おしりに火がついた瞬間 はるのまいさん制作インタビュー その①

赤ちゃん絵本『ふうしてあそぼ』で、まもなく絵本作家としてデビューするはるのまいさん。
昨年、赤ちゃんが生まれたばかりの新米ママでもあります。

「育児との両立は確かに大変でしたが、それでもやっぱり一番身近に絵本を見せたい存在がいる、というのは大きなモチベーションになりました。」
と、今でこそ冷静にふりかえって語るはるのさんですが、実際、創作している間は「ドタバタ」の連続でした。

「ドタバタ」から生まれた絵本は、予約注文を開始してまもなく、Amazon新着絵本ランキングで1位(8月12日付)となる快挙を達成。これから新しいロングセラー絵本に育っていくだろう期待の大きな作品です。

長年の夢だったという絵本づくりへの思いを、全7回にわたって連載します。

目次

  1. おしりに火がついた瞬間
  2. 編集者と一緒につくる赤ちゃん絵本
  3. 絵本づくりのためにインプットしてきた
  4. 育児と創作の両立がこんなにも大変だとは
  5. ベルギーに引越し?! 疲弊からの脱出
  6. ラフを描くのが早いのはせっかちだから
  7. 自分らしい表現で

 


―まずは、赤ちゃん絵本『ふうしてあそぼ』の出版、おめでとうございます。
帯にも掲載していますが、まさに親子が一緒に楽しめる「体感型絵本」に仕上がりました。

エンブックスの西川さんと初めて知り合ったのは7年くらい前で、まだ教員をやっていた時でした。
名古屋にある「なかがわ創作絵本教室」の、中川たかこ先生からの紹介で、当時作っていた絵本を見てもらいましたが、その時はそれ以上特に進展しませんでした。

 

―エンブックスも立ち上げからまだ1年という時だったにもかかわらず、わざわざ東京まで作品を持ってきていただいたんですよね。うれしかったです。

2012年に教員を退職してフリーになってからは、まずイラストレーションの仕事で結果を出さなくちゃと必死で、絵本は個人的にはずっと描き続けていましたが、時間がかかるので、ちょっと気持ち的に後回しになっている部分がありました。

ただ、それ以降も、絵本作家やイラストレーターの先輩たちとの飲み会に西川さんを呼び寄せたりとか(笑)、連絡だけはずっと取っていて。

あと、エンブックスさんは「エホンリー」という、1冊からハードカバーに製本してくれるサービスもやっていて、2015年のボローニャブックフェアの売り込みのダミー用に、製本してもらったりもしました。その絵本は、3回くらい描き直していて、まだ納得いくものが描けていなくて。それであっというまに2年くらい経っちゃって……

出産前にもう一度描き直した後、産後半年くらい経ってから、ひとまずハードカバーにしてもらおうと注文して、絵本が届いた後、お礼のメールのやりとりの際に、「はるのさん、そろそろ本気で絵本つくりませんか」みたいな風に言われ。

 

―エホンリーはサービスの性質上「編集」ができないんです。でも、はるのさんの絵本作家としての可能性は出会ったときから感じていて、編集者としてウズウズしていたんです(笑)

それで、今までなんとなく絵本を描き続けてはいたものの、「あっ、のらりくらりと逃げていたのを見透かされていた」と思ったんです。だって大変ですもん、“商品としての”絵本を作るの。
自分だけ楽しんで描いているだけでオーケー、というわけにはいかないですから。

だから、「本気で、ちょうどお子さんに読ませたいと思う絵本をつくりませんか」って言われて、ちょっと目が覚めたというか……
自分の子供に向けて作るんだったら、「時間がない! あっという間に大きくなっちゃう!」と、おしりに火をつけられた感じでした。

 


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西川季岐(編集長)

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