―はるのさんは京都芸大で型染めを専攻されていたそうですね。
高校生の時、進路を選ぶ段階で、いつか絵本を描く人になりたい、とは既に思っていて。
―ああ、もう高校生の頃から絵本が将来の軸にあったんですね。
デザイン科にするか工芸科にするかで迷った時に、人とちょっと違う技術を持っていたほうが、絵本を作る時に面白いんじゃないかと思い、工芸科を選びました。
とは言っても、1年生は総合基礎と言って、どの専攻の子も合同クラスで共通課題をやって、2年生では工芸基礎で、染織以外にも、漆や陶芸などもやって、3年生でようやくコースが分かれたと思います。ちょっと記憶が曖昧になってますが……(笑)
課題では、一反の布を型染めして浴衣を手縫いで作る、みたいな、いかにも“京都どすえ”的なものもありましたが、それとは関係なく、型染めで絵本を作って提出したり、絵本のグループ展や公募に出したりしていました。
卒業制作も絵本でした。当時は人と話すこともすごく苦手で、自分で好き勝手にやっているし、何日も家にこもって制作して学校に行かなかったりで、全然パッとしない学生だったと思います(笑)。周りの子達がすごすぎて、ずっとコンプレックスだらけでした。
―それでも絵本に対する思いは強くて、ご結婚された後もさらにロンドン芸術大学で学ばれたんですよね。
イギリスは、1年ちょっとロンドンにいたんですが、ual(university of the arts London、ロンドン芸術大学)付属の語学学校で英語を学んでいました。
けれど、せっかく「ピーターラビット」や「アリス」を始め、たくさんの大好きな物語のある国に来たのだからということと、学校の授業だけでは物足りなくなってきて、ロンドン市立大学(city university London)のwriting for childrenという、3ヶ月のショートコースに夜間で通い始めました。
作/ビアトリクス・ポター
訳/いしい ももこ
作/ルイス・キャロル
訳/河合 祥一郎
ここは、本を出版している作家の先生が講師で、絵本からヤングアダルトまで、幅広いジャンルの子供向けの本について学べるクラスでした。先生もイギリス人だし、来ている人もほとんどがネイティヴスピーカーだったので、学校の友人と、第二外国語としての英語でやりとりしているのとでは、スピードや言い回しが違って、ディスカッションがある時に自分の意見を言うのにとても苦労しました。
最後の授業は、自分が書いてきた物語を、先生が添削して個別面談してくれるというもので、その時に描いた物語の1つを、今も何度も練り直している感じです。
そのコースが終了後、今度はCentral Saint Martins(ロンドン芸術大学の1つ)のChildren’s book illustration コースに3ヶ月、夜間で通い始めました。こちらは文章ではなく、絵がメインのコースです。絵本を出版されている先生が、絵を描く技法などについて幅広く教えてくれるものです。
特に面白かったのは、粘土で立体造形を作って、それを動かしてポーズを確認しながら、短い絵コンテを考える、という授業でした。絵本の主人公を立体化してみると、絵を描くにしても、設定や動きにリアリティと説得力が出てくるな、と思いました。
―「文」と「絵」のそれぞれを別の大学で学んでこられたんですね。
日本では、絵を学ぶ学校はたくさんあっても、物語の作り方を学べる場所はぱっと思いつきません。ディスカッションを活発に行うには、それだけ「伝えたいこと」がないといけないわけで、作家のたまごたちは鍛えられそうです。
学校に通っている間も、出版社が企画した‘How to write children books’イベントとか、絵本の関連イベントを見つけては、ちょいちょい足を運んでいました。本屋さんもたくさん巡りましたね。絵本の1ポンドショップなんてのも見つけて、大人買いしたり(笑)
本当はアングリア.ラスキン大学(Children’s book illustrationコースがある大学)に入学して、しっかり絵本について学びたいのですが、学費が高くて、ちょっと今の自分には現実的ではないかな……
けれど、わたしの帰国直前に、語学学校で友達になった子がその大学院への入学が決まったので、その時に遊びに行かせてもらって、教室の中に入らせてもらい、雰囲気だけはちょっと味わってきましたよ(笑)
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