恐ろしいはずの鬼が泣いた理由とは……? 『こうえん』


最近のコロナ騒動でめっきり減ってしまったが、以前はよく子ども達を連れて外出していた。

子連れで出かけると、親切な方に助けていただくことがある。
特に私1人で子ども2人を連れている時は本当にありがたい。

以前、電車でかなりハードな服装をした、スキンヘッドの男性と乗り合わせたことがあった。その男性の革ジャンの背中にアメリカの国旗がプリントされているのを見た長女が、

「ママ、アメリカだよー!」と大声で叫んだのだ。

私は反射的に、何か言われるのではないかと身構えつつ、長女を叱った。
しかし、男性はピアスがたくさん付いた口でニカッと笑い、長女に手を振って、国旗がよく見えるように背中を向けてくれた。

人は見かけで判断してはならない。
頭では分かっていても、無意識にやってしまっていると痛感した出来事だった。

『こうえん』は、そんな教訓がよく分かる絵本だ。

〝おにがはらこうえん〟は、子どもたちに大人気の遊び場です。いつも大勢の子どもたちが思い思いに楽しく遊んでいるのですが、たった1つ、気をつけなければいけないことがあります。いつも聞こえている「ぐあーっ、ぐおーっ!」といういびきのような音が「うーん、むにゃむにゃ」という声にかわったら、おおいそぎでかくれなければいけません。もし逃げおくれると、たいへんなことになってしまいます。

鬼のお腹の上にある「おにがはらこうえん」。
鬼が起きたら一目散に逃げていく子どもたち。ある日、1人の子供が逃げ遅れ、鬼につかまってしまう。しかしその時、男の子と一緒になぜか鬼も泣いたのだった……。

この絵本を読んでいる時、最初長女は「鬼怖い!」と言っていたのだが、読み進めるにつれて「鬼かわいいねー!」と、ちゃっかり正反対のことを言うようになった。

子どもは純粋だ。見た目が怖いもの、大人が「怖い」と教えたものをすぐに信じてしまう。
最初は、大人以上に見かけで判断してしまうこともあるかも知れない。

しかし、その概念を簡単に乗り越えていってしまうのも、また子どもなのだ。

『こうえん』

作/くりはら たかし
偕成社
定価/本体1300円+税
ページ数/32ページ
2020年4月発行