『ぼくは犬や』
作/ペク・ヒナ
訳/長谷川 義史
定価/1540円(税込)
対象/幼児から
ブロンズ新社
2020年4月発行
私は子どものころから動物が大好きだったが、犬嫌いの兄がいたため犬を飼えなかった。
そんな私とは対照的に、夫は子どもの頃に、ムーという名前の白い雑種犬を飼っていたらしい。
ムーは人間に懐こうとせず、隙あらば人間を振り切って脱走しようとし、芸もほとんどしない犬だったそうだ。
しかし夫にとっては、悩み事を聞いてくれる大切な友達だったという。
今回『ぼくは犬や』の絵本を一番気に入ったのは、夫だった。
『ぼくは犬や』は韓国の作者が描いた絵本で、グズリという犬が主人公だ。
挿絵も絵ではなく、ファニーフェイスな人形たちの写真が使われている。日本語訳がなぜか関西弁なのだが、妙にマッチしているから不思議だ。
絵本のストーリーは、グズリとその飼い主の少年ドンドンとの日常の風景を切り取ったもの。ラストはちょっと切ないが心がほっこり温まる。
犬と人間の家族の泣き笑いの物語。ひとはぼくを「グスリ」とよぶんや。パンウリというおかあちゃんから4ばんめにうまれたんが、ぼくや。おっぱいからはなれたときに、ここにやってきた。おとうちゃん、おばあちゃん、ドンドン、近所に住むたくさんのきょうだいとグスリは今日も全力でつながります。『あめだま』のグスリとドンドン、ちいさい頃のおはなし。
犬を飼ったことのある夫に言わせれば、「本当にこんな感じ」なのだという。
ペットというよりお兄さんか友達と接しているような感覚だったらしい。
夫はムーと2人きりの時、誰にも言えない悩み事を相談していたという。
そんな時のムーは吠えたりせず、じっと聞いてくれ、話終わる頃にはなんだかスッキリした気持ちになったらしい。
確かにグズリもドンドンのことを下に見ているような感じなのだが、犬からすれば人間の子どもなんて弱っちく情けないものに見えているのかもしれない。
絵本を読みながらムーのことを思い出したのだろう、夫は長い間挿絵を見つめていた。
グズリとドンドンのように、夫とムーだけの世界があったのだろう。
飼いたくても許してもらえなかった私からすれば、羨ましくて仕方ない話だ。
ああ、やっぱり犬を飼ってみたい。
散歩など、体力がついていけるかどうか心配だが、犬とそんな関係を築けたらと思うとワクワクしてしまう。
いつか子ども達が手を離れたら、夫に相談してみよう。
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