自分で考えることの大切さを教えてくれた絵本画家 安野光雅の絵本 14選

安野光雅さんの絵にはユーモアが散りばめられています。
知的で、上品なその企みに、まんまと吸い寄せられて、気がつけば微笑ましい気持ちで絵の世界に没頭していた……そんな経験をさせてくれる安野さんの絵が大好きです。
「小さなノーベル賞」とも呼ばれる「国際アンデルセン賞」画家賞を受賞された世界的画家です。

1926年、島根県津和野町生まれ。戦争の「イヤな時代」を経て、小学校で美術の先生となったことが、安野さんの絵描きのスタートになりますが、「先生」としての視点・振る舞いは、その後絵本作家になってからも作品づくりを通じて常に持っていらしたんじゃないかと思います。

安野さんの絵本には、いわゆるお勉強を題材にした作品が多くありますが、難しいことを子どもに楽しく簡単に教える独創的なアイデアは、まさに先生のそれです。どれも楽しんでいるうちに「自分で考えるくせがつく」ようになっています。

実は福音館書店 創業者の松居直さんのお子さんが、安野さんの教え子だったそうで、子どもの可能性を引き出す安野さんの教え方に「きっと面白い本を作ってくれる」と確信していたそうです。その福音館書店から多くの名作絵本が出版されますが、なんというめぐり合わせでしょう。偶然なのか、必然なのか、とてもおもしろいエピソードです。

 


『ふしぎなえ』

定価/990円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1971年3月1日発行

階段をあがると上の階へ、またあがると、あれあれ、もとの階にもどっています。迷路に入っていくと、いつのまにか天地がさかさまに。蛇口から流れ出した水は川となってまた水道に循環し、高架道路は地面と同じ高さに……。絵の中だけに存在する不思議な世界に、小人の案内で導かれます。世界的に人気を獲得した絵本作家・安野光雅のデビュー作です。

 


『かぞえてみよう』

定価/1760円(税込)
対象/幼児から
講談社
1975年11月19日発行

楽しみながら数の知識が身につく絵本。美しい田園風景を描きながら、はじめて数に出会う子どものために、数字を楽しく見せてくれる絵本。講談社出版文化賞絵本賞など数々の賞に輝く傑作です。

 


『あいうえおの本』

定価/1650円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1976年2月20日発行

「あ」はあんぱん、「い」はいえ……、左ページにはひらがなが、そして右ページにはその文字で始まるものの絵が、1見開きごとに描かれます。木で組み立てられ、木目まで美しく描かれたひらがなの文字と、どこかなつかしい日本の伝統的な形の絵がみごとに結びつきます。さらに、ページのまわりには文字に関連した飾りも描かれ、その中にも絵が隠れています。字を覚えるためではなく、ことばの美しさを感じることのできる1冊です。

 


『旅の絵本』

定価/1540円(税込)
対象/5、6歳から
福音館書店
1977年4月15日発行

中部ヨーロッパの自然や街並みを背景に、克明繊細な筆使いで旅の楽しさを描きだした絵ばかりの絵本。世界各国の子どもたちが喜んでいる、心おどる絵本です。

 


『天動説の本』

定価/1650円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1979年8月5日発行

地球が全宇宙の中心だと信じていたころの人びとが考えていた世界とは、いったいどんな世界だったのでしょう? 中世然とした作りの、ユニークな科学絵本。

 


『にほんご』

編/大岡 信、谷川 俊太郎、松居 直
定価/1650円(税込)
対象/5、6歳から
福音館書店
1979年11月30日発行

小学校1年の国語教科書を、自由に、独創的に構想した作業の中から生みだされた、ことばの本のベストセラー。ことばの世界のおもしろさ、深さ、広がりへと子どもたちの目を開かせます。

 


『もりのえほん』

定価/990円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1981年2月25日発行

森の風景に、なにやらいそう。目を凝らして見ると、あっ、ここに! そして、こっちに! 森の中には130あまりの動物がかくされています。でも、すぐさまわかるわけではありません。じーっと見つめていると、だんだんわかってくるのです。枝と枝がからまっているのが獣のように見えたり、樹木の肌が人の横顔のように見えたり。繰り返し見るたびに違った景色が立ち現れ、いろいろなものを発見し、想像がふくらみます。さあ、かくし絵の森を散策しよう。

 


『さかさま』

定価/990円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1981年4月30日発行

トランプのジョーカーがトランプの国をご案内。トランプの国では、どちらが上でどちらが下かわからないことばかり。トランプの兵隊たちは、「きみたちはさかさまだ」「きみたちこそさかさまだ」と何百年も前からけんかしているのです。4人(8人?)の王様たちも大弱り……。そんな「へんだ、だんへ」な国を安野光雅が、見えるままに描きます。

 


『ふしぎなさーかす』

定価/990円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1981年4月30日発行

真夜中の12時。机の上で小人たちによるサーカスが始まります。まずはコップの太鼓、スプーンのバイオリン、マッチ棒のフルートなどの楽団が登場。そしてペン先のジャグリング、風船の玉乗り、書き割りの絵から現れるライオン……。やがて朝になると、小人の姿は消えたけれど……。さまざまな絵遊びが繰り出されます。

 


『10人のゆかいなひっこし』

定価/1815円(税込)
対象/幼児から
童話屋
1981年10月1日発行

絵本を開くと、左ページに家があって、こどもが10人います。右ページには別の家の外面があって、こどもたちは左の家から右の家にひっこしていきます。ページをめくれば、引っ越し先の家のなか。なんにんひっこししたのかな? 家の外面の絵の窓は、実際5つが開いていて(穴あきです)、こどもたちがのぞいたりかくれたり。さて、ここにぜんぶでなんにんいるのかな? と、いくつもの引き算と足し算をすることができます。

 


『はじめてであう すうがくの絵本1』

定価/1760円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1982年11月20日発行

発見の喜び、創造の楽しさに満ちた数学の本と、すでに定評のあった作品を再編集し、新しい体裁でおとどけします。第1巻《なかまはずれ》《ふしぎなのり》《じゅんばん》《せいくらべ》

 


『蚤の市』

定価/1815円(税込)
対象/幼児から
童話屋
1983年10月1日発行

1957年のフランス映画、ルネ・クレール監督「リラの門」の一場面がモデルです。はじめの頁には、荷車を引く老夫婦。城門には時計があって、朝の5時。次の頁からは、蚤の市の始まりです。ローソク売りや古い大工道具売り、旧式カメラやタイプライターを売る屋台が並びます。野菜や果物の店も軒を連ねています。文字のない絵本ですが、絵の細部を追っていくだけで自然と物語が生まれてきます。

 


『もじあそび』

定価/990円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
1993年3月15日発行

じを組み合わせて、いろいろなことばをつくったり、組み合わせを変えて、ちがうことばをつくったり、もじのパズルを楽しんだり……。とびきりおもしろいひらがなの絵本です。

 


『しりとり』

定価/990円(税込)
対象/4歳から
福音館書店
2021年2月5日発行

あさひ、ひしもち、ちからこぶ……ページをめくって絵をたどり、しりとりで遊びましょう。おしりが「ん」になったらおしまいです。あれ、最後のページまで読んでも「ん」にならない? そんなひとは、最初のページに戻ると続きが始まりますよ。何度もくりかえし遊べて、美しい絵が目にも楽しい、安野光雅流のしりとり絵本です。

西川季岐(編集長)

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