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元幼稚園教諭にインタビュー 親子の絆を絵本で育むために|淑徳大学 赤ちゃん絵本プロジェクト


絵本で親子のふれあいは増やせる?

エンブックスの新刊の赤ちゃん絵本は「親子がスキンシップしたくなる」をコンセプトに作られました。
絵本を通して、親子の心の距離を今よりもっと縮めてもらうのが狙いです。ページをめくるごとに、かわいらしい動物たちが「なでて、なでて」と繰り返し赤ちゃんに呼びかけます。

しかし、私はスキンシップを増やすためになぜ絵本を選んだのだろうと、疑問を感じました。
親子のふれあいを増やすのなら、一緒に手遊び歌をしたり、工作をしたり……もっと他に方法があるのではないか、と。
よりこの絵本を理解するために、淑徳大学短期大学部の子ども学科准教授、またご自身も幼稚園教諭の経験がある小薗江幸子先生にお話を伺いました。

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小薗江幸子 准教授
以前まで幼稚園に勤めており、現在は淑徳大学短期大学部にて保育士、幼稚園教諭を目指す学生を支えている。
専門分野:臨床発達心理学及び保育学子ども理解
担当科目:人間関係、教師論、教育心理学、保育課程論、実習指導Ⅱ


大切なのは、読み聞かせで「何を」育みたいのか

――まず、「なでてなでて」を読んでみた感想はいかがでしたか?

絵がさわりたくなる柔らかい色合いで、材質の感じがよく表れています。
また文章に無駄がなく、「なでてなでて」という繰り返しの呼びかけもシンプル。車を「ぶーぶー」と言ったり、赤ちゃんが物の状態を音に置き換えて結びつける段階が、ちょうど1歳半から2歳なんです。そういった意味も含めて、言葉の使い方がとても適切ですね。

――先生も幼稚園では大勢の子どもたちに絵本を読み聞かせていらっしゃったと思います。でもこの「なでてなでて」はお父さん、あるいはお母さんと赤ちゃんの一対一で読む絵本ですよね。

そうですね。幼稚園での読み聞かせは友だちと大勢でイメージを共有する、という楽しさがありますが、一対一の絵本は距離の近さがポイントになると思います。お母さんのひざの上で、自分に直接読んでくれている。それが赤ちゃんたちは嬉しいのではないでしょうか。

――この絵本は「親子でスキンシップしたくなる」をコンセプトに作られています。親子の絆やつながりを深めるために、やはり絵本は重要なのでしょうか?

絵本を読み聞かせすることで、話しかけられて嬉しい、お母さんの声が聞けて気持ちいいとか、赤ちゃんが得られるものはたくさんあると思います。ですがそれだけでなく、読み聞かせをすることでどの部分を育みたいのかということが大切なんですね。
本があればいいというわけではないと思います。その点、この「なでてなでて」はコンセプトにぴったり合っていますね。
ただ読んでいて楽しいだけでなく、言葉のリズムの心地よさやふれあう喜びなど、より本質的な内容に仕上がっているという印象を持ちました。

『なでてなでて』は親子のふれあいを増やしてくれる

2人で味わえる感動、言葉のリズムの心地よさ、ふれあう喜び。
これらの要素は絵本の読み聞かせでしか得られないものです。お父さん、お母さんの膝の上で同じものを見て、触れて、気持ちを共有する。絵本が赤ちゃんたちにとって大切なものになるように、本を読んで一緒に過ごした時間が宝物になるかもしれません。

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よく見てみると文章や言葉だけでなく、見開きのページが実にこだわって描かれているのが分かります。
例えば、ねことハリネズミを見比べてみると、先生のおっしゃった通りそれぞれの質感がリアルに伝わってきますが、それだけではありません。「ふわふわ」と「ちくちく」、どちらの文字も手描きで、しかも異なるフォントで描かれています。「ふわふわ」はあたたかみのある丸い文字。「ちくちく」はとがったような四角い文字。字が読めない赤ちゃんでも、文字の雰囲気や印象から、動物たちのさわった感触が想像できるのではないでしょうか。

他にもなでるときの手の形が違うなど、いろんな発見があるかもしれません。ぜひ赤ちゃんの反応を見ながら、一緒に探してみてください。
読んで楽しむだけでなく、「なでてなでて」は心の距離をぐっと縮めてくれる絵本です。絵本を通して、家族と過ごす時間がより素敵なものになってほしいと思います。

執筆者:田中夏未
淑徳大学 人文学部 表現学科3年
文芸表現コースを専攻。研究テーマは「悲話の持つ要素は何か」です。作家か声優を目指し「文芸表現コース」「放送表現コース」がある淑徳大学に入学。授業を通して作られた役を演じるより、自分で一から物語を描く楽しさを再認識しています。好きな絵本は『ルリユールおじさん』。


『なでてなでて』
え/日隈みさき
ぶん/西川季岐