こどものとも

【vol.1】阿川佐和子さん講演会「妄想のススメ」|こどものとも創刊60周年記念フェスタ


テレビでもおなじみのエッセイスト、阿川佐和子さん。ユーモアを交えてたっぷり語ってくれた子ども時代は、意外にも読書が苦手だったとか。そんな少女が、どうして「かつら文庫」に通うことになったのか、石井桃子さんとの思い出、そして阿川さんが考える絵本の魅力について、2回に分けてレポートします。

かつら文庫のはじまりの本当

1958年に、石井桃子さんが荻窪の自宅を改装してはじめた、地域の子どものためのちいさな図書館が「かつら文庫」です。
子どもの本に関わる仕事をしていた石井桃子さんは生涯独身。阿川さんによると、子どものいなかった石井さんが、もっと子どもの気持ちに寄り添いたいと自宅を開放して招いたというのが、「かつら文庫」のはじまりだそう。

ときどき2階から、執筆中の原稿を持った石井桃子さんが降りてきて、子どもたちを集めて実際に読んで聞かせては「なるほど、これは良し、これは直し」と、その反応を作品に活かしていたということです。
「かつら文庫」の棚には、教訓的なもの、偉人の伝記のような本は1冊もなかったという話も印象的でした。

バージニア・リー・バートンにがっかり?!

そんな「かつら文庫」ができてすぐに、読書家のお兄さんが通うことになり、本よりも外で遊ぶことが好きだった幼い阿川さんも、ただお兄さんのマネっこがしたくて一緒についていくことに。
なにより、子どもたちだけで出かけ、電車に乗り、荻窪までの大冒険が楽しかったそうで、「かつら文庫」に着いても、ひとり縁側から庭に出て、お花を摘んだり、サルスベリの木に登ったりして遊んでいたというおてんば。

それでも、石井桃子さんが訳した絵本『ちいさいおうち』は大好きだったと阿川さん。それを知っていた石井桃子さんの計らいで、小学生低学年のとき、バージニア・リー・バートンに会わせてもらったというのは、子ども時代のうらやましい宝物のようなエピソードです。
大きな模造紙を壁にはり、その場で即興で絵を描いてくれるというリー・バートンに、「ちいさいおうちの、どの場面を描いてくれるんだろう!」と、胸を躍らせていた少女。
ところが、勢いのある長い線で描かれたのは思ってもみなかった「恐竜」で、当時は「本当にがっかりした」と、いかにも子どもらしい本音が。
そう、お察しの通り、その後出版される『せいめいのれきし』の一場面です。このときの原画は今でも「東京子ども図書館」に飾ってあるそうです。観てみたい!

『正義のセ』
著/阿川佐和子
絵/荒井良二

『ちいさいおうち』
文・絵/ばーじにあ・りー・ばーとん
訳/いしいももこ

『せいめいのれきし』
文・絵/バージニア・リー・バートン
訳/いしいももこ