創作エピソード② 楽しみを生産し、よろこびを分配すること

踊ることが大好きなわにが道端でダンスをして見せると、通りがかりのわにたちは喜んでお金をくれました。わにはそのお金で好きなものを買いました。味をしめたわには、場所を変えては踊り、お金を貯めて次々に好きなものを買っていきます。もっともっとと考えたわにが、最後にたどり着いた場所で見つけた、本当に欲しかったものとは?
子どもが「はじめて出会う経済の本」。モノには「価値」があること、同時に「お金で買えない価値」があることを楽しく知ることができる絵本です。

 


新装版『わにのだんす』の紹介文は、こんなふうにまとめました。

改めて、この作品を通じて子どもたちに伝えたいことは何だろうかと考えていて、たどり着いた言葉が「本当に欲しかったもの」です。「これだ!」と思いました。帯には「お金を稼いだ “だんすわに”が見つけた 本当に欲しかったものは?」というコピーを書きました。

作家の今井さんは、この絵本を「子ども向けの顔をした経済のお話」だといいます。
得意なことでお金を稼ぐわにの姿は、まさに経済活動そのものです。

とはいえ、「経済」といっちゃうと子どもの世界とは距離を感じるママ・パパも少なくないと思います。実際、僕自身も軽い違和感があったし、創作過程では「お金が描いてあるのを子どもに見せることに抵抗がある」というママの声もありました。小さな子どもの口から「お金」という言葉が飛び出すと、ギョッとする親の気持ちもよく分かります。

でも、このお話の真意がそんな表面的なところにないことは、最後まで読めば誰でもわかると思います。なぜって、主人公のだんすわには「人のためにお金を使う」ことで「お金で買えないよろこび」を手に入れるんですから。

考えてみれば経済って、人と人との関係の「やりくり」なんですよね。
だんすわにが教えてくれるのは「楽しみを生産し、よろこびを分配する」という、人が豊かに生きていくうえで根っこになる大切な「やりくり」です。

そういう意味で、小さな子どもにこそ読んで聞かせて欲しい。
小さな子ども時代に正しい根っこをしっかり生やしておけば、大人になってからどんなことがあっても、最後はブレずに豊かに過ごせるんじゃないかと思います。
今井さんはそのことを知っていて、まだ小さかった娘のたまちゃんに「子守話」として語り聞かせて、育てたんじゃないでしょうか。

すっかり大きくなったたまちゃんの豊かさといったら!

 


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