 三浦太郎さんの『おうさまのこどもたち』が美しすぎる

『おうさまのこどもたち』

文・絵/三浦 太郎
定価/1540円(税込)
対象/3歳から
偕成社
2019年10月16日発行

 


ミリオンセラーを突破した『くっついた』でおなじみの三浦太郎さんの新刊絵本。
2000年以降に出版された絵本でミリオンを超えたのは片手で数えるくらいなので、誰もが認める大作家です。

圧倒的に美しい装丁から、配色へのこだわりを感じます。手触りもいい。ぱらぱらめくってみると特色(印刷代が高くなる特別インク……)もいたるところに。贅沢につくられた絵本だなあ。

王家に生まれた10人の子どもたち。成長してどんな王・女王になりたいか問われ、それぞれ、すし屋、サッカー選手、農家、保育士、アーティストなど、自分の好きな仕事で人々を幸せにしたいと考えます。さて、王さまのあとをついだのは……?

「ちいさなおうさま」3部作の完結編で、テーマは「多様性」でしょうか。こういう時代性に富んだテーマに人気作家が挑むことはすばらしいことだと思います。

ただ、テーマありきで考えすぎたんじゃないかという読後感。展開は単純なもので、お話にひねりや工夫があるわけでもないので、物語絵本としての楽しみはちょっと物足りない気がしました。

一方で、三浦さんの絵のチカラ。”絵を読む”子どもは存分にその世界を味わえると思います。繰り返し開くたびに発見がありそう。

そういう意味では、絵とお話のバランスってとても大事なんですよね。絵本は総合芸術だから。『くっついた』は、そのバランスが見事だと改めて。

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