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編集長の読書感想文 子どもにとって身近な公園が絵本の舞台になった『かもさん おとおり』

『かもさん おとおり』

文・絵/ロバート・マックロスキー
訳/渡辺 茂男
定価/1430円(税込)
対象/5、6歳から
福音館書店
1965年5月1日発行

 


『かもさん おとおり』がアメリカで出版された当時、ボストンに住んでいた子どもたちは、この絵本をどんなに楽しんだかを想像してうらやましく思います。

もちろん、この絵本が大好きな読者は日本にもたくさんいます。けれども、そのときチャールズ川の近くで実際に暮らしていた子どもたちの「好き」は、比べものにならないほど大きなものだったでしょう。

いつも遊びに行く公園のなじみの風景を舞台にして、物語がはじまる。うらやましいなあ!

かもの一家が、川から公園へ引越しです。かもたちは1列になって町の中を歩き出しました。さあ、たいへん! おまわりさんは自動車をとめて交通整理。パトカーまで出動です。

絵本というとなぜかファンタジーを思い浮かべる人は少なくありませんが、多くの優れた絵本は、なんてことのない日常を描いています。優れた絵本作家は、地に足をつけて子どもの目線で日常に楽しみを見つける天才です。

ボストンの人たちにとって、かもさん親子の引っ越しは特別なことではありません。でも、マックロスキーは「特別なこと」に気づきます。それは、かもさんの視点になってみること。

親子の愛も、サスペンス(ハラハラさせる感じ)もあるドラマチックな物語はこうして誕生し、今でもたくさんの子どもたちに読み継がれています。

自分の足元に転がっている種こそ宝。

西川季岐(編集長)

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