親子がスキンシップしたくなるシーンの実現 日隈みさきさんとの絵本づくり実況 その③

赤ちゃんの声で完成した「親子がスキンシップしたくなる」絵本

 

ある程度のラフが固まって「こども編集部員(*)」にレポートを協力してもらったあと、日隈さんと相談して2つの修正をしました。

  • 気づき① 赤ちゃんに「知識」を必要とするネタは伝わらない
  • 気づき② 赤ちゃんが動物を「なでる」反応が見られたので確実にしたい

①については、「鳥とたまご」が登場するシーンでのことです。
親鳥からたまごを「なでて」と声がけがあり、ページをめくるとたまごから雛がかえるという、少し変化を効かせたアイデアですが、こうした生態をまだ知らない赤ちゃんにとっては理解の難しいシーンになっていました。

さらに「つるつる」という感触も描かれているので、展開としても「なでる」「つるつる」「うまれたよ」の3段オチ。まさに赤ちゃんから教えてもらって、思いきってこのシーンは、ばっさりカットすることに決めました。


▲意外性のある「たまご」をおもしろがれるのは大人だから。赤ちゃんにとっては難しかったのでカット

②については、各動物が登場する見開きにも「手」を描き加えてみようと考えました。
耳からだけではなく、視覚的にも「なでて」と示すことで、赤ちゃんはスムーズに反応しやすくなったと思います。

また、めくったときの「手」は、それぞれの感触に対して微妙に動きを変えました。
つまり「手が語る」ことによって、シーンが格段に豊かになりました。

こうして地道に検証を繰り返し、各ページで親子がどんな気持ちで楽しんでくれるのかを注意深くシミュレーションしながら、最終的にセレクトされた5種類の動物は、「感触のバリエーション」と「愛らしいキャラクター性」と「目新しさ」と「身近と意外のバランス」を見事に満たしてくれたと思います。


▲「とり」に代わって登場する「トイプードル」は感触だけでなく時代性も考慮して。「手」が効果的になった

反射的に触りたくなるものから、(現実ならば)触るのをためらってしまうものまで、ページをめくって展開していくごとに好奇心がくすぐられ、そして最後には、掲げてきたコンセプト通り「親子がスキンシップしたくなる」仕掛けによって、すべての親子が笑顔で絵本を閉じてくれると信じています。(おしまい)

(*)制作過程の絵本を対象年齢の子どもに実際に読んで聞かせる取り組み。これまで50名以上が協力

西川季岐(編集長)

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