調べてみると、さるが登場する絵本は、シリーズも含めると300作以上。絵本界でおなじみのくまが登場する絵本は、2000作以上ですから、それと比較すると多くないですが、欠かせない存在であることは間違いありません。日本の子どもにとっては、くまよりも身近な存在ですものね。
まずは昔話から。昔話に著作権はないので、いろんな作家の再話が出版されていますが、僕の好みは赤羽末吉の描いた芸術性の高い『さるとかに』。
昔話絵本は、いろいろ比較して読んでみるとなお楽しいので、印象の違うものを2作。及川さんの装幀はおしゃれで今っぽい。松谷みよ子さんは『いないいないばあ』でおなじみの大作家です。
エンブックスの立ち上げ時から、ずっと相談に乗ってくれていた今は亡き先輩が、事あるごとにこの絵本のことを「すごい、すごい」と言っていたのを、時々思い出すことがあります。「さる・るるる、やぞ」と。多くを語る必要がないのは、この絵本を開けば分かるるる。
言葉遊びのつながりで、回文が楽しい絵本。はじめに回文ありきで、絵を描いていくから、高畠さんの創造をトレースするようでおもしろい。
言葉の巨匠といえば、まど・みちおさん。詩は絵本と相性が良いのは、音読するものだから。「ほんとにじょうずに かけたなと さかだちいっかい やりました」。このおさるの気分のおおらかなこと!
タイトルに妙に惹かれる作品で、前から気になっていた1冊。作者の島さんは動物学者であり類人猿学者。しっかりと取材されたノンフィクションの絵本は、子どもでも読める論文だと思います。こういうのも絵本だからできることのひとつ。
文/穂高順也
絵/荒井良二
これもタイトルからすごく気になる作品。続編にキャラクターの入れ替わった『へびのせんせいとさるのかんごふさん』があるので、あわせて読んでから、風邪をひいたときにどちらの先生に診てもらうかを決めようと思います。それにしても荒井さんの描く猿は個性的。
1958年に出版された長新太のデビュー作は、動物園のオーケストラでトランペットを吹くことになったおさるのお話。漫画家らしい装幀は、今見るとかえって新鮮です。
文・絵/エズフィール・スロボドキーナ
訳/松岡享子
最後は外国の作品もいくつか。2016年もみなさんと良い絵本の御猿、もとい御縁がありますように!