『こんとあき』の世界に夢中になって引き込まれていった長女 はじめての大冒険


私は読書が趣味である。

時間を忘れ、本の世界にどっぷり浸かるあの瞬間が大好きだ。
気が付くと外が暗くなっていた、なんてこともよくあった。東京で暮らすことになった時に持ってくることが出来なかった本たちが、今でも実家の倉庫にたくさん眠っている。

嬉しいことに、最近3歳の長女も私と同じ「本好き」に違いないと思う出来事があった。
それは『こんとあき』を読んだときのことである。

こんは、あきのおばあちゃんが作ったキツネのぬいぐるみです。あきが成長するにつれ、こんは古びて、腕がほころびてしましました。あきはこんを治してもらうため、こんと一緒におばあちゃんの家にでかけます。あきは、電車でこんとはぐれたり、犬に連れさられたこんを探したりと、何度も大変なめにあいます。こんとあきは無事におばあちゃんの家にたどりつくことができるのでしょうか? 互いがかけがえのない存在であるこんとあきの冒険の物語。

とても有名な絵本なのでご存知の方も多いだろう。1989年発行で、私が3歳の頃にすでにあった絵本だ。きつねのぬいぐるみ「こん」と、小さな女の子「あき」が、列車に乗っておばあちゃんの家まで行くという話。途中いくつかのトラブルに巻き込まれても、2人は力を合わせて乗り越えていく。小さな子どもにとってはまさに大冒険だ。

いつものように長女を膝に座らせ、『こんとあき』を読む。最近の彼女は、4~5ページくらい読むと勝手に立ち上がりうろうろしてしまうのだが、今回は違った。
長女は『こんとあき』から全く目を離さない。一言も発さず身じろぎもせず、まさに固唾を飲んで絵本に集中している。
あまりにも静かに聞いているので「大丈夫?」と聞いてしまったほどだ。もちろん返事はない。

もしかして、本に引き込まれて夢中になるあの感じを、長女も味わっているのではないか。
長女は今、絵本の世界に行っている。「こん」と「あき」と一緒に列車に乗って、冒険の真っ最中なのだ。ならば長女の冒険の邪魔をしてはいけない。私はそのまま臨場感たっぷりに読み続けた。

読み終えた時、長女は我に返ったように私を見上げた。ほっぺたが真っ赤だ。
「面白かった?」と聞くと、真顔でこくんと頷いた。

外見も性格も主人によく似ている長女。だが、主人はあまり本好きではない。
初めて私に似た部分を見せてくれたようで、踊りだしたくなるくらい嬉しかった。

いつか長女と一緒に読書ができたらどんなに幸せだろう。明るく陽が差したリビングのソファーで、飲み物とお菓子片手に読書をする。その隣で別の本を読む成長した長女……。
長女の本好きの資質を垣間見せてくれた『こんとあき』に感謝しつつ、そんな妄想をせずにはいられない母であった。

『こんとあき』

作/林 明子
福音館書店
定価/本体1300円+税
ページ数/40ページ
1989年6月30日発行