7月9日(土)に、東京大学で開催されたウェンディ・クーリングさんの講演会に参加してきました。
彼女が幼かった時は、まだそれほど本がなかった時代です。父は彼女を膝のうえに座らせ、新聞を読んでくれたそうです。内容はよくわからなかったけれど、彼女にとってその時間は「特別なもの」でした。
彼女は「ブックスタート」の活動を通じて、本を読むことを指導せず、ただ純粋に本を読むことの素晴らしさを伝えています。それができたのは「特別なもの」を知っていたからに違いありません。
読書は流れに身をまかせて
絵本から教訓を得ることを目的にするのはつまらないと思います。
絵本をパラパラとめくって選ぶ時に、わかりやすい教訓が描かれている本が良い本だと考えるなら、それは子どもにとってプレッシャーになっているかもしれません。
とかく親や先生は本について説明したがります。
でも、優れた絵本は(教科書に掲載されている作品もありますが)そもそも何かを教えるものとして描かれていませんし、楽しい物語を与えてやれば子どもは好奇心の赴くままに勝手に「学ぶ」ものです。 だから、本選びやそれを読むタイミングは、子どもの個性を尊重し流れに身をまかせるのが正解です。
いろんなことを感じて、自分で考える。この能動的な学びの積み重ねはテストの点数で測ることはできませんが、測ることができないことにこそ価値(=人生を豊かにする種)があるのだと思います。
この世界に生まれてきて、まだ何も経験しないうちから、大人が知っている今の社会の価値観で 「あれはダメ」とか「これはイイ」とか決めつけたところで、これからの未来がどこに向かうかなんてわかりません。
子どもが楽しんでいる本こそ良い本です。そして親にとって楽しいことも大事。
生まれてすぐに絵本を楽しめる赤ちゃん
絵本を読むのに早過ぎることはありません。赤ちゃんは声がわかります。もっというと、優しい声や良い声を聞き分けることができます。クーリングさんは生後2日の赤ちゃんにアヒルの絵本を読んであげたことがあるそうですが、(内容はわからなくて当然でも)アヒルの声をマネしてやるとよろこんだといいます。
絵本は時間も空間も自分の好きなように――赤ちゃんの思いもしない反応にあわせてページをめくったりとめたりしながら、世界を広げていくことができます。そこに本というメディアならではのおもしろさがありますし、やっぱり読者がいてはじめて絵本は「完成」するのだと思います。
寄り道のできない旅はつまらない
そして、お話を楽しむことと、本を読めるようになることは全く目的が違います。
学校の先生はその立場上、読書を「高速道路」と考えるので、だんだん難しい本を読めるようにしていきます。そして、読めるようになることをゴールに設定する人もいます。
でも、本を読むというのは田舎の小道を寄り道しながら歩くようなもので、その旅が終わることはありません。 これも流れに身をまかせるのが正解です。
ブックスタートについて
市区町村自治体が行う0歳児健診などの機会に、「絵本」と「赤ちゃんと絵本を楽しむ体験」をプレゼントする活動。 赤ちゃんと保護者が、絵本を介して、心ふれあう時間を持つきっかけを届けます。
▶NPOブックスタート
日時/7月9日(土)
会場/東京大学 伊藤謝恩ホール
住所/東京都文京区本郷7-3-1
時間/13:00~15:50
講演「すべての赤ちゃんに絵本を」
13:00~14:15/ウェンディ・クーリング
対談「赤ちゃんと絵本」
14:30~15:50/ウェンディ・クーリング × 佐々木宏子(鳴門教育大学名誉教授)