田中秀治さん講演会「赤ちゃんと絵本」に参加して


7月8日(金)に、元福音館書店専務の田中秀治さんにお話を伺ってきました。
林明子さんデビュー作の担当編集者として、また「こどものとも 年少版」の創刊メンバーとして、たくさんの優れた絵本を世に送り出してきた経験から語っていただいたのは、絵本の良し悪しでも、絵本づくりのノウハウでもなく、親子の在り方の「本質」だったと思います。

子どもと絵本の関わりかたが変わってきた30年

2歳頃から子どもは絵本を楽しめるといわれた1970年代、2歳から4歳までの子どもたちを対象とした「こどものとも 年少版」が創刊されたのは1977年のことです。
1990年代に入ると、1歳頃から子どもは絵本を楽しめるといわれはじめ、1995年に「こどものとも0.1.2.」が創刊されました。
子どもと絵本の関わりかたは時代とともに刻々と変化していて、今では0歳児が絵本を楽しむことも珍しくありません。

こうして長い年月を俯瞰してみると、モノが豊かになるにつれて子どもの遊び道具はとてつもなく増えているはずなのに、絵本は端に追いやられるどころか対象の幅を広げてきたことがわかります。
その理由は、絵本は「親子で楽しむもの」だから、に尽きると思います。

絵本は親子で楽しむもの

田中さんは「読み聞かせ」という言葉が好きじゃないといいます。
幼い子どもはまだ絵本をひとりで読むことができないので、親が読んであげないといけません。だから、つい上の立場で「読み聞かせ」といってしまいがちですが、実際に絵本を読んでいると楽しいのは子どもだけじゃないことがよくわかります。それは、単に描かれたお話が楽しいというだけではありません。

絵本が親子にもたらすもの

  • 時間と空間で愛情を伝える
  • 子どもの感性の元をつくる

まず、絵本を前に親子は肌を触れ合わせます(=スキンシップ)。
そしてお話を通じて、親はたくさんの「ことば」を声にのせて投げかけ、子どもはそれを「愛情」として受け取ります。また、子どもは親の元で安心してお話の世界に入っていき、たくさんの「感動体験」をしてきます。
まだ言葉の意味がわからない赤ちゃんでも、ケラケラ笑う反応をみれば愛情が伝わっていること、コロコロ変わる表情から感性が磨かれていることは手に取るようにわかります。

実は、絵本を読むという行為を通じて、親子は愛情のキャッチボールをしています。
子どものうれしいは親もうれしい。もしかすると、親のほうが子どもに「読み聞かせ」をさせてもらっているんじゃないかとさえ思えます。田中さんのメッセージの本意を僕はそんなふうに理解しました。

絵本があればたくさんの言葉をかけてあげることができる

はじめての子育てで、子どもにどうやって接していいかわからないときもあるかと思います。
幼い子どもの行動範囲は限られているのに好奇心は限りなくて、期待に応えてたくさんの豊かな言葉をかけてあげたいと思っても、自分の引き出しにある語彙では心細いかもしれません。

今ではすっかり赤ちゃん絵本の定番になった『もこもこもこ』を開いてみると、不思議なカタチに美しい色の抽象画に「もこ」とか「にょきにょき」とか、日常会話ではなかなか出てこない絵本だからこそかけてあげられる豊かな言葉が並んでいます。
そういう「こどもだましではない本物」の絵本は、最高の親子の架け橋になってくれると信じています。

『くだもの』
文・絵/平山和子

『たまごのあかちゃん』
文/神沢利子
絵/柳生弦一郎

『でてこい でてこい』
文・絵/はやしあきこ

『もう おきるかな?』
文/松野正子
絵/薮内正幸

『いないいないばあ』
文/松谷みよ子
絵/瀬川康男

『がたん ごとん がたん ごとん』
文・絵/安西水丸

『もこもこもこ』
文/谷川俊太郎
絵/元永定正