吉田カット02

赤ちゃんたちに大人気! 「オノマトペ」の秘密を読み解く|淑徳大学 赤ちゃん絵本プロジェクト


赤ちゃんたちのオノマトペへの関心

赤ちゃんたちはオノマトペが大好きです。「どんぐりころころ、どんぐりこ」といった童謡を歌うとき、また散歩で見かけた犬や猫のことを「わんわん」「にゃあにゃあ」と呼ぶときの笑顔は見ているだけで楽しい気持ちになります。

私自身、小さい頃は母親に『おむすびころりん』(絵/すがわらけいこ)の絵本を繰り返し読んでもらっていました。もう絵本そのものは行方不明ですが、「おむすびころりん、すっとんとん」のフレーズを何度も口ずさんでいたことだけはよく覚えています。

赤ちゃんだった頃の私たちはなぜオノマトペを好んだのでしょうか? そこにはどんな理由があるのでしょうか。

オノマトペとは?

オノマトペとは、擬声語や擬音語の総称です。
擬声語というのは、『おむすびころりん』における、ねずみたちの「ちゅーちゅー」、意地悪なまま母などの笑い声を表現するのに使われる「げらげら」など、動物の鳴き声や人間の声を真似た言葉です。
水滴が落ちる「ぽたぽた」、ドアを勢いよく閉める「ばたん」などは、物音を真似ているため擬音語と呼ばれています。
日本においてはこの二つに限らず、「てきぱき」と仕事を片付ける、「つるつる」となめらかな感触だ、などの状態を表す擬態語も含むケースが普通です。
参考資料:『賢治オノマトペの謎を解く』(著/田守育啓)

今回は擬声語・擬音語・擬態語全てをまとめてオノマトペと呼ぶこととしましょう。
オノマトペを全く使わずとも生活をすることは可能です。ですが、少し考えてみてください。遊園地のジェットコースターに乗った感想を誰かに伝える際に「ものすごくスリルがあって面白かった!」と言うより、「上るまでグラグラ揺れてドキドキしたけど、ビューって降りるときが爽快だった」と言った方がより表現の幅が広がって伝わりやすいと思いませんか?

外国語にもオノマトペは存在しますが、擬態語を含まないケースの方が多いようです。たくさんのオノマトペは日本語の持つ特色であり、ひいては文化の一つとも呼べます。

子どもはみんなオノマトペが大好き!

赤ちゃんたちがオノマトペを好む理由は、言葉を覚えていく過程に隠されています。
生後おおよそ7ヶ月ほど、赤ちゃんは喃語を喋っています。「あーあー」「ぶー」「だーだーだー」などといった、あまり意味の見て取れない言葉です。

生後9~10ヶ月ほどになると喃語が減り、身振り手振りをしたり「ママ」「パパ」などといった言葉を話せるようになります。この頃に最初に話した言葉は「初語」と呼ばれます。ちなみに、私の初語は「あめ(だめ)」でした。両親が先に教えていた言葉だったそうです。

そこから赤ちゃんは、大人が話している言葉のうち、聞き取りやすく簡単な言葉を覚えていきます。
大人向けのしゃべり方では、単語がどこにあるかわかりにくくあまり覚えてくれません。反対に発話が短く変化があり、目で見える形に合った音をしている言葉はすぐに覚えることができます。

この条件に合う言葉が、赤ちゃん言葉と擬音語・擬声語・擬態語……すなわち、オノマトペです。

赤ちゃんにも物の形と音の関連がわかるということは研究で明らかになっています。
ま行の単語では「丸いもの」、か行やぱ行においては「とがったもの」を連想するのだそうです。特にオノマトペの多くは聞こえる音や感覚を表現したものですから、赤ちゃんたちにとっても直感的でわかりやすく、そして覚えやすいのです。

1歳から2歳前後になった赤ちゃんは、覚えた単語一つで大人たちの会話と同じことを伝えようとします。
これは「一語期」と呼ばれています。例えば、突然子どもが「にゃあにゃあ(猫)」と言い出してどこかに手を伸ばしたら、私たちはその方向を見てどこに猫がいるか見ます。これだけで「あそこに猫がいるよ」と私たちにはわかります。たったこれだけでも通じ合うことができるなんて、とても素敵なことだと思いませんか?

場面一つをオノマトペで表し、自身の感情を表すことができるオノマトペは赤ちゃんにとって立派な言語のひとつです。自分の言いたいことが大人に伝わって嬉しい赤ちゃんは、もっと言葉を話したい、聞きたいと思うことでしょう。オノマトペを発語するとき嬉しそうにしている赤ちゃんたちは、学んでいく喜びを体いっぱいに表現しているのかもしれません。

オノマトペを使った絵本で赤ちゃんとの関わりを増やす

オノマトペを生かして、赤ちゃんとコミュニケーションを取りたい……そんなときにぴったりの楽しい絵本をいくつか紹介します!

『もこ もこもこ』
作/谷川俊太郎
絵/元永定正
『もこ もこもこ』のイラストは眺めているだけで想像力を掻き立てられます。地面からもこもこっと何かが飛び出し、隣ではにょきにょきと生える何か……ほぼ全てがオノマトペの絵本ですが、決して退屈なお話ではありません。「もこもこもこ」は表情豊かに、「ぷうっ」は一息に読みます。緩急やアクセントをつけて読めば、たちまち赤ちゃんは、盛り上がるものを見たら「もこもこ」、風船を見たら「ぷうっ」と喜ぶようになるでしょう。

『むにゃむにゃきゃっきゃっ』
作・絵/柳原良平
こちらも本文は全てオノマトペです。かわいい模様のキャラクターたちが文字通り「ぷくぷく」と泡になって浮かんでいたり、「どすーん」と落下したり。一語期の赤ちゃんは、大人たちの言葉だけではなく身振りや顔の表情にも反応を示すようになります。目のついたキャラクターがオノマトぺを体現しているという点において、赤ちゃんにとっては魅力的な絵本といえます。

『ぽんぽんポコポコ』
作・絵/長谷川義史
誰のお腹が「ぽんぽん」されているのか、赤ちゃんと一緒に考えてみる絵本です。ぽんぽんぽこぽこ、ぽんぽんぽこぽこ……と、赤ちゃんのお腹を「ぽんぽん」しながら読んでみましょう。答えの動物によって「ぽんぽん」の読み方を変えたりと楽しみ方は様々です。赤ちゃんと一緒に体を動かすような遊びがしたいという方に特におすすめします。

『ゆき ふふふ』
作/ひがしなおこ
絵/きうちたつろう
「きせつのおでかけえほん」シリーズの一つです。この絵本のテーマは「雪」。冷たい冬の雪遊びが美しいイラストと共に描かれています。雪がふわふわと降ってきてしゅわんしゅわんと溶けていく様子を繰り返し読めば、自然と子どもも雪を待ち遠しく思うに違いありません。私も久々に雪遊びをしてみようかという気持ちになりました。
シリーズのほかの作品もおすすめです!

『だるまさんが』
作・絵/かがくいひろし
だるまさんが……と言えば、「転んだ!」ですよね。ですがこの絵本は違います。この絵本のだるまさん、転ぶだけではなく「ぷしゅー」、「ぷっ」などバリエーション豊かな動きをします。次はどんなだるまさんなのか赤ちゃんに聞いてみたりするのもいいかもしれません。どんなオノマトペを赤ちゃんが口に出すか楽しみですね。最後のページをめくれば大人も子どももみんな笑顔になることは間違いありません。詳しくはどうぞ実物の絵本を手にとってご覧ください。

『ぱたぱたえほん』
作・絵/miyauni
エンブックスの新刊赤ちゃん絵本『ぱたぱたえほん』では、ページいっぱいのとりさんを「ぱたぱた」、ちょうちょさんを「ひらひら」させつつ、開いたり閉じたりして遊ぶことができます。おめめを「ぱちくり」するところで目をぱちぱちしてみたり、身振り手振りも交えて遊んでみましょう! 楽しい時間になることは間違いなしです。子どもたちが「赤ちゃん」でいる時期はあっと言う間です。今しかできない親子スキンシップを楽しんでみませんか?

執筆者:吉田茜
淑徳大学 人文学部 表現学科3年
文芸表現コースを専攻。現在の研究テーマは「邦訳について」です。文章について学びたいという思いから表現学科のカリキュラムに惹かれ淑徳大学へと入学しました。レポートや論文などにおいて事前調査をまとめていく作業が最も楽しいと感じています。好きな絵本は『ミッケ!』シリーズ。