Author's Posts

実際に親子が触れ合うシーンを想像して

 

「なでて」という声掛けで、赤ちゃんがどれくらい反応してくれるかを検討していたとき、手に取った絵本『くだもの』(さく/平山和子 福音館書店)の見開きに「これだ!」という答えがありました。

『くだもの』では、まるで本物と見間違うような美しいりんごが描いてあって、ページをめくると「さあ どうぞ。」の声掛けとともに、カットされたりんごを差し出されます。
ポイントは、その「さあ どうぞ。」に描き添えられた「手」です。

手があることで、赤ちゃんも思わず自分の手を伸ばします。見開きにカットされたすいかの静物画だけでは、おそらくこういうコミュニケーションは生まれないんですよね。

それに気が付いて、今作の見開きにも手を入れてみたら、「なでて」の声掛けが、とたんに活き活きと聞こえてきます。
絵本の中の動物たちとコミュニケーションできるようになりました。

raf3
▲導入は身近なねこが登場(スケッチ)。正面性を意識した構図と耳ざわりのいい言葉で惹きつける

raf32
▲赤ちゃんの手を描き添えたことで反応しやすく。位置や大きさを検討しながらスケッチを繰り返す

絵本の仮タイトルは『なでて なでて』です。
仮とはいえ、ほとんど確定です。それは、この絵本を通じて実現したいことが「実際に親子が触れ合うきっかけをつくる」ことだから。
単にいろんな動物の感触が楽しい絵本なら、例えば『ふわふわ』といったタイトルでも良いんですよね。

でも、今作のゴールはもっと先にある親子の触れ合いです。
ページをめくったときの親子のシーンを想像しながら、そこにたどり着くように作品を磨いているところです。

今作は、閉じた後が「山場」ともいえますよ。

 


▶ 続きを読む

Read more

目次

  1. 赤ちゃんが感触を体感できるような
  2. 「なでて」の声掛けでページをめくる仕掛け
  3. 親子がスキンシップしたくなるシーンの実現

 


好奇心いっぱいの赤ちゃんが思わず触りたくなる絵本を

 

「親子で一緒に楽しめる」ことを基本的な考えとして、日隈さんとの絵本づくりで導き出したテーマは「さわる」です。
動物から「なでて」と声掛けがあり、ページをめくって、なでてあげると動物がうれしそうにしている。「いないいない」「ばあ」と同じ、1.2のリズムで繰り返す定番の展開です。

「さわる」を楽しんでもらうために、まずはいろんな「感触」を洗い出すところからはじめました。
ふわふわ、ふさふさ、すべすべ、さらさら、ざらざら、かさかさ、ごつごつ、ごりごり、かちかち、つるつる、ぬるぬる、べたべた、ふにゃふにゃ……
「今だったら『もふもふ』も、おもしろい表現ですよね」とか言ったりして。

次に、その「感触」にあてはまる動物をピックアップしていきました。
ふさふさといえば、ライオンのたてがみ。ごつごつといえば、やっぱりわにが代表選手です。ふわふわなのは、アルパカ。
「アルパカって今っぽいけど、赤ちゃん絵本に登場するには、もうちょっと身近な動物のほうが良いかも」
「ぶたも描いてみたいけど、どんな感触だっけ」。

rp_raf1.jpg
▲初期のアイデアスケッチから。最初の見開きで「なでて」と声をかけてくる動物

raf2
▲ページをめくると、なでてもらってうれしそうな動物が。いろんな「感触」が楽しい

赤ちゃん絵本は基本的に24ページです。見開きでいうと11見開き。
1.2のリズムで登場できる動物はわずかに5種類です。魅力的な動物を並べてみて、候補を絞り込む作業は大変です(現在進行形)。

絞り込むときのポイントは、感触のバリエーションと、もうひとつ。
バリエーションで見せるだけでも、十分に楽しい赤ちゃん絵本になりますが、今作では「親子で一緒に楽しめる」ためのとっておきの仕掛けを考えました。そのアイデアについては、今はまだお披露目できませんが、ライオンは残念ながら落選です。

 


▶ 続きを読む

Read more

働き方や育休の取得方法、父親の育児参加に対する意識が変わりつつあるなかで、親子の時間を最大化できるのは、乳幼児期の0.1.2歳。
エンブックスでは、そんな今こそ「親子で一緒に楽しめる」をコンセプトにした赤ちゃん絵本をお届けするため、予約購入という形でクラウドファンディングを開始します。

今回のプロジェクトでは2作品が同時進行、夏頃の出版を目指します。
創作をご一緒する作家は2016年度「ボローニャ国際絵本原画展」入選作家のmiyauniさんと、2012年度「ピンポイント絵本コンペ」で最優秀賞を受賞した日隈みさきさんです。
いずれも親子のコミュニケーションを促す楽しい仕掛けを盛り込む予定です。

目標金額の80万円は印刷・製本代として活用させていただきます。絵本の販売予定価格1200円から支援をすることができます。

昨年からコツコツと準備を進めてきた赤ちゃん絵本プロジェクトがついに始動します。夏頃の出版に向けて、たくさんの応援をどうぞよろしくお願いいたします!

 


▶赤ちゃん絵本プロジェクト


期間:7月24日23:59まで

Read more

◎仕様

こんなこみつけた『こんなこみつけた』
ぶん・え/加藤 麻希
定価/2750円(本体2500円+税)
対象/幼児から
2014年4月20日発行

32Pハードカバー製本(カバーなし)
サイズ/幅200×高264mm
ISBN 978-4-905287-12-4

*この絵本は受注生産でお届けします

エンブックスで買う


◎概要

おもちゃ職人が10匹の「くまのこ」のぬいぐるみを作り終えた夜、誰もいなくなったアトリエで「くまのこ」たちは突然命を宿します。
登場するキャラクターはいずれも愛らしく、色やカタチ、性格までまさに十人十色。たった一晩の遊びを通して、彼らの「個性」が魅力的に、良し悪しなく描かれます。
「個性」とは決して特別なものではなく、みんなが当たり前に持っているものだと改めて気がつく優しい作品です。

 


◎作家プロフィール

加藤 麻希
2009年、東京造形大学 美術学部 絵画専攻 卒業。エッチング技法を用いた平面的構成の表現を得意としている。

 


konnako2

konnako3

konnako4

konnako5

konnako6

konnako7

Read more

◎仕様

まーくんとむしのこえ『まーくんとむしのこえ』
ぶん・え/日隈 みさき
定価/2750円(本体2500円+税)
対象/幼児から
2015年6月20日発行

32Pハードカバー製本(カバーなし)
サイズ/幅200×高264mm
ISBN 978-4-905287-20-9

*この絵本は受注生産でお届けします

エンブックスで買う


◎概要

昆虫図鑑を手に、庭の虫を観察することがマイブームの男の子まーくん。
偶然、シジュウカラに食べられかけた青虫を助けたことで、「虫の国」へと案内されます。実は、王子だったあおむしの計らいで、まーくんはあっというまに虫の国のヒーローに。王女さまからも、たいへん感謝され、まーくんは立派な会場で開催される「音楽会」に招待されます。
披露された歌には、不思議と聞き覚えが? 本を閉じた後、本当の虫の声に耳を傾け、その意味を確かめたくなるでしょう。

 


◎作家プロフィール

日隈みさき
1986年、三重県四日市市生まれ。2012年度「ピンポイント絵本コンペ」で最優秀賞を受賞した後、『ともだちや』などでお馴染みの童話作家・内田麟太郎さん作『ゴリラでたまご』でデビュー。赤ちゃん絵本『なでてなでて』『こちょこちょこちょ』はいずれもエンブックス発行。
▶ https://www.hinokumamisaki.com/

 


ma-kun02

ma-kun03

ma-kun04

ma-kun05

ma-kun06

ma-kun07

Read more

◎仕様

トトとココのパーティー『トトとココのパーティー』
ぶん・え/とね さとえ
定価/2750円(本体2500円+税)
対象/幼児から
2013年6月20日発行

32Pハードカバー製本(カバーなし)
サイズ/幅200×高264mm
ISBN 978-4-905287-24-7

*この絵本は受注生産でお届けします

エンブックスで買う


◎概要

ようやくやんだ長い雨がうれしくて、パーティーを計画する小さな猫のトトとココ。友だちを呼んで、ごちそうもたくさん作って、あと少しで準備完了——だったのに、おっちょこちょいのトトが大失敗をしてしまいます。
そこへ、招待された友だちがぞくぞくとやってくるのですが、さてパーティーはちゃんと始まるのでしょうか? ヨーロッパを拠点に世界で活躍する刀根里衣の日本デビュー作品。

 


◎作家プロフィール

刀根 里衣
1984年、福井県生まれ。2007年、京都精華大学デザイン学部ビジュアルコミュニケーション学科卒業。イタリア・ミラノを拠点に創作活動を行い、2013年に『ぴっぽのたび』(NHK出版より2014年11月発行)で「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」SM国際出版賞を受賞。

 


totococo2

totococo3

totococo4

totococo5

totococo6

totococo7

Read more

◎仕様

おいしいものいっぱい『おいしいものいっぱい』
ぶん・え/かがや かなこ
定価/2750円(本体2500円+税)
対象/幼児から
2014年10月20日発行

32Pハードカバー製本(カバーなし)
サイズ/幅200×高264mm
ISBN 978-4-905287-16-2

*この絵本は受注生産でお届けします

エンブックスで買う


◎概要

おいしいものをいろいろ食べるために「おおきなからだになりたい」女の子と、大好物をたくさん食べるために「ちいさくなりたい」オオカミ。
そんなふたりの夢が、ある朝とつぜん叶います。よろこんだふたりは、とびきりの朝食を用意して「しあわせ!」な気分になります。
ところが、食べれば食べるほど嬉しい気分が離れていくみたい。子どもも、大人も、一度は見たことがあるだろう夢を通じて、しあわせが案外身近にあることに気づきます。

 


◎作家プロフィール

加賀谷奏子
秋田県出身。2009年、秋田公立美術工芸短期大学卒業。在学中の2008年に「タリーズ ピクチャーブックアワード」入選。卒業制作展では優秀賞を受賞。2011年には武蔵野美術大学を卒業し、イラストレーターに。2014年に「ボローニャ国際絵本原画展」に入選。
▶ http://kagayakanako.com/

 


oishii2

oishii3

oishii4

oishii5

oishii6

oishii7

Read more

◎仕様

ジャンプ!『ジャンプ!』
ぶん・え/なかの 真実
定価/2750円(本体2500円+税)
対象/幼児から
2013年11月20日発行

32Pハードカバー製本(カバーなし)
サイズ/幅200×高264mm
ISBN 978-4-905287-08-7

*この絵本は受注生産でお届けします

エンブックスで買う


◎概要

冬が近づくと北極海から南の海へ、数千キロメートルを移動するザトウクジラ。その生態の真に迫った「かがく絵本」であり、同時に雄大な「物語絵本」でもあります。
作品を開いた子どもたちは、まず圧倒的な描写力におどろくに違いありません。そして、無数の緻密な線で描かれたモノクロの世界に、好奇心と想像力をかきたてられてページをめくることになるでしょう。

 


◎作家プロフィール

なかの 真実
1984年、神奈川県生まれ。2007年に武蔵野美術大学 造形学部 視覚伝達デザイン学科卒業。ミリペンで動植物の細密画を中心に制作。書籍の表紙や挿絵などを手がける。福音館書店発行の大型図鑑絵本「いきものづくし ものづくし 4」では「しろくろのいきもの」を担当。
▶http://nakanomami.net/

 


jump2

jump3

jump4

jump5

jump6

jump7

Read more

ちょうど僕が就職活動をしていた時代、入社試験に「だんご3兄弟について述べよ」という問題があったことを鮮明に覚えています。それくらい「だんご3兄弟」は大ブームを起こしました。

それを仕掛けたのが佐藤雅彦さんで、僕の最も尊敬するクリエイターのひとりです。
名前は知らなくても、湖池屋の「ポリンキー」やNECの「バザールでござーる」のテレビコマーシャルを記憶している人は多いと思いますし、あるいはソニーから発売されたパズルゲーム「I.Q」にハマった人、NHKの「ピタゴラスイッチ」に釘付けになった人は、みんな佐藤さんのクリエイティブを楽しんだことのある人です。

その佐藤さんが2013年に紫綬褒章を授与された際のインタビューは、今でもときどき振り返ってみています。ずっと表現に関わってきたトップランナーの言葉は、貴重な先人の知恵です。

人類の歴史で、これほど簡単に誰でも先人の知恵を共有できたことはありません。そのため、知っていることの優位性は薄れますが、圧倒的に高いステージから創作をスタートできることは幸運な時代だと思います。

 


 

(以下、インタビューより抜粋)

ジャンプをするために大切なのは、うまく待つことと、ものすごく研究すること

表現を解釈する人、テレビだったら視聴者、書籍だったら読者は鑑賞者としてプロだと思っています。
受け取る人にとって、「あ、これは新しい分かり方だ」ということがないと、その表現を認めてもらえません。いつもそこで何らかのジャンプが行われなくちゃいけません。過去の表現を流用したりすると軽く見抜かれてしまいます。
やったことがなくて、やられたことがなくて、まだ言語化されてないけれど「これは面白いんじゃないか」というものを見つけること。ジャンプしたあかつきには言語化できます。大切なのは、うまく待つことと、ものすごく研究することだと思います。

 


作り方をつくる。自分の「表現方法論」をつくって具体的にする

コマーシャルを作っていた時期は、作り方をつくっていました。
自分の表現方法論を作っては、それを具体的に、例えばトヨタ自動車から「カローラⅡ」の依頼がきたら「映像は音から作る」という方法論で「カローラⅡに乗って♪」と小沢健二が歌ったら、すごくカローラⅡのブランドが上がるとか。
NECから店頭フェアのCMをやりたいと言われた時、いいネーミングがないという時は「濁音時代」という方法論がありました。「ダースベイダー」「午後の紅茶」とか濁音がやけに強いという方法論ですが、そのときに「バザールでござーる」や「だんご3兄弟」など「濁音時代」での方法論で作りました。
その時から表現方法論を作っては試していました。何百本も作った後に自分はこの表現方法を作りたかったんだということが分かりました。

 


新しいものを作るとき、作り方が新しければおのずとできたものも新しい

新しいものを作るとき、作り方が新しければ自ずとできたものも新しいということを教えています。
みんなに言っているのは、作り方を作るということです。いきなりマニュアルを教わって作るというやり方もあるが、そうではなくて作り方を作る。
テレビコマーシャルの作り方を「音から作る」とか、それまでの作り方をちょっと変えたんです。そうすると、みんな「なんか違うぞ」と思う。表現を目指している人たちではなく、新しい製品や新しい事業を作る人にもそう大学で教えています。自分の作り方ってすごく自分のオリジナルがそこに入ります。

 


子ども時代に何かに熱中したことがある人は本当の面白さを知っている

小さいころ虫も魚も、遊びも自分で作ってものすごく夢中になっていました。
「study」だと勉強と訳すが、その語源はラテン語の「studious」で夢中になる、熱中する状態のことです。「studious」になることを覚えた子どもだったら、将来表現をやろうと、研究をやろうと、物を作る人になろうと集中の仕方がわかっているので自分のやりたいことに到達できます。
一番いけないのは体裁だけを整えて「こっちのほうが見映えがいい」とか表面だけのことを覚えて取り繕うことだけが巧みになると。
一度熱中した経験がある子は何が本当に面白いのか分かります。「これが面白いですよ」とかいっぱい情報がありますが、そのときに大事なのは自分の考え、自分の意見です。「なんだつまんないじゃないか」とか「なんか世の中間違っているな」と思ってもいいと思います。

 


考えの整頓『ベンチの足』

定価/1980円(税込)
暮しの手帖社

 


『考えの整頓』

定価/1760円(税込)
暮しの手帖社

 


『新しい分かり方』

定価/2090円(税込)
中央公論新社

 


『このあいだに なにがあった?』

定価/990円(税込)
福音館書店

 


『なにかがいる』

定価/990円(税込)
福音館書店

 


『中を そうぞうしてみよ』

定価/990円(税込)
福音館書店

 


『コんガらガっち どっちにすすむ? の本 』

定価/1320円(税込)
小学館

 


『もぐらバス』

定価/1100円(税込)
偕成社

Read more