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『おにぎりをつくる』

文/高山 なおみ
写真/長野 陽一
定価/1320円(税込)
対象/幼児から
ブロンズ新社
2020年1月発行

 


「今からおにぎり作る!」

この絵本『おにぎりをつくる』を手に取った時から、絶対言われると思っていたセリフ。
案の定、読み終わった瞬間にこう言われた。

よういするのは、お米とお塩とお水だけ。留守番しているこどもたちにも、忙しいお母さんにも、おにぎりはいちばんの味方。5歳でも作れる、ほっかほかの提案です。

長女は赤ちゃんの頃からおにぎりが大好物である。
特に海苔を巻いた塩むすびが好きで、こちらが止めるまで食べ続けてしまうくらいだ。

長女は結構飽きやすく、料理をやりたがる割にはすぐに飽きてしまうことが多いのだが、予想に反して、ずっと楽しそうに作ってくれた。

お米をつんつん触っては「あついねー!」
塩を手につけては「しょっぱい!」(なめてないのに……)
お米を握っては「ぎゅーー!」

もうおしゃべりが止まらない。

この絵本は小さな子どもが一人でおにぎりを握れるよう、大きなひらがなでレシピが描かれていたり、実際に子どもが握っている手の写真が使われていたりする。
つまり、この絵本を読めば自然とおにぎりが作れるようになっているのだ。

長女が大量に握った塩むすびはこの日の昼食と夕食に並んだ。
たくさんの小さなおにぎりがお皿にコロコロ並んでいて、なんとも可愛らしい。

「私が握ったのよ!」と、パパや次女に自慢しながらどんどん食べていく長女を見て、当分の間『おにぎりをつくる』ブームが続くことを覚悟した。

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『おかあさんがおかあさんになった日』

作/長野 ヒデ子
定価/1430円(税込)
対象/幼児から
童心社
1993年7月15日発行

 


「赤ちゃんだからできない! ママやって!」

最近、3歳長女の赤ちゃん返りがひどい。すぐ「できない!」と泣きわめく。
そんな時、こちらも忙しいとつい
「1人でやりなさい! 赤ちゃんじゃないんだから」
と言ってしまうことがある。

叱られると、長女は目に涙をいっぱいためて黙るくせがある。
そんな様子を見ると心が痛むのだが、毎回優しく付き合ってあげられるわけではないのだ。

長女が1歳くらいの頃から、わが家では寝る前に絵本を一冊読むのが日課だ。
赤ちゃん返りをした日の長女はよく『おかあさんがおかあさんになった日』という絵本を持ってくる。

おかあさんは期待と不安の中、はじめて赤ちゃんを生んだ日、おかあさんに。

臨月を迎えた1人のお母さんが、赤ちゃんを生むために入院するところから話が始まる。
お母さんは「赤ちゃんに早く会いたいなあ」とわくわくしながら病院の中を散歩する。やがて陣痛が始まり、とうとう赤ちゃんに会える瞬間が近づいて……。

子どもは皆、自分が赤ちゃんの頃の話を聞きたがる。自分が愛されていることを実感できるからだ。長女ももちろんそれを聞きたくてと思っていたが、この日は違うことを言ったのだ。

「次女ちゃんが生まれた時も喜んだ?」

わが家には、もうすぐ1歳になる次女がいる。
長女は、いつもヨチヨチ後をついてくる次女が煩わしいのか、よく「来ないで!」と怒っている。本当は次女のことが嫌いなのではと気になっていた。

長女はまだ3歳。甘えたい気持ちもたくさん持っているだろう。
長女はきっと、「赤ちゃん」の次女と、「赤ちゃんではない」自分を分かっている。
彼女は少しずつだけど、確かにお姉ちゃんになりつつある。

絵本を読み終わった頃には長女は寝ていた。

長女はいつも、私のひざやお尻にしがみついて寝る。
なぜなら、私が次女を抱いているせいで彼女の方を向けないからだ。でも長女から「私も抱っこして」と文句を言われたことは一度もない。
私は絵本を閉じて長女を抱きしめた。

あなたが生まれてくれたから、私はお母さんになれたんだよ。
優しいお姉ちゃん、生まれてきてくれて、本当にありがとう。

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『ぼくは犬や』

作/ペク・ヒナ
訳/長谷川 義史
定価/1540円(税込)
対象/幼児から
ブロンズ新社
2020年4月発行

 


私は子どものころから動物が大好きだったが、犬嫌いの兄がいたため犬を飼えなかった。
そんな私とは対照的に、夫は子どもの頃に、ムーという名前の白い雑種犬を飼っていたらしい。

ムーは人間に懐こうとせず、隙あらば人間を振り切って脱走しようとし、芸もほとんどしない犬だったそうだ。
しかし夫にとっては、悩み事を聞いてくれる大切な友達だったという。

今回『ぼくは犬や』の絵本を一番気に入ったのは、夫だった。

『ぼくは犬や』は韓国の作者が描いた絵本で、グズリという犬が主人公だ。
挿絵も絵ではなく、ファニーフェイスな人形たちの写真が使われている。日本語訳がなぜか関西弁なのだが、妙にマッチしているから不思議だ。
絵本のストーリーは、グズリとその飼い主の少年ドンドンとの日常の風景を切り取ったもの。ラストはちょっと切ないが心がほっこり温まる。

犬と人間の家族の泣き笑いの物語。ひとはぼくを「グスリ」とよぶんや。パンウリというおかあちゃんから4ばんめにうまれたんが、ぼくや。おっぱいからはなれたときに、ここにやってきた。おとうちゃん、おばあちゃん、ドンドン、近所に住むたくさんのきょうだいとグスリは今日も全力でつながります。『あめだま』のグスリとドンドン、ちいさい頃のおはなし。

犬を飼ったことのある夫に言わせれば、「本当にこんな感じ」なのだという。
ペットというよりお兄さんか友達と接しているような感覚だったらしい。

夫はムーと2人きりの時、誰にも言えない悩み事を相談していたという。
そんな時のムーは吠えたりせず、じっと聞いてくれ、話終わる頃にはなんだかスッキリした気持ちになったらしい。

確かにグズリもドンドンのことを下に見ているような感じなのだが、犬からすれば人間の子どもなんて弱っちく情けないものに見えているのかもしれない。

絵本を読みながらムーのことを思い出したのだろう、夫は長い間挿絵を見つめていた。
グズリとドンドンのように、夫とムーだけの世界があったのだろう。
飼いたくても許してもらえなかった私からすれば、羨ましくて仕方ない話だ。

ああ、やっぱり犬を飼ってみたい。
散歩など、体力がついていけるかどうか心配だが、犬とそんな関係を築けたらと思うとワクワクしてしまう。
いつか子ども達が手を離れたら、夫に相談してみよう。

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『こうえん』

作/くりはら たかし
定価/1430円(税込)
対象/3歳から
偕成社
2020年4月発行

 


最近のコロナ騒動でめっきり減ってしまったが、以前はよく子ども達を連れて外出していた。

子連れで出かけると、親切な方に助けていただくことがある。
特に私1人で子ども2人を連れている時は本当にありがたい。

以前、電車でかなりハードな服装をした、スキンヘッドの男性と乗り合わせたことがあった。その男性の革ジャンの背中にアメリカの国旗がプリントされているのを見た長女が、

「ママ、アメリカだよー!」と大声で叫んだのだ。

私は反射的に、何か言われるのではないかと身構えつつ、長女を叱った。
しかし、男性はピアスがたくさん付いた口でニカッと笑い、長女に手を振って、国旗がよく見えるように背中を向けてくれた。

人は見かけで判断してはならない。
頭では分かっていても、無意識にやってしまっていると痛感した出来事だった。

『こうえん』は、そんな教訓がよく分かる絵本だ。

〝おにがはらこうえん〟は、子どもたちに大人気の遊び場です。いつも大勢の子どもたちが思い思いに楽しく遊んでいるのですが、たった1つ、気をつけなければいけないことがあります。いつも聞こえている「ぐあーっ、ぐおーっ!」といういびきのような音が「うーん、むにゃむにゃ」という声にかわったら、おおいそぎでかくれなければいけません。もし逃げおくれると、たいへんなことになってしまいます。

鬼のお腹の上にある「おにがはらこうえん」。
鬼が起きたら一目散に逃げていく子どもたち。ある日、1人の子供が逃げ遅れ、鬼につかまってしまう。しかしその時、男の子と一緒になぜか鬼も泣いたのだった……。

この絵本を読んでいる時、最初長女は「鬼怖い!」と言っていたのだが、読み進めるにつれて「鬼かわいいねー!」と、ちゃっかり正反対のことを言うようになった。

子どもは純粋だ。見た目が怖いもの、大人が「怖い」と教えたものをすぐに信じてしまう。
最初は、大人以上に見かけで判断してしまうこともあるかも知れない。

しかし、その概念を簡単に乗り越えていってしまうのも、また子どもなのだ。

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『いちご』

作/荒井 真紀
定価/1650円(税込)
対象/幼児から
小学館
2020年2月19日発行

 


食べることが大好きな長女と違い、もうすぐ1歳の次女はあまり食に興味がない。

食卓の椅子に座らせても嫌がって抜け出そうとするし、ちょっと食べたらすぐに遊びたいと泣き出してしまう。困ったものだ。

一方の長女は全く逆で、ご飯を食べたくて自ら椅子によじ登るような子だった。
姉妹でこれほど違うのかとびっくりさせられる。

そんな次女に私がいつも「○○(食材)おいしいよー」を連呼していたせいなのか、ある日、長女が『いちご』という絵本を次女に見せて、「いちごおいしいのよ!」と説教たれていた。

いちごを食べると口の中でプチプチプチと音がします。何の音でしょう? いちごの苗を植えて育ててみましょう。どんな風に葉っぱは生えていますか? 絵本を見ながら自然観察をたのしめる一冊です。

色鉛筆でみずみずしく描かれたいちごが何ともおいしそうな挿絵の『いちご』。
いちごを土に植えてからの成長を追ったり、種の数を数えたり……。とにかくいちごづくしの絵本だ。読むとどうしてもいちごが食べたくなってしまう。

長女はいちごが大好きだ。次女に『いちご』の挿絵を見せながら
「ちゃんと座りなさい! いちご食べなさい!」
「よく見て! いちごケーキ(ショートケーキのこと)なのよ!」
とどなっている。

実は、次女にはまだ食べさせていないのでいちごを知らないのだ……。

当の次女はというと、お姉ちゃんに遊んでもらっていることが嬉しくて、小さな人差し指を挿絵のいちごに向けてニコニコしている。

もうすぐ次女の誕生日がくる。
小さなお母さんになりきっている長女のおかげで、もしかしたら次女がいちごを食べるかも知れない。なので、バースデーケーキには真っ赤ないちごを乗せてみようか。
仲良くケーキを食べる姉妹が目に浮かび、思わず口もとがほころんでしまいそうになる。

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『たぬきのひみつ』

作/加藤 休ミ
定価/1430円(税込)
対象/幼児から
文溪堂
2019年6月6日発行

 


「○○ちゃんって呼ばないで! プリンセスだから」

最近「ディズニープリンセス」にどっぷりハマり、プリンセスになりきっている長女。特に教えたつもりはなかったのだが、保育園のお友達に教えてもらったらしく、あっという間に大好きになった。まだ3歳でも立派な女子。情報網はあなどれない。
誰が何といおうと彼女は今プリンセスなので、プリンセスらしからぬものは全て拒否し、日々女子力に磨きをかけている。この頃母は、召使いのようにかしずいてばかりのような気がする。

『たぬきのひみつ』という絵本がある。
本を開けばいきなり「だれにもいっちゃいけないよ」と、たぬきが秘密を教えてくれる。
ストーリーは単純で、文章もとても少ない。しかし、どこかとぼけた感じの動物たちがページをめくるごとに現れ「本当?!」と言いたくなるような秘密を教えてくれる。次はどんなことが描かれているのかと、ページをめくるのが本当に楽しい絵本だ。

だれにもいっちゃいけないよ。たぬきのおへそって……たこ焼きなんだよ!! りすのしっぽは? あひるのくちばしは? コアラのはなは? どうぶつたちのおいしい(?)ひみつをこっそりおしえるね。

最近の長女は、とにかくプリンセスが出てくる絵本やDVDばかり観たがるので、当初はこういう素朴な動物の絵本は読まないだろうと思っていた。

しかし、そんな長女が、なんとたぬきのびっくりするような秘密を見てニヤッと笑い、さらに祖母お手製のピンクのドレスを脱ぎ捨て、お腹を出してたぬきの真似を始めたのだ。

大人なら「こんなことありえないでしょ」と一蹴してしまいそうなストーリーでも、
子供は「なんだか面白い」と受け入れてしまう。我が家のプリンセスも「なんだか面白い」には適わなかったようである。

お腹を出してほぼ裸になってしまった長女は、いろんな動物の秘密を見てニヤニヤしている。今日はもうプリンセスはお休みにするようだ。久しぶりに見たお調子者な長女を見て、私もなんだかニヤニヤが止まらない。

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『きんぎょが にげた』

作/五味 太郎
定価/990円(税込)
対象/2歳から
福音館書店
1982年8月31日発行

 


休日、主人が子供たちと遊んでいる。
どこに逃げた?! と夫が子供たちを追いかけ、捕まえるとこちょこちょくすぐるという遊びだ。
長女は部屋の中を逃げ回り、キャーキャー騒ぎながら大喜び。次女は主人に抱っこされ、よく分からないながらもニコニコ笑っている。何より追いかけている夫が1番楽しそうである。
夫は仕事が忙しく平日はほとんど家にいない。もともと子供が大好きな人なので、休日に娘たちと遊ぶことがストレス解消になっているらしい。

『きんぎょが にげた』は、ふっくらまん丸の可愛い「きんぎょ」が金魚鉢から逃げて、部屋のあらゆるところに隠れながら、ある場所を目指すお話だ。
文章は少なめで絵は大きく、ストーリーも分かりやすい。赤ちゃんでも楽しめる人気の絵本だ。

きんぎょが1ぴき、金魚鉢からにげだした。どこににげた? カーテンの赤い水玉模様の中にかくれてる。おや、またにげた。こんどは鉢植えで赤い花のふり。おやおや、またにげた。キャンディのびん、盛りつけたイチゴの実の間、おもちゃのロケットの隣……。ページをめくるたびに、にげたきんぎょがどこかにかくれています。子どもたちが大好きな絵探しの絵本。小さな子も指をさしながらきんぎょを探して楽しめます。

この絵本の内容を暗記している長女は、次女に読み聞かせたい。しかし、次女のほうは内容より絵本を触りたくて仕方がない。必ず小競り合いになるので、最近になって夫がこちょこちょ遊びを編み出したのだった。

シンプルな絵本はいろいろとアレンジしやすいのも魅力である。
余白が大きいからこそ「この後どうなったと思う?」と、子供に考えさせたり、我が家のように別の遊びを作ることもできる。

「きんぎょ」になりきって逃げる長女。追う夫。夫に抱かれて笑う次女。
もちろんリビングの絨毯はぐちゃぐちゃ。おもちゃは蹴り飛ばされていろんな方向に散らかっていく。

本音を言えばもう少し穏やかにやってほしいのだけれど……。
喉から出かかる言葉をぐっと飲み込み下を向くと、絵本が床に落ちていて表紙のきんぎょと目が合う。何だかきんぎょも苦笑いしているように見えた。

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『ちいさいおうち』

作/バージニア・リー・バートン
訳/石井 桃子
定価/1870円(税込)
対象/4、5歳から
岩波書店
1965年12月16日発行

 


長女はインドア派なので、公園はあまり好きではない。

でも先日「パパと一緒なら楽しい。ママは一緒に遊んでくれないからつまらない」と言われてしまった。私と公園に行く時は、もれなく生後6ヵ月の次女も一緒だ。次女を抱っこしたままずっとベンチにいたのがダメだったようだ。なかなか手厳しい。

ただ、長女が落ち葉や木の枝などで遊んでいるのを見るのはとても楽しい。子どもにかかればその辺に落ちているものだって、たちまちおもちゃになる。
それに、子どもが生まれてから「四季」を意識するようになった。旬の食べ物、節句、季節感のあるイベントを大切にした生活は、精神的な落ち着きをもたらしてくれると知った。

先日『ちいさいおうち』を久しぶりに読んだ。

お日様が沈み、また昇る。夜は月が満ち欠けし、星がダンスする。
花が咲き、子どもが川で遊び、畑が実り、雪が降る……。そんな四季の移ろいが、“ちいさいおうち”は大好きだった。
しかし、次第に道路ができ、電灯が灯り、電車が走り……。“ちいさいおうち”の周りに街ができていく。日も月も星も何も見えなくなった。“ちいさいおうち”はだんだん暗くなり、元の場所に帰りたいと願う。
時の流れとともに変わっていく街並みと、変わらない“ちいさいおうち”との比較が、美しい自然の描写とともに表現されている。

しずかないなかに、ちいさいおうちがたっていました。やがてどうろができ、高いビルがたち、まわりがにぎやかな町になるにつれて、ちいさいおうちは、ひなぎくの花がさく丘をなつかしく思うのでした――。時の流れとともに移りゆく風景を、詩情ゆたかな文章と美しい絵でみごとに描きだしたバートンの傑作絵本。

生きていく上で本当に大切にすべきもの、忘れてはいけないもの。
子どもの頃読んだときよりも、ずっと深く心に響いたように思った。

子どもがいるおかげで、自然と触れ合う機会は格段に増えた。しかし、意識しなければすぐ見えなくなってしまう。
最近公園では桜が満開だ。長女が私の手に桜の花びらをたくさん置いていく。
この絵本を改めて読んだことで、身の回りにある自然こそ、どんなに小さいものでも大切にしなければならないと気づかされたように思う。

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『あやちゃんのうまれたひ』

作/浜田 桂子
定価/990円(税込)
対象/3歳から
福音館書店
1999年01月20日発行

 


子どもはなぜか赤ちゃんが好きだ。

我が家の次女は生後6ヵ月だが、長女が通う保育園に連れて行くと長女のお友達がたくさん寄ってきて「赤ちゃんさわっていい?」と聞いてくる。
長女は「赤ちゃんだから優しくさわって!」とお姉さん風を吹かそうとする。しかし、そんなことを言いつつ家では「わたしも赤ちゃんなの!」と泣く日もあるので、母は毎回笑いそうになってしまう。

また、子どもは自分が赤ちゃんだった頃の話も好きだ。
長女もよく「○○ちゃん(自分)が赤ちゃんの時のお話して」とせがんでくる。

先日『あやちゃんのうまれたひ』という絵本を図書館で借りてきた。あやちゃんという6歳の女の子に、お母さんが、あやちゃんの生まれた日のことを話して聞かせている、とにかく愛情にあふれた本だ。私は、思わず長女の出産の時を思い出し泣いてしまった。

あやちゃんはもうすぐ6才の誕生日。お母さんはあやちゃんが生まれた時のことを話してくれます。生まれる予定の日が過ぎて、お父さんもおばあちゃんもおじいちゃんも待ちきれなくなっていた、ある寒い寒い晩のこと、お腹の中で赤ちゃんの生まれる気配がして、お母さんは病院に向かい、あやちゃんを産んだのです。赤ちゃん誕生をめぐる家族の期待、喜び、感動を、しみじみと温かく描きます。

長女は私の両親にとって初孫だった。生まれたと知らせるや否や、遠方にも関わらずあっという間に飛んできた。
いつもはお喋りな母が黙りこくって長女を抱き、いつもは寡黙な父がぺらぺら喋りながら、長女の写真をたくさん撮っていた。二人とも目尻が下がりっぱなしだった。
そんな二人の様子を見て、改めて子どもの誕生の喜びを噛みしめたように思う。

「赤ちゃんの時のお話」をせがんでくる長女には、いつもこう伝えるようにしている。
ママはあなたが生まれてきてくれて、本当に嬉しかったんだよ。
たくさんの人が、あなたが生まれてくるのを待っていたんだよ、と。
長女はいつも照れくさそうに聞いているが、ニヤニヤと嬉しそうだ。次女がもう少し大きくなったら、彼女にも話してあげるつもりだ。

子どもの誕生は、私にとっては間違いなく人生において一番すばらしい出来事だった。
今日も娘たちが健やかに大きくなっていることに感謝しつつ、この絵本を噛みしめるように読んでいる。

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