道端に落ちた小さなてぶくろに、それよりもはるかに大きな体の動物が次々に入っていくなんて、現実にはありえない設定です。
それをごく自然に、さも当たり前のように描いたラチョフの絵(画力はもちろん世界観の構築)がすごい。こんな絵本は他にみたことがありません。
多くのファンタジー作品は、例えばわかりやすく「夢オチ」のように現実世界の入口と出口をしっかり描かないと「なんでもあり」になって、かえってつまらなくなるものなんです。
注意深く見開きを眺めているとてぶくろが変化していく様子が楽しくて、なんとかして僕も入ってみたくなります。
そんな気分のピークに描かれる結末のさりげなさがまた良いんです。大好きな作品のひとつ。
文・絵/エウゲーニー・M・ラチョフ
訳/うちだりさこ