2016.01.12

『パンはころころ』

作/マーシャ・ブラウン
訳/八木田 宜子
定価/1320円(税込)
対象/幼児から
冨山房
1976年12月発行

 


窓のふちで冷ましていたパンが「とつぜんころころころがりだした」ところから物語は急展開します。

ふとしたきっかけで主人公の冒険がはじまり、繰り返し訪れる危機をうまくかわしていく展開は、定番の「型」ではあるものの、パンの主人公が新鮮。

印象的なのは素朴な色使いで、ロシアのつつましい暮らしを、緑・橙・茶のたった3色で見事に表現しています。表紙に描かれたきつねの橙とあわせた見返しの橙で、クラクラするように物語の世界へ誘われると、ころころ転がるパンと同じく軽快なリズムの言葉にのせられ一気に最後まで。

パンがころころ転がって、広い世間に出ていきます。途中で、ノウサギやオオカミやヒグマにねらわれますが、知恵があるのでだいじょうぶ。ところが得意になって、キツネに自慢の歌を聞かせようとしたとたん……。

パンが冒険の途中で出会って食べられそうになる、うさぎ、おおかみ、くまの並びも、これまた心地よいリズムを刻む工夫でありながら、同時にだんだん大きくなっていく動物たちの登場シーンが子どもたちの冒険心を盛り上げてくれます。

そこへきて、最後に登場するきつねは、くまよりも小さいために「おや」と思うのです。この裏切りが良くて、展開に変化を与え、きつねの曲者ぶりが際立ちます。

それにしても、きつねというのはロシアでも曲者キャラクターの扱いなんですね。おおかみよりも、というのも興味深いです。

お話の最後にパンがどうなったのかはぜひ手にとって開いて確かめてみてください。これはこれでハッピーエンドだと僕は思います。

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幼児向け絵本の出版社エンブックス(本社:東京都豊島区、代表:西川季岐) の公式サイトが、2016年1月12日(火)より全面リニューアル。ECサイトから絵本に特化したバーティカルメディアとして生まれ変わりました。

 


◎背景

メディアのトレンドはバーティカル(領域特化型)に

 

2012年頃から情報収集が「検索」から「キュレーション」へ移り、「SmartNews」や「グノシー」をはじめ、ニュースキュレ―ションが躍進しました。2015年には、インテリア、ファッション、旅行、外食など、ひとつの領域に特化したバーティカルメディアがトレンドになり、引き続き注目されています。今後は、優れたオリジナルコンテンツ(一次情報)をキュレーションできることがメディアの価値になることが予想され、そうした背景をもとに、エンブックスもECサイトから絵本に特化したバーティカルメディアへと転換を図ります。これまで以上に絵本を楽しめるよう、子育て中のパパママにとって有意義な情報とともにお届けしていく予定です。

 


◎概要

「買いもの」と「読みもの」の2つの柱で構成する新メディア

 

買いもの(ストック・コンテンツ)
引き続き絵本の出版・販売をメインに、作家のオリジナルグッズなど、エンブックスならではの商品ラインナップを拡大し、絵本以外の販売をスタート

読みもの(フロー・コンテンツ)
絵本に関するニュース・トピックスや書評といったお役立ち情報の他、絵本作家の創作にまつわるエピソードや展覧会のレポートなど、読み応えのある記事を掲載

 


◎今後の展開

寄稿やグッズ販売で楽しく参加できる場に

 

創作絵本はもちろん、これから掲載される記事も、全てオリジナルであること大前提に、価値のあるコンテンツを充実させていきたいと考えています。また、絵本作家にとっては発信の場に、一般読者にとってはコミュニケーションの場になるように、寄稿やグッズ販売も幅広く募集していきます。

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